前回まで、揚力の説明にはベルヌーイの定理は使えないこと、コアンダ効果だけでは力不足の感があることを述べました。
この二つの説はどちらも、空気を非圧縮性の気体、として論じています。
*「循環とベルヌーイの定理説」では、
翼の上面は下面より流速が速いから、ベルヌーイの定理で上面は下面より気圧が低くなり、揚力が発生する、と揚力発生の直接のメカニズムとしています。
・ところで、ベルヌーイの定理の解説には、この定理が成り立つのは「非圧縮性で、非粘性の流体の定常流の時」ですよ、という条件が必ず付記されています。
つまり「圧縮性があり粘性もある流体(現実の空気)ではこの定理は使えないですよ」、とベルヌーイ氏がはっきり謳っていらっしゃるのですが、なぜか皆さんは無視していらっしゃるのです。
*「コアンダ効果と作用反作用説」では、
翼の上面ではコアンダ効果で空気が曲げられ、気圧が低くなっている。これは空気が非圧縮性で真空になることに抵抗を示すからである、として気圧が低くなって翼上面の流速が増すことの理由にしています。
・ところが、気圧が低くなるということは空気が膨張していることに他なりませんよね。(同温度)
<以下私見>
・音楽、雑踏、話し声、この世は音に満ち満ちた世界です。
音が伝わるということは、空気の粗密波、つまり膨張して気圧の低い、圧縮して気圧の高い、縦波が伝わること(伝播)なのです。
伝わると言うと一方向へ流れるイメージですが、常に花火のように四方八方へ膨らむように高速(音速)で伝播するのです。
そうです、我々を包むこの空気は非常に圧縮性に富んだ気体なのです。揚力を論ずる時だけ非圧縮性とするのはいささか強引すぎるのではないでしょうか?
私の最初の実験では、この空気中で発生する気圧の差は音速で解消されてしまうことと、速い流れが気圧が低いとは言えない、つまり揚力の説明にベルヌーイの定理は使えないことを実験で示したのです。
しかし、
・翼の上下面で気圧差があること、
そして
・翼の上下面で速度差があること、
いずれもれっきとした事実なのです!
じゃあ、どう言うこと?
*私は
①翼の周りでは従来の二説とは別のメカニズムで翼の上下面で気圧の差が発生し続け、
②その気圧差に導かれて翼の上下面で流速の差が発生し続けている、
と考えるのです。
空気の流れはどんな場合でも、方向も速度も常に気圧差に導かれて動いているはずだからです。