新聞広告シリーズ ~ エノケンと笠置シヅ子が合体した有楽座公演『舞台は廻る』(昭和21年3月) | 高木圭介のマニア道

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~浮世のひまつぶし~

昭和21(1946)年3月。エノケン こと 榎本健一一座笠置シズ子(シヅ子)と 永井百合子 が特別主演した 有楽座 公演『エノケンのリリオム 九景』と『舞台は廻る 六景』の新聞広告。

                

今週、NHKの朝ドラ『ブキウギ』にて、福来スズ子(趣里)が喜劇の王様・タナケンこと棚橋健二(生瀬勝久)と組み、慣れない喜劇の舞台『舞台よ!踊れ!』に悪戦苦闘しつつ取り組む姿が描かれていたが、その元ネタとなっているのはおそらく、終戦からわずか7か月後 の、この公演なのだろう。

有楽座は現在の日比谷シャンテとTOHOシネマズがある辺りに昭和59年まで存在していた劇場。広告を眺めると 1日2回公演(正午~、午後3時~)で、入場料は3円、5円10銭、10円(それぞれ入場税込み)となっている。初日が3月20日で、前売りチケットは3月16日から発売となっている。

ブギウギで題材となる『舞台は廻る』の作・演出はご存知、菊田一夫。4年前の朝ドラ『エール』では 北村有起哉 がモデルとなる登場人物を演じていた。

で、『エノケンのリリオム』のほうの作・演出は当時、エノケン一座の座付き作家をやっていた藤田潤一 が担当。この人、もともと映画監督だったり演出家だったりと、戦前よりすごい多才ぶりを発揮しており、藤田潤八 とか 岡野進 とか 三田一 など、さまざまな名義で活動しているからややこしい。



テレビ黎明期には、あの『遊星王子』(昭和33年・日本テレビ)のほとんどの回を監督していたり、昭和40年代には 独立系ピンク映画 の監督として、数々の作品を世に放っている。

国産初の宇宙人ヒーロー・遊星王子ことワクさん(三村俊夫村上不二夫)と、善悪含めた地球人たちとの、どこかかみ合っていない何とも シュールで不思議なテンポの会話 の数々は、この人の演出だったのか……。

 

遊星王子の劇伴音楽は、同じく『ブキウギ』にも登場する羽鳥善一センセイ(草彅剛)のモデルとなる服部良一の長男・服部克久 が担当しているから、遊星王子は監督があのドタバタ舞台を作っている人たちの中にいて、スズ子がよく訪れる 羽鳥先生宅のお坊ちゃんが音楽を担当 しているということになる。で、そのまた息子(服部隆之)が『ブキウギ』の音楽担当と、やっぱり、この世界はアレコレとつながっているものだ。