『Sledgehammer』 Peter Gabriel 歌詞の和訳 | Football, Guitar & Music

Sledgehammer
Peter Gabriel

Hey, hey, you
Tell me how have you been?

ヘイ、ヘイ

どう、元気にしてた?

 

You could have a steam train
If you just lay down your tracks
You could have an aeroplane flying
If you bring your blue sky back
All you do is call me
I'll be anything you need

蒸気機関車を持てるよ

自分でレールを敷いたらさ

空飛ぶ飛行機を手に入れられるよ

キミの青い空を持ってこられるならね

オレを呼ぶだけでいいんだから

キミが欲しいものになれるさ

 

ピーター・ガブリエルがジェネシスを脱退してから作った曲です。『ピーター・ガブリエル(正伝)』(スペンサー・ブライト著、音楽之友社)によると、「ジェネシスを脱退してから六年たっても、ピーターはまだ自身が持てなかった」。エンジニアのデヴィッド・ロードも「自分が正しいんだという自信が持てない点で、ぼくたちはすごく似通った性格だと思います」と話しています。その脱退から10年以上たち、5枚目のアルバムで、大きな成功をつかみました。全世界で500万枚もの売り上げたアルバム『So』の2曲目がこの曲です。

 

You could have a big dipper
Going up and down, all around the bends
You could have a bumper car, bumping
This amusement never ends

ジェットコースターを持っちゃおう

昇って、降りて、大きく曲がってく

バンバンぶつかる、遊園地のゴーカートをゲットできる

お楽しみは終わらないのさ

 

ピーター・ガブリエルの生まれたイギリスで、北西部の観光地ブラックプールにある遊園地のコースターが「Big Dipper」という名前だということ。100年前に出来たもので、今でも人気のアトラクションのようです。あと、バンパーカーというよりは、ゴーカートの方がイメージを湧きやすいかなと思いました。

 最初は「Big Dipper」が分からなくて、ひしゃく?北斗七星?と考えていました。でも、次の「ゴーカート(バンパーカー)」と、「お楽しみは終わらない」「大きく曲がる」のを元にすると、何か遊具なのかと思い、コースターにたどり着きました。スレッジハンマーの有名なミュージックビデオには、正にコースターに乗る場面が描かれています。


I wanna be your sledgehammer
Why don't you call my name?
Oh, let me be your sledgehammer
This will be my testimony

キミのスレッジハンマーになりたいんだ

オレの名前を呼んでみてよ

キミの大ハンマーにして欲しいんだ

これはオレの宣誓にするから


Show me 'round your fruit cage
'Cause I will be your honey bee
Open up your fruit cage
Where the fruit is as sweet as can be

キミの果物かごに案内してよ

だって、オレはミツバチになるんだから

キミの果物かごを開いてよ

そこは、果物がこの上なく甘いところ

 

ここらへんまで訳してきて「ん?」と疑問が。「これって、もしかして性的な曲なのかな?」と思いました。『ピーター・ガブリエル(正伝)』によると、ジェネシスに在籍していた1974年、ジ・オズモンズのコンサートが極めて熱狂的と言うことで見に出かけたピーター・ガブリエル。当のダニー・オズモンズは「本当の狂乱ぶりっていうのがどんなものかが見たかったんだね。彼が見たかったのはほとんどがタイミング、セックス・アピールの部分だったね」とのこと。この当時から、独創的なステージングに性的な魅力を入れ込もうとしていたようです。

 ユーチューブでは、スレッジハンマーを観客の前で歌う動画がいくつもあります。そこではピーター・ガブリエルが、サビの「I wanna be your sledgehammer」と歌う振り付けで、側頭部をこぶしで打ち付けながら股間をガンガン突き出しています。こういうのが熱狂性を生み出しているのでしょう。

 アルバムの注意書きに、ピーター・ガブリエルは書いています。「一番ときめきを感じた60年代のソウル。遊びの多い、セクシャルな含みを持たせ、ぼくなりに挑戦してみた」と。また、あるインタビューで「ぼくが言わんとしたのは、他のコミュニケーションの方法ではうまく行かない場合でも、時にはセックスが壁を突き破ってくれることもあるってこと」とも話しています。

