ラテ欄検証シリーズ ~ テレビ黎明期にドラマ化された『君たちはどう生きるか』(昭和33年3月) | 高木圭介のマニア道

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~浮世のひまつぶし~

昭和33(1958)年3月20日(木曜)のテレビ欄より。午後6時10分からNHKで、吉野源三郎 原作のドラマ 君たちはどう生きるか が三夜連続で放送されている。


  昭和33年3月20日(木曜)のテレビ欄

このたび米アカデミー賞で長編アニメ映画部門賞を受賞したことで、今またスタジオジブリ映画『君たちはどう生きるか』(宮崎駿監督)が再注目されている。しかし、アニメ映画はこの原作小説が主人公に多大な影響を与えたという設定のもとに繰り広げられるまったく別なお話(なんで同じタイトルにしたんだろう?)。

このドラマは吉野源三郎の原作を、のちの『氷点』(昭和41年)や 木下恵介アワー の各ドラマ、NHK朝ドラ『北の家族』(昭和48年)で有名な脚本家・楠田芳子(この人は木下恵介監督や作曲家の木下忠司の妹)がテレビドラマ用に脚色したもの。ドラマとはいっても、この時代のことなので、わざわざフィルムで撮影したものでなく、スタジオにて生収録された放送劇だった可能性も高い。

     

主人公の コペル君 役は 岩下亮 で、お母さん役は新劇女優 山岸美代子 と実の母子によって演じられている。岩下亮はのちの『千葉周作 剣道まっしぐら』(昭和45年・TBS)の主演が有名だが、わかりやすく説明すると女優・岩下志麻の実弟。当然ながら山岸美代子は岩下志麻のお母さんってことだ。

岩下志麻の女優デビューは、この年4月に放送スタートする同じくNHKドラマ『バス通り裏』と言われているが、弟のほうが主演デビューが早かったということか。

この姉弟の父親にして、山岸美代子の夫である俳優・野々村潔 は、戦前の昭和15年に実験放送用に作られた国産初のテレビドラマ『夕餉前』(NHK)に主演していたり、私の世代でいうなれば、本郷猛を仮面ライダーに改造して第1話で蜘蛛男に殺されてしまった 緑川博士 だったりする。岩下一家、凄い!

なんだか猛烈に、66年前の『君たちはどう生きるか』が観たくなってしまったが、おそらくフィルムは現存していないだろう。そもそもまだ一般家庭にテレビが普及していない当時、観た人はどれぐらいいたのだろう? 裏番組は1か月前に放送スタートし、徐々に人気が浸透していたと思われる『月光仮面』(帯番組時代)だしな。