ラテ欄検証シリーズ ~ 笠置シヅ子脅迫事件。刑事たちが街頭テレビで見た番組は?(昭和29年4月) | 高木圭介のマニア道

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~浮世のひまつぶし~

NHKの朝ドラ『ブギウギ』にも登場した、主人公の娘を誘拐するのでなく、殺害を予告してくる脅迫事件は実際にあった事件が下敷きとなっている。

当時の朝日新聞記事によると人気歌手の 笠置シヅ子 に愛児(ゑい子ちゃん=7歳)殺害を予告した犯人が現金受け渡しを要求した時間は午後3時30分ごろ。場所は東急の 自由ヶ丘駅(現・自由が丘駅)の前あたり。

      
  昭和29年4月9日付の朝日新聞朝刊より

誘拐 ⇒ 脅迫という手順を追ったわけでもないので、要求通りに現金を受け渡しに現れた笠置シヅ子の事務所職員(ドラマでは柴本君だったが、実際には柴田君だったようだ)から、空の新聞包みを受け取った瞬間に、自由ヶ丘駅前の 街頭テレビて野球中継を見るフリ をして張り込んでいた刑事4人に捕獲され、手錠をかけられたようだ。

張り込んでいたのは警察だけでなく、新聞社のカメラマンもいたあたりに時代を感じさせる。犯人との現金受け渡しの瞬間が堂々、新聞に写真掲載されているなんて、なかなか見たことがない。まるで映画やドラマの一場面みたいだ。

ところで“四人の刑事”が街頭テレビで見ていた野球中継とは何だったのか? とても気になったので事件当日、昭和29(1954)年4月8日(木曜)のテレビ欄を調べてみると、日本テレビで放送のプロ野球パ・リーグの「毎日オリオンズ vs 南海ホークス」のカードだった。

         
             昭和29年4月8日(木曜)のテレビ欄

これでスッキリと思いきや、プロ野球中継の後、夕方5時45分から放送される「花まつり 梅島第一小学校」なる番組が気になる。花まつりはお釈迦様の誕生を祝う催事。この模様を足立区立梅島第一小学校から中継する番組だったのだろう。

なんか記憶にある小学校名だと思ったら、ビートたけしの母校 ではないか。北野武少年は当時、2年生として在学中だったはず。つまりは、この花まつりから3年後ぐらいにドラマでもおなじみ『たけしくん、ハイ!』の世界が、この小学校を舞台に繰り広げられていたということだ。

犯人の要求する現金受け渡し時間が、あと数時間ほどズレていたとしたら、刑事たちは 梅島第一小学校からの花まつり中継を眺めつつ、スタンバイ していたのだろうか? もしかすると、この番組こそが ビートたけし初のテレビ出演 だった可能性も含みつつ――。