映画広告シリーズ ~ 唐十郎主演の『銭ゲバ』(昭和45年10月) | 高木圭介のマニア道

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~浮世のひまつぶし~

昭和45(1970)年10月。訃報が伝えられた 唐十郎さん(享年84)主演の映画 銭ゲバ(和田嘉訓監督)の新聞広告。



ジョージ秋山原作 のこの映画、とにかく凄まじく陰惨な内容だった。21世紀に入ったばかりの頃、日本映画専門チャンネル で放送された際に初視聴し驚かされたものだ。

唐十郎が「♪俺もお前も銭ゲバだ~」「♪銭だよ銭だよ銭ゲバだ~」と自ら歌唱する軽快にして不快な主題歌『銭ゲバ行進曲』も凄いインパクトだ。そんな主題歌にのって主人公・蒲郡風太郎が新宿の街(まだ京王プラザが建設中の時期)を闊歩するオープニングだけでクラクラした。つい先日、新宿を訪れた際に、すでに 小田急デパートも消えた西口の風景 に衝撃を受けたばかりなのだが、たしかにこの風景の中に銭ゲバはいたのだ。


 「新宿の目」あたりから見上げた風景

その格好も貧乏時代は 青いスカジャン で、悪事を重ねて大金持ちになった暁には、ラメの入ったオレンジ色のスーツ という悪趣味っぷり。この映画の魅力(?)を人に伝えようとしても、あんまりな不適切ぶりに信じてもらえぬ…。ソフト化も配信もされていないし、検索をかけても15年前(2009年)に放送された 松山ケンイチ 主演のドラマ版ばかりが引っかかってしまう始末だ。


  昭和48年1月29日(月曜)のテレビ欄

片目の唐十郎と社長令嬢・緑魔子、そして社長運転手・岸田森 の怪演ぶり、ラストの「唐十郎 vs 緑魔子」による凄惨な殺し合いが脳にこびりつく怪作なのだが、唐十郎と緑魔子は3年後(昭和48年1月29日)に放送された円谷プロ制作のドラマ 恐怖劇場アンバランス の第4話「仮面の墓場」でも共演している。

   

脚本は 市川森一 で、監督は 山際永三。唐十郎のホームである 前衛劇団 が舞台となっている貴重なドラマだ。

           

~アンバランスは昭和44年にゴールデンタイム用のドラマとして制作されていたものの、その内容からスポンサーが付きづらいとの理由で お蔵入り となったそうで、実際に放送されたのは4年後の深夜枠だったということ。唐十郎と緑魔子のコンビは『銭ゲバ』よりも、こちらのほうが先 だったようだ。