産経新聞
2024年6月9日(日)
日曜コラム
 
「無礼の時代」
シンガー・ソングライター
さだまさし

 

 

(抜粋)

 「高齢者は老害になる前に集団自決、集団切腹でもしたらどうか」と言い放った若い先生がある。
 若者にとっては老害が一番迷惑だという主張は一理あるようでもこれは言い過ぎ。口が滑ったと信じたいが、老人にとって無知の『若害』は大層迷惑なもの。(…)
 無礼な言葉だが、この手の人の無礼は治るまい。頭の良い人が陥る「自分は正しい」という幼い罠に嵌(は)まったようだ。自信満々の時は自分の言葉が誰かを傷つけているかもしれないという慮(おもんぱか)りを失う。正しい意見に傷つく方が悪いということか。だが老人から見たらこの種の発言は教養のない莫迦(ばか)に見える。ここで言う教養とは知識を上手に応用する心の力量のことだ。当然乍(なが)ら学歴や知識量でその人の心の高さを測ることなど決して出来ない。その地位でもだ。

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2024年4月14日掲載の日曜コラム(さだまさし)