先日の記事で、歌詞の著作権で、鑑賞サポートが出来ない事情を書かせていただきました。

右矢印月組公演『Full Swing!』鑑賞サポートと著作権 

 

演劇において、歌は「登場人物の心情」や「その場の雰囲気」「その歌が流行った時代の空気」等を伝えるとても大事な存在です。

 

著作権のために、歌詞の鑑賞サポートが出来ないことは

聞こえない人がその作品を理解するうえで、致命的なことです、、、。

 

歌詞だけではありません。

台本の貸し出しでも、著作権で対応出来ないということがあります。

 

フォロワーさん(聞こえない舞台ファン)が、

劇団四季『オペラ座の怪人』を観に行くので、

聞こえないセリフや歌詞の情報を補うために台本を貸して欲しい、サポートをして欲しいとご相談したのですが、

著作権を理由に、対応を断られました。

 

 

代替案の提示も、今のところないそうです。

 

つまり聞こえない人が舞台を観るのに

何も情報がないのです。。

 

台本貸し出しが出来ないというのは、

3つのパターンがあるように思います。

 

  ①作品の権利の問題?

 

舞台作品、その台本は著作物です。

 

『オペラ座の怪人』のような、もともとは海外で上演された作品の場合、作品を利用するにあたって利用契約を結んでいます。

しかし、聞こえない人に台本を貸し出す、字幕を出すということが、その契約に入っていない。

 

改めて許諾を得るにしても、時間がかかるために観劇日に間に合わない

(または手間がかかるために、やりたがらない)

 

・・・というようなことが考えられます。

 

聴覚障害者のために字幕等を作る場合の例外規定も、劇団四季の場合は使えません。

(著作権法第37条の2)

 

何故なら、それが出来るのは、文化庁の指定したボランティア団体のみだからです。

現在、指定されているボランティア団体は4団体。

その中に演劇をメインにしている団体は一つもありません。

 

また、この例外規定は、台本の貸し出しには使えません。

(手元で表示する字幕のみ)

 

  ②歌詞の著作権?

 

舞台において、J-POPや洋楽などの一般の曲が使われることもあります。

 

例えば、90年代の出来事を扱った作品で、その時代の空気を出したいので、実際に流行った歌謡曲を歌う。

 

アニメが原作の舞台で、そのアニメの主題歌を主人公が歌う。

 

また、宝塚のようなショー、コンサート系舞台の場合は、一般の邦楽や洋楽も使われます。

 

台本に載っている歌詞が著作権で出せないから、台本が貸し出せない、というのです。

 

これは私も、経験しています

「歌詞を塗りつぶして貸してもらえないか」と相談しました。

 

しかし、劇団からは「塗りつぶしたくない」との返答でした。

(大量にあったのだと思います)

 

 

  ③社内規程

 

これは著作権ではありませんが・・・

 

台本は部外者には絶対に見せないという規程があり、役者にもそれを厳しく守らせている。だから聞こえない客であろうと、台本は貸し出せない。

客に台本を貸すなんてとんでもない。

 

 

これも、実際に言われたことがあります。凄く悲しかったです。

(後日改善されました)

 

当時、この対応について弁護士に聞いたところ、

法律(障害者差別解消法)よりも、社内規程が優先されることはない、とのことです。

 

当たり前ですね。

 

そもそも客を喜ばせるエンターテインメント業において、社内規程で客を悲しませてどうするのか。

 

  何故このようなことが起きるのか

 

舞台のチケットも買って楽しみにして問い合わせたのに、

「何も出来ない」という返答は本当に残念ですよね。。

 

よく「原作を見て舞台を観に行ってはどうか」と言われることがあります。

 

オペラ座の怪人は、映画や、海外の舞台Blu-rayもあります。

(私も大好きで持ってます)

 

 

 

 

しかし、観て覚えて行ったからといって、

日本の舞台を100%楽しんでいるわけではありません。

 

メロディは同じでも、歌詞は和訳されていることが多いです。

♫ My power  over you.  Grow stronger yet.. と歌詞を覚えてても、耳からは全然違う歌詞の歌声が入ってくるわけです。

 

メロディは聞こえてくるし、原曲も頭に浮かぶけれど、

日本語では何と歌っているのだろう、、、

知りたいけど分からない。。という

一抹の寂しい気持ちが生まれてきます。

 

歌詞の和訳の場合、外国語と日本語では言葉の長さが違いますが、同じメロディにのせないといけないので、どんなふうに工夫して和訳したのか知ることも、観劇の面白いところだと思います。

しかしそれも、わかりません。

 

台詞も聞こえないので、今はおそらく、こういうことを言っているのだろう、と想像するだけです。

 

聞こえる人の立場で例えると、

外国語の演劇を、

音はなく、口パク状態で観ているようなものだと

思って頂けたらと思います。

 

 

では、何故こういうことが起きるのか。

 

●聞こえない観客に鑑賞サポートを提供するために、著作者への申請や、費用が必要

 

●著作権の例外規定は、聞こえない人が舞台を観に行くというケースに対応できていない

 

●そもそも聞こえない人が観に来ると思われてない、要望した一人のために対応できないと思われている

 

 

…こういうことが、台本貸し出しすら断られる原因になっているのかなと思います。

 

今年(2022年)も、私や知人が体験しただけで2件、

既に貸し出しが断られています。

 

SNSでも、貸出を断られたというショックの声があがることがあります。

引用させて頂きます。

 

 

 

作品の上演を企画するときに、障害者向けの鑑賞サポートを行うことも前提にして、きちんと対応しているのが帝国劇場です。

 

海外原作ものの作品も多いですが、何年か前から障害のある人向けに台本貸し出しをサービス化しています。

更に、タブレット台本も導入され、舞台を観ながら読めるようになりました。

image

 

老若男女問わず多くのファンがいる四季ですから

聞こえない人も舞台が観られるということが、

当たり前のことになるように願っています。

(コロナ禍で中止になったライオンキング、リトルマーメイドの字幕も早く再開しますように!)

 

 

右矢印台本貸し出しの困難さについてご興味を持たれた方はこちらの記事も是非ご覧ください。

【舞台】台本貸し出しで起きたトンデモ事例集【聴覚障害】

 

 

 

右矢印ケンヒル版オペラ座の怪人を観た時の

観劇記録です。

 

 

 

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