<2023.12.29>加筆+再掲

<2023.12.09>

 

 

 

松山千春「慕情」


2023年4月19日にリリースされた通算83枚目のシングル


日本コロムビアページにはこの曲のキャッチコピーとして「時を越えて辿り着く愛の形」とうたわれている。

 

 

発売前の2023年3月26日放送の自身のラジオ番組「松山千春 ON THE RADIO」で「慕情」について次のように語っていた。

これは、「君は」「君の」とか「君」って出て来ますけど、恋愛の曲ととっていただいて全然構わないです。ただ、俺はフォークシンガーですから、この曲に自分が入れた気持ちは、「君」っていうところが「自分」または「日本」「日本国」っていうふうに捉えていただいても全然構いません。

ほんとに恋愛の曲として聴かれて当然なんですけど。やっぱり価値観、倫理、道徳、強盗だとか殺人だとか、あんなに治安は世界一(良い)と言っていて、こんな状態になってしまった日本を憂い、それを恋愛の曲の中で自分はメッセージしました。


「慕情」がリリースされ、春のツアーも始まった2023年6月25日放送の同番組では―

「慕情」という曲、これがギター一本で歌っていると余計その心が入る、っていう感じになるんですよ。それが果たしてみんなに通じるかどうかは別ものだったりするんだけど。ただ、俺の中では“ああ、いい曲だなぁ”と思ってね、シングルにしたわけでありますけどね。


コンサートでも一生懸命歌っていますし、出来るだけ多くの人に、この曲の持っている内容を伝えたいな、と思ってね。頑張ります。決して売れるような曲でもないし。けどフォークシンガーとしてこういう曲は残しておきたかった。

とも語っていた。

私自身は松山千春の世界そのもののメロディラインと、アレンジが施された曲全体からにじみ出る雰囲気もまた松山千春らしくていいと思っている。今の声で歌ってこそこの曲だとも。



 

「慕情」に対して私の願いが二つある。

まず、歌詞にもっと言葉を尽くして欲しかったし、言葉少ない中での同じフレーズのリフレインは避けて欲しかった。

 

リフレインの片方を削除して残るボディとなる歌詞は以下。

 

遠く 遠く 遠く 流されて
君は どこへ たどり着くのか

夢を 夢を 夢を 追いかけて
君は 訳も 分からずに居る

僕は 君を 愛しているよ
たとえ 姿 見失おうとも
 

僕は 何も 持たないけれど
君を 一人 きりにはしないから



この曲の画竜点睛たるメッセージは「君は どこへ たどり着くのか」と「君を 一人 きりにはしないから」の部分だと思っている。この二つの主旨と表現はライブなどでのトークを含めて松山千春の発想の定番。長年のファンはよく分かっている。

 

この二か所を、主旨は変えずにもっと磨き上げて別の表現で言葉を尽くして綴って欲しかった。上の松山千春の発言~「みんなに通じるかどうかは別ものだったりするんだけど」「この曲の持っている内容を伝えたい」~を聞いて、「みんなに通じる」「内容を伝える」にはある程度歌詞の言葉数と洗練された表現が必要だと思っている。

 

 

もうひとつは上の3月26日のラジオでの発言~俺はフォークシンガーですから、この曲に自分が入れた気持ちは、(…)こんな状態になってしまった日本を憂い、それを恋愛の曲の中で自分はメッセージしました~からすれば、この曲を披露して全国を回った2023年春のツアー、松山千春が「第二部はフォークシンガーとして歌の数々を聴いて欲しい」と言う第二部の中で歌って欲しかったと強く思う。

実際には始終第一部、松山千春が「第一部は恋愛の歌をお届けします」と言う第一部で歌っていた。

それが残念だった。本人が「恋愛の歌として聴いていただいて構いません。でもフォークシンガーとしてメッセージを込めました」と言ったが、第一部で歌ってしまえば、それはやっぱり恋愛の歌でしかないと必然的に思う。

 

第二部の中で、もっと言えば二部ラスト前で歌ったら、私の中での松山千春のこの曲への思いと曲自体への評価はもっと上がっていた。

今後のツアー、いつか「慕情」を、強く自負するフォークシンガーが歌う正真正銘のメッセージソングとして、第二部で歌ってくれることを願っている。

 

それらはきっときりのない願いであるかもしれないけれど、だからと言ってジョークにするつもりはなく、シリアスにそう願っている。

 

2023年12月24日放送の自身のラジオ番組で「来年は、自分が今考えてること、やりたいこと、そんなことをみんなに届けられるような楽曲を作りたいと考えている。正直言って、あと50年も60年も歌えるわけじゃないので、そのへんも考えながら、頑張ってやっていきたい」と語っていた。

 

願って書けば、ぜひそうして欲しい。50年、60年という長すぎる例えでなくても、3年後、5年後さえも歌っていられるかなんて誰にも分からない。作れるうちに作って欲しい。

 

もちろん、上の話しの前に言っていた「みなで歌って踊れるような曲」となれば、作りは変わってくるのかもしれないが。

 

松山千春自身の中から自然と歌詞とメロディが湧き出てくるのはそうでしょう。湧いて来た歌詞を、入念のうえにも入念にチェックし推敲して欲しい。主旨は変えないまでも必要があれば改変して、言葉を尽くして表現を磨きあげ、仕上げて欲しい。

 

その結果、メロディにも改変が必要ならば柔軟に変えて欲しい。

 

それはきりのない願いかもしれないと分かっていても、「この歌詞表現とメロディで自分の思いはじゅうぶんに聴き手に伝わるだろうか?」そこを突き詰めてくれることを願っている。

 

 


遠く 遠く 遠く 流されて
君は どこへ たどり着くのか

夢を 夢を 夢を 追いかけて
君は 訳も 分からずに居る

僕は 君を 愛しているよ
たとえ 姿 見失おうとも

遠く 遠く 遠く 流されて
君は どこへ たどり着くのか

僕は 何も 持たないけれど
君を 一人 きりにはしないから

夢を 夢を 夢を 追いかけて
君は 訳も 分からずに居る

遠く 遠く 遠く 流されて
君は どこへ たどり着くのか

 

 

「慕情」公式ライブ映像

【松山千春コンサート・ツアー2023】
2023年5月2日(火) 仙台サンプラザホール

(byギルドネクスト)

 

 

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