金沢・高岡町 「最後の料亭の味」を楽しむ(つる幸)
いよいよ、今月末に迫った、料亭「つる幸」の営業。
昭和40年から50年にわたり、金沢の和食をリードしてきた、店の灯が消えるとなると、寂しい想いが募って来ます。
…と、いっても会長は、つる幸には10回くらいしか行ったことないけど(笑)。
ラスト、となると、1か月半前からでも週末は取れず、何とか平日の夜に予約を取ることが出来ました。
最後のつる幸、楽しんでまいりましょう。
この日は、秘書に復活した、S君と訪問。奮発して、レギュラーメニューでは最高額の2万5千円のコースをお願いしました。
昔、20代で間違って国会議員になって「料亭、行きてえっ!」等々、失言し放題だった薄口政治評論家氏がいましたが、20代のS君もこの日、料亭デビュー。
デビューの店が「ラストつる幸」に滑り込みで間に合いました。
折角だから、上座に座ってもらいましょう(笑)。
少々緊張気味のようです。
食前酒で乾杯後は、先付として香箱ガニが運ばれてきました。
訪問日は、地元産カニ解禁の前だったので、この日は新潟産のもの。
季節の先取り感と一緒に、美味しく頂きました。
八寸。季節の盆。
賑やかな、料理の盛合わせがやってまいりました。
奥左から時計回りに、栗の渋皮煮、茶わん蒸し、カマス炙り寿司、サンマ卯の花和え、シャインマスカットの白和え、生スジコ、キヌカツギ アンチョビのせ。
栗の渋皮煮。
甘さを抑え、栗本来の旨みでホックりと仕上がった、大きい国産(石川産)の栗。
栗のイガはそうめん、紅葉の葉はビーツを薄くスライスして素揚げしてあります。
料理で深まりゆく秋を表現しているねぇ。
茶わん蒸し。
イカのルイベを薄くスライスしてイカスミと生クリームを和えたものと一緒に茶わん蒸しの上に乗せたコクのある一品。
ルイベが溶け切らないうちにスプーンですくい、口の中で融合させると、ふくよかな味に。
つる幸お得意の一品です。
和え物三品。
フレッシュな生スジコ、しっとりと落ち着いたサンマの卯の花あえ、素直なサンシャインマスカットの白和え。
酒が進みます(笑)。
炙りカマスの棒寿司。
口直し的な存在です。
椀物。
具は、能登産マツタケとタイ。
具材だけでなく、香り高い鰹節の香りにも、ホッとするねぇ。
造り。
奥からヒラメの薄造り、天然マグロのトロ、ボタンエビ。
…と書くと、フツーに読み過ごされてしまいますが、一品一品が美味い。
特に、ボタンエビがデカイ。
エビ好きのS君、大はしゃぎです。
大きくても大味じゃなくてしっかり甘くてエビの味がします。手を抜いておりません。
焼物。
丸々と太った子持ち天然アユ。もろみそ乗せオリーブ添え。
焼き目が鮮やか。
頭から尻尾まで頂けます。
香魚の名の通り、ハラワタの香ばしさも味わえます。
蒸し物。
からすみ入り小坂レンコン蒸し。
見た瞬間、餅?と思ってしまった一品。
はす蒸しだと、茶わんに入っているけどこちらは葉にくるんで蒸したもの。
見た目にも意表を突きます。
こちらの自家製からすみも、もう、食べられないのね。
あと、金沢で美味いからすみって言ったら、竹千代くらいになっちゃうぁ。
強肴。
能登牛ステーキ、柿の器入り。
能登牛のステーキを柿をくり貫いた器にソースごと盛りつけた一品。
素材そのものも柔らかくて美味しかったけど、ソースが柿の実と混然一体となって、一層、味を深くさせているのにも感動。
いいねぇ。
食事。
地中海料理店で見かけるタジン鍋のような土鍋が出てきます。
鍋が部屋に入った途端に広がる香しいかおりで、中身がすぐにわかりました。
蓋を開けると、能登産マツタケの炊き込みご飯!
なんと、栗も入っています。
誠に以って、贅沢です。
一杯目は仲居さんが茶碗に盛ってくれました。
香りもいいけど、味もサイコー。
S君も美味しぃ、美味しぃ、と言って箸を進めます。
サッと無くなり、会長は2杯目を…。
アレ、S君の茶わんもカラになりましたが、お代わりしようとしないで、会長の2杯目をジッと見ております。
「アレ?S君は(お代わりしないの)?」
「あのぅ、会長。私の分、持って帰ることは出来ませんか?こんなに美味しぃマツタケご飯は初めてなので、親にもひと口づつ食べさせたい…」
何とも健気な申し出。仲居さんに頼んで、残りのご飯を俵型のおむすび5個にして包んでもらいました。
これは、S君でなくても、持って帰りたくなるわな。
列車の時間が押してなければ、追加料金を払ってでも、ご飯を鍋ごと再注文したい気持ちでした。
味噌汁。
赤だしの豆腐。
香の物。
デザート。
オレンジのゼリー、ルビーロマン、キウイフルーツ。
茶。
上生菓子。
抹茶。
最後に大女将が挨拶に見えて、初めて訪問した25年以上前の話でひとしきり盛り上がりました。
ウム、サイコーに美味い夕餉なのでした。
非常に美味しかったです。
ご馳走さまでした。
来年の秋、「せつ理」でお会いしましょう、河田料理長!
料亭 つる幸
金沢市高岡町6-5
076-264-2375
営業時間 12:00~15:00 18:00~22:00
定休日 不定休