色々とご縁を頂き、

一週間で3本の演劇作品を鑑賞しました。

 

3本とも、字幕や台本タブレットなどのサポートがあり、その場で台詞を読みながら鑑賞することができました。

時代が変わってきているのを感じています。

 

 

そのうちの一つがチェルフィッチュ

岸田國士戯曲賞をはじめ様々な賞を受賞している劇作家、岡田利規さんが主宰する劇団です。

 

よくチルフィッチュと間違えていたのですが、selfishの幼児語がもとになっていると知ってから間違えなくなりました。

 

 

場所は吉祥寺シアター。

新しい劇場で、一階にカフェが併設され、

こぢんまりとして素敵な空間です。

 

 

 

 

『宇宙船イン・ビトウィーン号の窓』

宇宙に日本語を広めるというミッションを果たすために、宇宙船に乗っている乗組員たちの物語。

 

乗組員たちは、日本語ネイティブではない役者が演じている。

つまり、役の上では日本語を広める活動をしているけど、役者の日本語はペラペラではないのだ。

 

更に彼らの台詞は、普段は使わないような表現や回りくどい言い回しになっていたりする。

 

すごい高度なことをやっているのね、、、!

というのが第一印象だった。

 

 

日本語ネイティブではない役者が、回りくどい日本語を話すので、

その訛りや言葉のイントネーションも含めて面白さがあるようで、それを聞いて観客が笑う。

 

ちなみに聞こえない人もイントネーションが崩れやすく、外国の人に間違われることがある。。

 

 

 

冒頭で宇宙の音楽について語る乗組員たち。

地球の音楽とは全く違う、宇宙の音楽とは何なのか。

地球の音楽は嫌なことを思い出すから嫌い、宇宙の音楽がいいと言いながら

ヘッドホンをかけて、宇宙の音楽を聴く乗組員たち。

「ろう者のオンガク」を追求する活動をされている方々のことを思い出した。

 

 

 

宇宙船には、フィルター掃除などをするアンドロイドが一台乗っている。

このアンドロイドが反乱を起こすシーンは、

乗組員たちのマイクロアグレッション、いわゆる無意識の差別が凝縮して表現されていた。

 

アンドロイドが、周りに気を遣いすぎるぐらい気を遣っているのも、

乗組員たちの小さな差別的発言にイラッとしているのも、

時には反乱を起こしたくなるのも凄く良くわかる(汗)

 

アンドロイドが反乱を起こし、乗組員たちに対して武器を構えるシーンで、観客はドッと笑った。

何が面白かったのかなぁ。。

 

乗組員がアンドロイドに対して、

「何故反乱を起こそうとするの?皆んなあなたに敬意を払って接してますよ!」

と言うシーンは、吐き気すらしたし、

最後にアンドロイドが思い直して、全員に謝るシーンは、謝らなくていいのに!と、心の中で叫んでしまった。

 

 

なお、このアンドロイドや、

その後出てくる地球外生命体は、

日本語を母語とする人が演じている。 

この二人だけ、日本語がペラペラだ。

日本人役の人が日本語非ネイティブで、

アンドロイドや地球外生命体を演じる役者は日本語ネイティブ、という逆転が何とも興味深い。

 

 

 

突然、宇宙船に地球外生命体が乗り込んでくる。

その地球外生命体に対して、乗組員がチェッカーを使って危険度チェックをするのだが、

この場面も、日常的にマジョリティがマイノリティに向けて行なっていることの具現化であった。

 

この人はマジョリティに害をもたらさないか?

有益なことをしてくれる人なのか?

マイノリティは、そんな目線に日々晒されている。

 

それと同じことが、地球外生命体への危険度チェックという形で舞台の上で繰り広げられ、

チェッカーから出てくる無機質な音も相まって、観客は笑っていた。

 

 

「半分姉弟」で読んだことも思い出し、

ちょっぴり心がざらついた。

 

 

 「俺らはなんか特別群れにとって有用やないと一員にしてもらえんやと思う」

『半分姉弟』のこのセリフ、本当に泣けたなぁ。。

 

 

笑う観客がいる、というところも、

おそらく全てが演出家の計算のうちなのだろう。

 

日本語という言語に対する固定観念をひっくり返し、

差別を炙り出そうとする仕掛けを施し、

観る側のリテラシーも試される、

なんとも意欲的な試みだったと思う。

 

 

この公演は今後、京都でも上演される。

 

 

 

 

  鑑賞サポートについて

 

台本タブレットをお借りした。

私は紙台本貸し出しでは、その場の台詞は全く分からないので有り難いが、やはり日本語字幕が欲しかったというのが本音ではある。

 
スタッフの方が、前の方の席を促してくださったが、

急遽タブレットを用意いただいたこともあり

遠慮して一番後ろの端に座った。

 

しかしこの作品は客席が明るく、

暗転もなかったため

真ん中あたりに座っても問題なさそうだった。

 

230席ほどの劇場だが、

後ろの席は、表情がやや見えにくい。

また吉祥寺シアターに行く時があれば

前の方に座るのが良いと覚えておこう。

 

なお舞台上には英語字幕があった。

日本語を解さない人は英語字幕で鑑賞するということだ。


英語字幕だけを頼りに鑑賞した人は、この作品をどのように捉えたのか。

笑いが起きていることの意味は理解できたのか。

とても興味深い。