日経ビジネスの特集記事(55) 「知」のケイレツで蘇る ニッポンの工場(2) | 藤巻隆(ふじまき・たかし)オフィシャルブログ

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<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の
概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>



日経ビジネスの特集記事(55)

「知」のケイレツで蘇る
ニッポンの工場

2014.04.28・05.05


今週の特集記事のテーマは

円高が是正され、中国などの新興国のコスト高が
進んだことで、生産を国内に戻す動きが広がり
つつあることと、従来の資本や取引関係とは違う
「知」のケイレツを構築し、モノ作り全体の底上げを
しようという試みが始まった


ということです。


PART2 ケイレツは「血」より「知」

知のケイレツ CASE1 三菱化学

北九州市黒崎地区が舞台です。
今、ここで地元の人たちしか知らない、
変化が
起きています。


黒崎地区とはどのような地域で、
そこで何が起こっているなのか、
日経ビジネスのリポートで確かめてみましょう。


 北九州市黒崎地区は、三菱化学黒崎事業所

 によって九州有数の企業城下町として

 栄えたエリアだ。


 筑豊炭田のお膝元で、石炭を原料にした

 化学製品を生産してきた。


 1990年代初頭から。主力だった汎用品の

 生産は海外工場への移管が進んだ。

 生産量は減少し、従業員は60年代に比べて

 5分の1ほどになった。
 

  (P.035)


つまり、昔日(せきじつ)の面影は感じられない
のです。


そんな黒崎事業所内に、真っ白な高い建物が
完成間近になっています。


日経ビジネスの写真を見ると、周囲には錆び
ついた設備や空き地が点在しています。


この白い建物は、「半導体向け洗浄剤で世界
シェア70%を占めるステラケミファの新工場だ」
(P.035)そうです。


普通に考えれば、三菱化学とステラケミファは
系列企業ということになりますね。
ところがそうではなかったのです。


 三菱化学とステラケミファに資本関係はない。

 少量の取引はあるものの、「ケイレツ」と

 呼ばれるような密接な関係はない。

 それでも、三菱化学はステラケミファを

 積極的に誘致した。
 

  (P.035)


製造業で長年にわたって行われてきた
「ケイレツ(英語化されています 注:藤巻)」
に基づく誘致ではなかったのです。


三菱化学はどんな意図を持って、ステラケミファを
積極的に誘致したのか気にかかります。


その真意は、こんなところにありました。


 進出企業との関係構築により目指しているのは、

 単なる遊休地の活用ではない。

 黒崎事業所は虎の子であるR&D(研究開発)

 部門を生かし、技術やノウハウといった「知」を

 軸に結び付いた「知のケイレツ」を作ろうとしている。
 

  (P.036)


「血」より「知」を重視したということになります。
従来の「ケイレツ」による取引では、上流企業が
下流企業(下請け企業)に発注するという一方向
だけのモノの流れでした。


単に製造コストを考えただけの関係でした。上流企業
の下流企業へ「コストの下げ圧力」を強めれば、
済んでいました。


現在では、日本企業は中国や韓国企業にコスト面で
太刀打ち出来なくなっています。


三菱化学が「知のケイレツ」を通じて目指したことは、
次のようなことだったのです。


 知のケイレツには、資本関係や商流に基づき

 長期間固定した上下関係は存在しない。

 業種や規模が違う企業が知財やアイデア、

 ノウハウを通じてつながり、人材の活発な

 交流が新たなイノベーションを生む。
 

  (P.036)


経営資源と言えば、ヒト、モノ、カネ、情報、時間、
さらにノウハウなどが挙げられます。


この6つの経営資源に共通する言葉は何でしょう?
私の考えは、「流れ」です。


人流(社内の異動、入社・退社)

物流(A地点からB地点へ移す)

金流(売買におけるお金のやり取り、給与の支給と
   受取など)

情報流(情報は流れるから価値を生む)

時間(刻々と変化し、止まることはない)

ノウハウ(継承されていかなければ宝の持ち腐れ)


三菱化学は従来のケイレツ内では、新しいものは
生み出されないと考えたのではないか、と思います。


異質なものが交流することによって、化学変化を
起こそうとしている、と私は考えました。
そうした試みによってイノベーションを起こそうと
していると思ったのです。



知のケイレツ CASE2 今治タオル

今治タオルについて聞いたことはありますか?


愛媛県今治市はタオルの生産地として知られていました。
しかし、海外勢の低価格品の輸入が急増し、
今治のタオル産業は危機に瀕していました。


そこで、危機意識を共有する同業者が生き残りを賭けて、
知恵を絞り合い、考えだしたのが「知のケイレツ」だった
のです。


今でこそ「今治タオル」というブランドに統一して
いますが、四国タオル工業組合が、「今治タオル」の
ブランド基準を作ったことがきっかけとなったそうです。
2007年のことでした。


ユニクロやセブン-イレブンなどのブランド力向上に力を
発揮している、「デザイナーの佐藤可士和氏にも協力を
仰ぎ、内外の目で今治製タオルの強みを分析した」
(P.039)そうです。


「ライバル同士で技を教え合い、基準を満たすタオルを
作り始めた」(P.039)ことで、四国のタオル産業に
大きな波を起こしたのです。


切磋琢磨するだけではなく、自分に厳しくという姿勢が
高品質を維持する動機づけになっているのでしょう。


 タオル会社・オリムの野口忠氏は「自分たちで

 自分たちに厳しくしている。それこそが今治が

 生きる道」と言う。

 こうした厳しさは、親睦を目的とした一般の

 業界団体一線を画す。
 

  (P.039)


「血」より「知」を重視したケイレツが、他業界にまで
広がるかどうかは定かではありませんが、従来通りの
考え方や、やり方に固執していては、生き残ることは
難しいかもしれません。


それは、企業だけにあてはまることではなく、個人レベル
でも同じことです。





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