『飽くなきチャレンジと果てしない苦難は最高のエンターテイメントかも』 from ガラスの仮面 | 仕事とマンガと心理学

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心理カウンセラーが語るマンガと小説についてのブログです。
心理学でマンガをみるとオモシロいので、それを伝えたくて
ぐだぐだお送りしますので、楽しんでくださいね!

こんにちは、プロフェッショナル心理カウンセラーの織田です。

連載中なのに、古典。

そんなマンガは珍しいのです。

 

「ガラスの仮面」。

 

少女マンガの王道を行くマンガの一つ。

そして、もっとも有名なマンガの一つ。

さらに、大長編というところでも際立っており

もっというなら、非常な手間暇かけて作られている作品。

 

なんといっても

雑誌掲載時の原稿をほぼ書き直して

単行本になっているとか

劇中劇のシナリオを作成して

マンガにしているとか

いやいや、もう伝説になりそうなぐらいに

書き込まれているマンガなのです。

 

美人じゃなくて運動も苦手で

ぶきっちょで成績も悪くて

家も裕福ではなく何のとりえもない

平凡な少女、マヤ。

しかしたった一つの非凡さが

演劇だった・・・。

 

もうこの設定が少女マンガ王道。

しかもライバルは

美女で何でもできてお金持ちで

しかも才能に溢れている姫川亜弓さん。

 

王道。

 

運命の恋人は「紫のバラの人」。

お金持ちで社長で冷たいと言われているキャラ。

孤独な生い立ち、抑圧された人生

たった一つだけ情熱が燃え上がるのは

マヤという女優に対してだけ。

名を秘して援助し続ける「あしながおじさん」に徹しつつも

抑えきれずに行動しちゃったりなんかするところも

読み手としては胸キュンポイント。

 

王道。

 

けれども、このガラスの仮面のすごいところは

少女マンガの王道でありながら

実は少年マンガの王道も押さえているところです。

 

高くなり続ける目標。

険しい苦難の連続。

激しいライバルとの闘い。

涙と血と汗にまみれて

勝利を手にするために何もかも投げうち

そして、勝つ。

 

そう、格闘系などの勝負マンガのポイントを

漏れなく押さえているのが

ガラスの仮面なのです。

 

これって、メンタル的に言うと

「依存を生みやすい」サイクルがあるんですよね。

こういった「強さを競い、究極の強さを求める」とか

何かの勝負が延々と続き

究極のゴールに向かって勝ち続けるとか

そういったものに共通していると思うのですが

いわゆる「読み始めたら止まらなくなる」物語。

 

まず、主人公は、読み手が感情移入できるように

まずまずの強さだったり

あるいはとってもよわっちいところからスタート。

そこから最初の関門があり

頑張って強くなって、ちょっと自信を持つ。

最初の勝利が次の勝負を呼び

次の勝利がまたその次の勝負を呼ぶ。

強さのメモリがだんだん高くなる。

強さのスケールがだんだん大きくなる。

苦難もだんだん深さを増し

苦しみ嘆き、汗と血と涙にまみれて

ひたすら勝利めざして戦い抜く。

やがてホモサピエンスの限界を越え、

物理的化学的法則を超越していくまでに

なっていきます。


興奮、快感の繰り返しに、

次の刺激を求め、

しかし同じことの繰り返しでは

刺激が足りなくて、

結果としては刺激のエスカレートを

せざる得ない。

そして、苦難が深いほど、

最後のカタルシスは大きい。


が、しかし。

実際の体験が伴っていない、

あくまで脳内のイメージによる経験なので

カタルシスはあっても、

体験から得られるような充足感や満足感にはかけてしまいます。


で、再びカタルシスの快感を求めて

ページをめくってしまうのです。


少年マンガの格闘もの。

少女マンガの恋愛もの。

これでもかと言わんばかりの苦難と

高い目標の連続は、まさしくマンガドラックです。


紅天女が達成されたら、

マヤちゃんと亜弓さん、

燃え尽きるんじゃないかという

心配とともに、

読み手も刺激がなくなって

ぽっかりと胸に穴が空いたような気持ちに

襲われそうですね。


飽くなきチャレンジと果てしない苦難。

そして勝利というカタルシスで

人を引きつけ続ける物語。

少女マンガと少年マンガ両方の王道を行く

ガラスの仮面からは

やっぱり目が離せなさそうです。