木ノ下歌舞伎『勧進帳』を観てきました。
字幕、ヒアリングループあり。
ここ何年か気になっていたものの、字幕の日の予定が合わず、
観られていなかった木ノ下歌舞伎。
誰もが知っている有名な 「勧進帳」は
こんなふうに解釈できる深いお話だったの⁉️という驚きと感動と共に鑑賞しました。
今回、観られて良かったです!
以下、ネタバレあります。
木ノ下歌舞伎は、歌舞伎を現代劇に置き換えて上演しています。
よくよく考えると、勧進帳って凄い話。
自分たちの大将義経を一番低い身分の者に偽装して関を通ろうとし、義経だとバレそうになると、お前のせいで疑われるんだ!と義経を棒で打ち据える。
武家社会…生まれながらにして身分が確定するような社会では、畏れ多くてなかなか出来ないことでもある。
それが義経の命を助けるとしても。
社会のルールに縛られない考えや行動ができる弁慶への憧れすら感じてしまう。
この弁慶をアメリカ人の役者さんが演じているのだけど、いやはやもう格好いい~!
むちゃくちゃ体格が良いので弁慶っぽいし、
(身長190センチ、体重130キロ!wiki調べ)
関西弁も迫力倍増。
もともと関西にお住まいの方なんですね!
適当な巻物を勧進帳だとでっち上げて読み、
本物の山伏が乗り移ったかのような気魄で、富樫の追求を切り抜けるシーンは圧巻でした。
なんとか関を通り抜け、
義経の前で土下座して非礼を詫びる弁慶、
上座でじっと黙っている義経。
義経様にこんな非礼な真似は絶対にできない、死んでお詫びする案件などと、長々と批判をする義経の家来。
義経が、オイ、ちょっとやめろよ、というフリをするので笑いが起きる。
ここでなぜか突然始まるラップ!
家来たちがサングラス🕶️を
すちゃっとかけるのがカッコよくて大爆笑
でも歌詞に死ぬほど泣かされた!!!
こんな内容でした。
本当は弁慶の手を取って礼を言いたい義経、
でも言えない。
そこには身分の壁もある。
大将を低い身分の者に仕立て、
関を通るという案を考え、
見事に実行した弁慶も、
現実には、このボーダーを超えられない。
出会った頃は何者でもなかった二人。
寺に預けられていた子と、千人斬り。
共に戦い、積み上げてきた歴史。
二人の気持ち、
二人の間の超えられない壁、
様々な二人の思いが押し寄せてきて
涙腺崩壊😭😭😭
サングラスかけた家来のラップ(歌)で
こんなに泣かされるって、何事…。
その後、安宅の関を超えてホッとした弁慶たちを追いかけてきた富樫に、ドキッ!!
…と思ったら両手に下げた
スーパーの袋に大量のスナック菓子。
😂😂😂😂
疑ったお詫びに酒を振る舞いたいと言う富樫。
義経を先に行かせて、
富樫と酒盛りを始める弁慶と家来たち。
それをみて、
君たちは楽しそうでいいなぁ、、、
という富樫。
富樫は関所のエライ人だけど、
部下からは受け入れられていない所がある。
ボーダーレスに生きている(ように見える)者への憧れがそこにあり、
関所を超えることを富樫が許した理由が
ストン…
と腑に落ちてきたように感じました。
でもその後、富樫は義経を逃した罰を受けるのかな…という悲哀に満ちた予感と共に幕を下ろす舞台。
舞台上に残った楽し気な宴会の跡が、どこか切ない余韻を残す。
社会のルールに縛られない考え方が出来る者への憧れ、
現実を生きる者の哀しみ、
一歩踏み出す勇気…。
笑って、泣いて、
観客一人一人の生き方までも問うような
素晴らしい勧進帳でした。
舞台は中央に細長い台が設けられ、
舞台を隔てて左右に客席が配置される形でした。
自分から舞台とともに、舞台の向かい側に座っている客の反応も見えるのが面白い。
舞台上はとてもシンプルな作りだが照明がとても良く、
「義経包囲網」みたいなイメージの照明の中で
身をかがめて、すり足で歩く義経が印象深い。
また、義経と弁慶の間にある境界線を表現するライティングもわかりやすくて良かった。
家来たちは富樫の部下と義経の部下の二役を演じるが、
持ち物(数珠)を身につけるかどうかで義経の家来なのか、富樫の家来なのかはっきり分かりやすくなっていた。
歌舞伎も10年ぶりぐらいに観てみたくなりました。
しかし字幕が無い、、、
国立劇場の歌舞伎は字幕あったかな。
てか国立劇場って建て替えどうなるんだっけ。
鑑賞サポートについて
冒頭で缶をプシュッとあける音が
ヒアリングループで聞こえてきたのにびっくり。
(もしかすると、このプシュッと言う音は、音響さんが付けてるのかしら?)
私はだいぶ生の音は聞こえなくなってきてしまったけど、補聴器である程度聞こえる人はヒアリングループがあることで、舞台の世界を凄く楽しめるのではないかしら。
東京芸術劇場はヒアリングループが常設されているのがありがたい。
鳥の声はヒアリングループでも聞こえず。
(高い音は聞き取るのが苦手)
でも字幕で鳥が鳴いているという情報が出ることで、
ちょっと鄙びた関所の雰囲気を感じることができました。
冒頭で生首のようなものを置く場面があり、
「重いものをゴトっと置く音」
という字幕の説明が良かった。
その生首の見た目は軽そうに見えたから(発泡スチロールっぽい)音の説明があることでリアルな生首のイメージが伝わってきた。
字幕機はアームが付いているので、手で持たなくても良くとても楽でした。
ラップ(歌詞)と、弁慶が富樫の追求を必死に切り抜けるシーンの台詞は、
聞こえる友達からも、字幕が欲しかったと言われた。
そうでしょうねぇ💦
いずれは字幕も舞台上のスクリーンに出して欲しいな。
この前観たウエクミ先生のオペラのように、字幕も演出の一部とするような舞台がみてみたい。
実は、タブレット字幕と舞台の両方を目で追うのはそれなりに大変。
他の人も字幕が読めた方が絶対いい。
観劇後は、主宰者木ノ下さんと勧進帳を深めるお話会がありました。
こちらも文字サポート、手話通訳付き。
これが素晴らしかった!
字幕があっても分からないことって出てくるので、制作者に聞くことができるのはありがたい。
今回、アメリカ人の役者さんが弁慶を演じて、
見た目は女性の方が義経を演じていました。
(あとから聞くとジェンダーレスの役者さんでした)
どんどんどんどん音が聞こえなくなってきているわたし、
この二人の音声(声色?)ってどうなってるの?
というのが謎でした。
この前の「宇宙船イン・ビトウィーン号の窓」では
今よりもう少し聞こえていたのですが、
日本語ネイティブではない役者さんの台詞(日本語)が
けっこうたどたどしかったのよね。
まぁでもあんまり深く考えず
観たままを捉えて良かったのかな、と。
弁慶はカッコよくてばっちり合ってましたし、
義経は宝塚男役みたいでした✨
お話会の準備も大変だったと思いますが
舞台制作者の方に、
聞こえない人はこういう風に舞台を楽しんでいるんだ、
こんなサポートが必要なんだ、と
理解していただくきっかけになりますね。
東京芸術劇場の舞台は字幕付きで上演されることが多いので、他の舞台でもお話会を実施して頂けるといいなぁ。。
主宰と劇場が連携して、様々な取り組みをされていたことが嬉しかった『勧進帳』でした。