<2023.4.18再掲>

<2023.4.14記事>

 

2023年4月14日(金)12:00~12:30にTOKYO FMで放送された、ヒコロヒーがパーソナリティを担当する「トーキョー・エフエムロヒー」

 

 

音楽家、編曲家の瀬尾一三氏(以下写真)を迎えて、氏が【編曲(アレンジ)】と【中島みゆき】に関して大いに語った。

 



オープニング 1曲目

「旅人のうた」

(中島みゆき/編曲:瀬尾一三)

 

 

(瀬尾一三プロフィール紹介)

50年以上やっているので。ただしぶといだけですけど。

(ヒコロヒーが中島みゆきファンであることを明かす)

(一般的に)“編曲”の意味が分かっていらっしゃらない。アレンジ、英語で言うとアレンジです。編曲というのは曲を編む、ということで。僕はシンガーソングライターの方がおおいんですけど、仕事をするのが。彼らがギターとかピアノで歌って来ます。デモテープとしてね。でもそのまま出すということは何も手を付けないで出す、っていう。これもひとつの手はありますよね、そういうので。でもそれだと、10曲聴けます?ギターかピアノだけで。

僕がいつも考えているのは、曲の主人公をどういうふうに動かそうかっていうのを考えているんですよ。一応自分の中でその主役の映像を考えるんです、頭の中で。そのシーンに合う音楽をどうしようか、って。それが僕にとってカラオケになるんですよ。だから、イントロから始めて、どういうイントロにしたら歌の入(はい)りがいいかとか、それから、どういう間奏を入れれば次が盛り上がるとか。そういう案を考えていく。で、楽器をいろいろと加えていくってことです。

(こういう作業は)誰にもできると思いますけど。あくまで僕は、彼らが生産者ですよね。それで言うと僕は加工業者です。だから生産者が作ったものをそのままお店に出すっていうのもひとつの手ですね。それもそれであるけれども、そこのところにいろんな加工をしたり、パッケージをしたりとか…。いかに多くの人に聴いていただくかっていうところの間に入って僕がやってるってことです。

 

ヒコロヒー:中島みゆきさんはどんな方ですか?
瀬尾一三:みなさんはどういうイメージを持ってます?
ヒコロヒー:私は大ファンなので、彼女のパーソナルも一応勝手に知ったつもりのファン心理として…、多分世間的には、孤高のストイックな、ちょっと暗くて重たい、“なんちゅう女や”みたいな曲をいっぱい書いていて。でも私はみゆきさんのラジオも聴いていたこともあって、とっても繊細で優しくておちゃめで、ユーモアのセンスがとってもおありで。恋愛体質っていう部分では世間のみなさんとかぶる部分はあるんですけど。でも恋愛体質というよりも、人を大事にしたいとか、人に依存することを悪としていない、(…)多分みゆきさんの本心的にはそれ(依存)が悪じゃなくて、なんかそういう感性の方、っていうイメージです。

瀬尾一三:なるほどね。え〜、ほぼ当たってます。うじうじ一切してません。うじうじ全然してないです。決めるのは時間かかります。納得がいくまで考えているけど、決めたら絶対にそこから、“やっぱりこの間のあれはやめるわ”とかそういうことは一切言いません。“男前”です。

「一期一会」(中島みゆき/編曲:瀬尾一三)

 

 

これはテレビ番組のテーマ曲だったんですよ。だからそれに合うように、彼女もそれに“一期一会”という感じで出しているんですけども。最後の「あなたの笑顔を 忘れないで」っていうところは…。いろんな世界の国に行ってそこで生活して帰って来るっていう番組だったので。だからなるだけ色が付かないようにと思って、イントロとエンディングだけが、旅人が歩いている感じを出そうと思って、トボトボ歩いている感じで。

僕が中島さんと仕事をし始めたのが1988年からなんですね。その時にちょっと自分の中で思ったのは、中島みゆきの作品を、『中島みゆき』というジャンルを作ろうと。だから、時代に関係なく、エバーグリーンというか、スタンダードになるようにという感覚で。彼女が別に時代とともに生きていこうと思っているわけじゃなくて、彼女はどっちかと言ったらいつも皆さんの後ろを付いていくような感じなので。先端に行く人ではないので。人の一周遅れをトボトボ歩いて、みんなが落ちこぼれたやつを拾って歩くような人なので。そういう曲も多いから、そういうことを目指している人に時代を感じさせてはダメだと思うので。だからなるだけ流行りの音を入れない、流行りのコードとか、流行りの、なんかこうやるとカッコいいだろう、みたいなものは入れないようにしています。


(中島みゆき最新オリジナルアルバム『世界が違って見える日』について)


 


これはですね、実は2020年に彼女のラストツアーというかたちで「結果オーライ」というツアーを組んでいたんですが、いろいろな事情で、途中で8回(公演を)やって出来なくなりましたので。

 

2年、3年っていう間が空いた時に彼女がいろいろと書きためてたと思うですよね、作品を、自分の中で。その状況、いろんな世界の状況、日本の状況を見た時に、その思いを集めて、出そう、作ろうということで。「世界が違って見える日」ってなんか題名だけ聞くとちょっとネガティブな感じに聞こえるかもしれませんが、これはとてもポジティブな考え方で。ある瞬間、ふとしたことによって目の前が開(ひら)けたりとか、そういう瞬間っていうのが必ずあるよ、それを目標に作ったと思います。

アルバムを買っていただけると、彼女が(歌詞カードの)最後に書いているですけども。そこにはなんでこういうふうにしたか書いてあるので、ぜひ気になる方は買って、歌詞カードを見てください(以下、一部抜粋:筆者挿入)

 

あとがき―「世界が違って見える日」―

思いがけない、ほんの小さなきっかけで、世界全部が180°違ったものに見えて驚く、そういう瞬間。
ときには世界が180°絶望方向へ見えてしまうような出来事もあるけれど。
それでも、きっと次の瞬間には、世界が180°希望方向へ見えて来るような出来事が、あたなにも、ありますように。  中島みゆき


(中島みゆきと)会うたびにびっくりするんですよ、僕も。さっきも言いましたけど、33年一緒に作ってコンビでやってますけども。新曲をレコーディングするたびに、こういう言葉とか、こういう感情が出て来るんだろうっていうのを、そろそろもう枯れるんじゃねぇかな?って思った時期もあったんですよ。そしたらまた次の泉が出て来るというか、次の原泉が出て来ちゃった、また出て来ると…、どこまでこれは出て来るんだ?っていう感じで、それがすごい楽しみですね。

「俱に」(中島みゆき/編曲:瀬尾一三)

もうひとつだけ言いたいのは、ここで、最後に大サビに行く時に一瞬空白になる(音がなくなる)、素になるんですよ。その“素”はなんであるのかって言ったら、僕の考えですよ、僕がなんでそうしたかって言ったら。そこはつり橋が途中で切れてるんです。そこをジャンプして飛ぶか飛ばないかっていう決心のところで。で、んっ!て切れた時に立ち止まって、で、“俱に”って言ってジャンプする。というイメージでやってるんですよ、一番最後の「俱に」っていうところが。だからアレンジってそういうことなんですよ。僕はそういうイメージを持ってやってるんで、それをちょっとでも感じていただけると嬉しいなと。