概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>
日経ビジネスの特集記事(26)
「中国失速」の真実 2013.10.7
「失われた10年」高度成長の爪痕
石炭バブルの宴は終了
中国が日本のGDP(国内総生産)を抜いて、
世界第2位となったのは、2010年のことでした。
その後の中国は、「世界の工場」として目覚ましい
発展を続けてきました。
ところが、最近になってその成長の影で、いろいろな
歪が露呈し始めました。
北京や上海では、大気汚染が深刻化し、市民は
マスクなくして外出することはままならなくなって
います。
PM2.5という有害物質は、中国上空に高く舞い
上がり、日本にも到達し、一部で被害が出ています。
そうした中国に、日経ビジネス取材班は乗り込み、
現場をつぶさに観て、中国の「今」をリポートして
います。
一般週刊誌とは一線を画す取材は、中国の問題は
「対岸の火事」ではないことを、私たちに突きつけて
います。
湯気が出るようなホットな話題を、日経ビジネスの
特集記事を通じてお伝えします。
最初は、マンションの建設ラッシュについてです。
その裏で、どんなことが起こっているのでしょうか?
北京から西へ500km離れた陜西省楡林市(P.28)
神木県。古くから炭鉱の街として知られ
た神木は、中国で最大級の埋蔵量を誇る
「神府東勝炭田」の中心に位置する。
この神木が本格的な発展を遂げたのは
胡錦濤(フージンタオ)政権(2003~2013年)
の10年間だった。
石炭価格はこの10年間、ほぼ右肩上がり
で上昇してきた。10年までは貧しい炭鉱
の町に過ぎなかった神木は「石炭マネー」
で急速に豊かになった。
しかし、その一方で、深刻な問題も出てきています。
今の中国は手放しで喜べる状況にはない。(P.28)
高度成長が残した爪痕が社会のあちこちに
露見している。胡錦涛政権は「和諧社会
(格差のない調和の取れた社会)」という
スローガンを掲げてきたが、成すべき
改革は先送りばかりしてきた。まさに
中国は「失われた10年」と呼べる状況
にある。
それは具体的にどのようなことでしょうか?
神木は今、新市街を中心にマンションの(PP.28-29)
建設ラッシュに沸いている。新市街
には計画的に配置された高層マンション
は、ざっと数えただけでも100棟を数える。
人口40万人足らずの神木にどれだけの
マンション需要があるのか。
神木の場合、事態をさらに悪化させて
いるのが高利貸しの存在だ。
神木では多くの住民が数十%から数百
%という高利で借金して、そのカネを
石炭開発に投資していた実態が明らか
になった。
石炭投資で儲けが出ていたのは僅かな
期間だけだった。
今年に入って石炭価格が下落すると
破産する者が続々と現れた。
赤字でも過剰生産
石炭は化石燃料であるため、石炭を燃やせば
有害物質や二酸化炭素を排出します。これらが
原因で公害をもたらしているのです。
半世紀近く前の日本も「高度成長」の名のもとに、
石油や石炭などの化石燃料を燃やし、大気中や川、
最終的に海に有害物質を垂れ流す愚を犯しました。
もちろん、そのことによって日本はGDP世界
第2位(当時)の国となったわけです。
物事には、必ず光と影の二面性があります。
中国の鉄鋼業界は今後も従来と変わら(P.31)
ない社会インフラ投資が続くと期待して、
毎月6000万トン以上という過去最高水準の
生産を年初から続けてきた。各社がフル
生産を続ければ、当然のことながら在庫は
積み上がる。
赤字でも過剰生産を続けるのはなぜか。
なぜなら生産を減らすと余剰人員が発生する。
業績不振で企業が淘汰されたら大量の失業者が
出てしまう。こうした事態を回避するために、
地方政府は地元企業を手厚く支援する。
問題はこれだけではすみません。
過剰生産は人民の生活も脅かしている。(P.31)
最近、中国で問題視されるようになった
大気汚染はその典型だ。「PM2.5」と
呼ばれる微粒子状物質は、石炭を大量に
燃焼させる鉱工業の発展と密接に関わっ
ている。
大気汚染のあまりのひどさに北京市民は
「諦めよう。この空気は中南海の人間も
吸っている」と慰め合う。
中南海とは共産党幹部が住む地区を指す。
環境汚染は大気だけでなく土壌や水質に
まで広がっている。
経済発展が生む格差
中国では土地の所有は認められていません。
使用権だけです。
そのため中国は北海道の土地を買いあさっているのです。
北海道は水資源が豊富であることが重要なポイントに
なっています。土地と水資源を同時に手に入れることが
できる、北海道の自然は中国人にとって宝の山なのです。
土地の使用権を持つ地主であれば現金(PP.32-33)
を支給されるか、代替地があてがわれる
など補償を受けられる。だが、借家住まい
の人には何の補償もない。つまみだされて
それで終わりだ。振り返ってみれば、
中国の経済発展は格差を認めることで
スタートしたと言っても過言ではない。
親が共産党幹部など特権階級に属す場合、
その子供は生まれながらにして豊かな生活が
保障される。こうした金持ちの2世代目を、
中国では皮肉を込めて「富二代」と呼ぶ。
一方、貧しい家庭の子供は「貧二代」と
呼ばれ、多くの貧しい生活を強いられる。
かくして貧富の格差は次世代にまで
引き継がれ固定化していくことになる。
中国がわかりにくい国と見られている理由の一つ
は、「中国政府は都合の悪い事実を公表しないこと
が多い」からでしょう。
中国における格差は、いたるところに弊害をもたらして
います。
今や格差は中国社会のあらゆるところ(P.33)
に腐敗を伴って存在している。中国改革研究
基金会の調査によると、いわゆる「灰色収入」
と呼ばれる来歴不明の収入の総額が6兆2000
億元(約100兆円)とGDPの12.2%に相当する
ことが分かった(2012年のデータ)。
この数字を見ると、中国の腐敗はここまで来ている
のか、と思うとゾッとしますね。
次回は、「だが早期破綻はない」と「『困る中国』こそ商機」
というテーマで、日経ビジネスの特集記事をお伝えします。
お楽しみに!
記事が面白かったら
ポチッとして下さい。

こちらのブログもご覧ください!
藤巻隆のアーカイブ
私の書棚(読み終わった本の一覧)