舞台『OVER SMILE 2024』
 

観賞サポートがついたという情報をいただき、観に行きました。

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 ↑あうるすぽっとのフクロウが可愛い!

 

とても壮大な世界観の作品でした。舞台衣装がとても素敵で、殺陣も迫力がありました。

 

この作品に鑑賞サポート(台本)をつけようとされたことはとても嬉しいし、もっとサポートしたかったことがあっても出来なかった無念さもあるのではないか…と想像しています。

 

 

この作品では、聞こえない少女(スー)が物語の鍵を握るメインキャラとして描かれています。
 
 
彼女は手話で話しますが、
聴者の俳優が演じています。

 

手話や聞こえない人のことを大きく取り上げた作品なので、初演当時は聞こえない人にも喜ばれただろうなと思います。

手話を覚える舞台関係者の努力も並大抵のものではなかったでしょう。

 

とはいえ、私は今回が初見なので辛口になってしまいますが、今は手話が出てくればそれだけで喜べる時代ではないように感じました。

 

当事者による表象の問題が頻繁に叫ばれるようになり、

アカデミー賞でもマイノリティ当事者を起用していることが審査の前提となっていて、時代は変わりつつあります。

 

何度も再演を重ねている作品です。

次こそは、、、。

 
劇中では、
ある登場人物がこんな台詞を話します。
 
「スーの耳を治す方法はないのか?
 もしくは孤独を癒す方法はないのか?」
 
この台詞を聞いた時、私は持っていた台本タブレットを思わずぶん投げそうになりました(汗)
 
 
なぜなら健常者の目線から「障害は治すべきもの」という趣旨の台詞が発せられることは、当事者にとっては辛いものがありました。
聞こえなくてもそのままで安心して暮らせる世の中にする、というのがこれからの社会の在り方です。鑑賞サポートもその一環では。
 
 
また、「孤独を癒す方法はないのか」と言っていますが、この舞台は聞こえない観客自身がめちゃくちゃ孤独なのです。
 
 
手話の内容は、舞台上の壁に字幕投影されていました。
投影字幕は、字幕の中でも一番観やすい字幕です。
手話が分からない観客のために、投影したのでしょう。
 
でも、音声の内容が字幕になって出てくることはありませんでした。。
 
作品には、聞こえない役や手話が出てくるにも関わらず聞こえる客と、聞こえない客は対等ではない」という現実を常に突きつけられ、残念な思いでみていました。
 
また、聴観客は前方に詰めていて、
後ろの方は空席でした。
聞こえない観客は後列の鑑賞サポート席で
1人ぽつんと舞台を観ている、、そんな状況でした。
 
 
 
もしもスー役が、本当に聞こえない俳優だったなら。
「耳を治せないのか」というセリフによってもたらされる心の痛みも共有し共感できているかのような、心強いような気持ちを抱いていたと思います。
 
でも、、、
スー役を演じたのは聞こえる俳優でした。
 
カーテンコールでは、
スー役の俳優が少し長い挨拶をしました。
 
でも彼女は手話ではなく音声で話したので、
一言も分かりませんでした。。。
 
 
役者がマイクをつけていないせいか、聞こえにくく、急いで音声認識アプリを立ち上げましたがアプリも全く認識しませんでした。
 
舞台で使われた手話は、誰に向けた手話だったのでしょうか。
とても寂しい気持ちになりました。
 
 
他にも気になる点がいくつかありました。
これはこの舞台に限ったことではありませんが、聞こえない人を作品の中で大きく扱う場合は、手話指導だけではなく、当事者監修も必要なのではないでしょうか。
 
当事者が安心して舞台を鑑賞するために何ができるのか。様々な課題について考えることができる貴重な機会になりました。
 
 

  観賞サポートについて

 

台本タブレットとボディソニック(音を振動で伝える装置)がありました。

 

席は後列指定です。
 
 
台本タブレット端末は台本データが入ったタブレットを、舞台を観ながら自分でページをめくって読みます。
 
タブレットはKindle端末を利用していましたが、時々エラーが起きて、台本がうまく読めず。
 
鑑賞サポート端末の故障は、照明やマイクの故障と同じこと。情報が届かなくなりますし、没入感も無くなってしまいます。
 
kindle端末でのトラブルは過去にもあり、開演前に端末が固まってしまいました。
自分で電子書籍を読むにはいいと思いますが、、重い台本データを何時間も読み続けるのは負荷が大きいのでしょうね。。
 
端末として安価なのはわかるのですが、チケット代は安くないので、
安定したiPadか、安価すぎないandroid端末あたりを導入して欲しいものです。
エラーが起きたことは劇団にお伝えしました。
 
 
 

ボディソニックは、音楽にあわせてクッションが振動して音を伝えてくれるというもの。

 

聞こえない人が音を感じるには有効だと思います。音は聞こえている難聴者も、音の存在感や迫力をより感じられると思いました。

ヘッドホンは私の聴力(重度難聴)では

補聴器がハウリングしてしまいうまく使えず、台詞の聞き取りの補助にはなりませんでした。

ヘッドホンはどちらかというと軽度難聴向けだと思います。

 

写真の真ん中にある丸いものも振動するのですが、タブレットを持ってめくる作業があるのに、さらにこちらまで持つことはできませんでした。お腹と荷物の間に挟んでおいたら、途中で床に落ちてました。

 

 
後列指定というのは鑑賞条件としては少々大変でした。
音が聞こえないので口の形を読んで今何を言っているか把握しているためです。
 
100席規模なら後列でもさほど悪くないのですが、300席規模だと流石に遠かった。
役者はマイクをつけていないので、声も聞き取りにくいです。
 
ボディソニックはクッションの分座高が高くなりますが、後ろが通路の席なら少し座高が高くなっても大丈夫なのではないか、とのこと。
あうるすぽっとなら鑑賞サポート席はG列あたりでも良かったんじゃないかしら。。
 
 
今回、台本タブレットとボディソニックの組み合わせを見るのは初めてでした。特にボディソニックは演劇では殆ど見かけません。
 
私は舞台鑑賞サポートマニア笑的なところがあるので、このサポートの組み合わせは、合うのか合わないのか、鑑賞するうえでどう影響するのか、知ることができたのは良かったです。