今回から、『伊藤雅俊の商いのこころ』
(伊藤雅俊 日本経済新聞社刊)を
取り上げます。
著者は、イトーヨーカ堂の創業者です。
この本が出版されたのは、10年ほど前の
2003年12月17日です。
この10年間で、政権がめまぐるしく代わり、
リーマン・ショックや東日本大震災が
起きました。
食品偽装問題も起きました。安心・安全・
信頼性が失われました。
大きな時代の変化を経験しました。
しかしながら、伊藤さんがこの本の中で
書いていることは、少しも軸がぶれて
いません。
商売の基本、人間としての基本を忘れては
ならない、ということを繰り返し、
説いています。
『平家物語』の冒頭に有名な言葉があります。
「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり
沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす
おごれる人も久しからず ただ春の夜の
夢のごとし たけき者もついには滅びぬ
偏に風の前の塵に同じ」
私も含め、人間は少し良くなると、いつしか
奢りがでてくるものです。敢えて苦言を呈する
人も周囲からいなくなり、あたかも天下でも
取った気になったりするものです。
「裸の王様」です。
第1回目から、かなりズシンとくる言葉が、
出てきました。
会社が大きくなれば、潰れる心配が小さくなり、
安心できるだろうと思われるかもしれませんが、
私にはそうは思えません。むしろ、逆です。
会社が大きくなり、大勢の人が働くようになれば
その分だけ、責任が何倍も重くなったと感じる
のです。
(PP.12-13)
(001-1-0-000-202)
八十年近い人生で身に沁みついた私の
思いは、日々新たに確信の度を増して
います。
「お客様は来てくださらないもの」
「お取引先は売ってくださらないもの」
「銀行は貸してくださらないもの」
それが、商売の基本であるということです。
だからこそ、一番大切なのは信用なのであり、
信用の担保は、お金や物ではなく、人間
としての誠実さ、真面目さ、そして何よりも
真摯(しんし)であること、ということです。
(PP.14-15)
(002-1-0-000-203)
盛者必衰は世の習いです。感謝の言葉を忘れ、
己の力を過信する者の末路は、洋の東西、時代
の今昔を問いません。
そういう私自身、天に昇ろうとして神の怒りを
買った人間の僭越の象徴といわれる旧約聖書の
伝説、「バベルの塔」を上り詰めた、愚か者
なのではないかと自問しています。
何かを、恐ろしいことが待ち構えているような
気がしてなりません。
(P.16)
(003-1-0-000-204)
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