 ただ、ピーター・ガブリエルの奥様ジルによると、ステージの上で見せる男臭さには、嫉妬心を覚えたこともあるようです。「ぎりぎりのところまで自分を世間にさらしていましたけど、わたしとの関係では絶対にそんなことありませんでした。自分の結婚している相手にこんなに興奮させられたことはないって思った」とのこと。「彼はステージ以外ではそういう部分が出せませんでした」とも語っている。人間、どこかでバランスをとっているんでしょうな。


I wanna be your sledgehammer
Why don't you call my name?
You'd better call the sledgehammer
Put your mind at rest
I'm going to be the sledgehammer
This can be my testimony
I'm your sledgehammer
Let there be no doubt about it

大きなハンマーになりたいんだよ

オレの名前を呼んでごらん

絶対にスレッジハンマーを呼んだ方がいい

安心できるよ

特大のトンカチになるんだ

オレは宣言する

オレは、キミの両手ハンマーさ

それは間違いない


Sledge, sledge
Sledgehammer
スレッジ、スレッジ、

スレッジハンマー

 

ピーター・ガブリエルと言えば、独創的なステージングが有名で、ここからの後半部分はボーカル・ギター・ベースの3人で、特徴的な動きを見せます。観客の盛り上がりも最高潮になっていきます。そこで「ステージでの動きをよくするためにあらゆる努力をはらっていた。1982年、3、4週間振付師ローラ・ディーンのもとで過した。ピーターと(ギターの)ローズと(ベースの)レヴィンは、ギグの前にストレッチとウォーミング・アップをし」とのこと。

 

I get it right
I kicked the habit
(Kicked the habit, kicked the habit)
Shed my skin
(Shed my skin)
This is the new stuff
(This is the new stuff)
I go dancing in
(We can go dancing in)

分かっているよ

悪いクセを直すから

一皮むいてしまおう(裸になろう)

これが新しいモノ(これが新しいオンナ)

ダンスに行こう(オレたちは踊りに行けるんだ)

 

Oh, won't you show for me?
(Show for me)
I will show for you
(Show for you)
Show for me
(Show for me)
Oh, I will show for you

オレに見せて欲しい

オレも見せるから


Yeah, yeah, yeah, yeah, yeah,
I do mean you
Only you
You been coming through
I'm gonna build that power
I've been feeding the rhythm
Gonna feel that power, hey, build in you
Come on, come on, help me do
It's what we're doing, doing
All day and night
I've been feeding the rhythm...
イエー、イエー

キミのことを言ってるんだよ

キミだけさ

伝わっていたよ

パワーをつけるんだ

リズムを体で刻もう

キミの体の中でパワーを感じよう

さあ、手を貸してよ

オレたちがすることさ

一日中ね

体でリズムを刻むんだよ・・・


今まではアルバムにタイトルもついておらず「前とそっくり同じタイトル、同じ字面、同じレイアウトにして、違いが分からないようにするほうが面白いと思った。年1回、1人のソング・ライターが発行する雑誌みたいなもんさ」と語るピーター・ガブリエル。

 でも、アルバム『So』は「初めて、自分自身のありのままの写真をカバーに使うことにし」「いかにもありきたりの物憂げな写真は、自分の本当の姿を世間に出す出発点となったのだ」「Soの写真は前よりも自信に満ちた、プライドのある彼をはからずも見せていた」。

 ピーター・ガブリエルは、こうも言います。「ニーチェは、よい本とは『氷の海を斧で叩き割るがごとし』と言ってるんだ。それがヒントになってぼくは道具を出したんだ。古いブルースの伝統にのっとって書こうとした。ブルースの中には性行為をほのめかすものばかりだからね。スレッジハンマーでささやかなお祭りが起こせればと、それがもとの発想だった」と。

 スレッジハンマーは、壁を突き破るための道具だったわけですね。

 

引用、参考文献

『ピーター・ガブリエル(正伝)』(スペンサー・ブライト著、音楽之友社)