映画
『フライト』
・監督・製作:ロバート・ゼメキス/2012年アメリカ/138分
・原題:Flight
・日本公開:2013年3月1日
・キャスト:デンゼル・ワシントン/ドン・チードル/ケリー・ライリー/ジョン・グッドマン ほか
・鑑賞:2023年9月26日 NETFLIX
・解説(映画.comより)
「フォレスト・ガンプ 一期一会」のロバート・ゼメキス監督がデンゼル・ワシントンを主演に迎え、「キャスト・アウェイ」以来12年ぶりに手がけた実写作品。フロリダ州オーランド発、アトランタ行きの旅客機が飛行中に原因不明のトラブルに見舞われ、高度3万フィートから急降下を始める。機長のウィトカーはとっさの判断で奇跡的な緊急着陸に成功。多くの人命を救い、一夜にして国民的英雄となる。しかし、ウィトカーの血液中からアルコールが検出されたことから、ある疑惑が浮上し……。第85回アカデミー賞で主演男優賞、脚本賞にノミネートされた。
・鑑賞後所感
事故調査委員会の公聴会終了から約13か月後、刑務所の中で自身も受刑者であるウィップ・ウィトカー元・機長(デンゼル・ワシントン)が、他の受刑者たちに自身の経験を振り返りながら語っている仕立て。それは最後のシーンにならないと分からないが。
ウィップ機長が操縦する航空機が、尾翼破損のため突然急降下を始めた。機長は制御不能となった航空機の急降下を遅らせるために背面飛行(撮影の際にも実際の飛行機を背面飛行させた)させ、さらには地上への緊急着陸(胴体着陸)を敢行し、乗客・乗員102名のうち96名の命を救った。ウィップは「奇跡のパイロット」として一躍世間の注目を浴びる。
しかし事故調査委員会はウィップの血液からアルコールが検出されたとして、彼に過失致死罪の適用を検討していた。実は、ウィップはアルコール依存症で、かつコカインの常習者だった。通常なら生還不能ともされる状況下で多数の乗客・乗員を救った英雄と言われながらも、過失致死罪となれば終身刑の身となる。
映画のクライマックスである公聴会で事故の責任の所在をめぐる攻防戦が展開される。事故調査委員会は明確な裏付けをもって尾翼の破損が事故の原因のひとつと認定した。さらに、あの状況下での背面飛行と緊急着陸は、ウィップが唯一無二の飛行技術を有していたことの証と評価した。しかしそれで終わらず、ウィップの操縦前の数日間と当日の行動への尋問が始まった。フライト中も機内で飲酒していたことまでをも隠し通し、あくまで尾翼破損が原因で決着を図るのか。公聴会の最後に、ウィップの中に残っていた最後のひとつの良心が顔を出した。
刑務所の中でウィップ受刑者は仲間に語る。「あともうひとつ嘘をつけば、こんなところ(刑務所)にはいない。今頃も空を飛んでいただろう。間違った誇りを抱いて」。そしてすべてを失ったその後に、大切なものに初めて気づき、刑務所暮らし故にアルコール依存からも脱したウィップが語った。「アルコールも断った。生まれて初めて自由だ」
・予告映像
映画『フライト』予告編(2013年)2分01秒
・スペシャル映像(2分39秒)
・余滴
危機を救ったパイロットの最後の受け入れられ方で言えば、『ハドソン川の奇跡』とはまったく対照的な作品だった。