私が初めてフジゲン製のギターを購入したのは19歳の時である。ブロック体の「Fujigen」という現在使われていないロゴや、独特のFホールがついたセミアコで、特に気に入ってその後何年もメインギターとして使っていた。その後も同社NCST(ストラトモデル)なども使っていたが、ある時から使用するのをやめた。それは(確か2012年ごろの)現在のロゴへの変更が理由である。

 

昔はどのロゴもかっこよく、オリジナリティにあふれていたと思う。それがこのざまである。

 

https://mi.fujigen.co.jp/

 

この「FGN」と大文字でやや斜体になったフォントであるが、欧米ではよく中華料理店や、明らかに日本人経営ではない日本料理店の看板に使われるフォントである。要は、わかりやすくアジア的な何かを表現したフォントなのだが、いわばアジア人やアジア文化を揶揄したような表現でもある。ロゴの変更は同社が海外進出を強化するための方針の一環であり、海外で「日本のメーカー」をアピールするためのものだが、上記のような事を知らなかったのか、または知りながらマーケティングのために敢えて採用したものか、いずれにしてもよく恥じらいもなくこのようなロゴが使えると思う。それにしても見るほどに嫌悪を感じる、デザインとしてもひどいものだと思う。

 

この残念過ぎるセンスゆえ、もはやフジゲンに興味がなくなったというわけである。もはや楽器業界とあまり繋がりがなくフジゲンの海外における活躍は不明だが、SNSを見る限りさほどでもないようである。ともあれ個人的にはロゴが再び変わるまで、静観したいと思う。

衝撃の写真。




これは私が2018年に購入した、2017年製のFender Made in Japan Hybrid 60's Stratocasterのネックである。
ネックジョイントのネジ穴が硬化プラスチックで埋められ、再度空け直されている。トラスロッドを触るためにネックを外したところ発見し、ショックを受けた。同商品は当時実勢価格12万円という、まごうことなきJapan最高ラインのシリーズ。メーカーでこの簡単な加工をミスする可能性があるだろうか。あるいは、別のモデルからネックを流用しているのでは?と思ったが、ストラトであればネックジョイントは同じ寸法のはずなので、これはないかもしれないが、ストラト以外のものからの流用の可能性はまったく捨てきれないというのが正直な感想。

 

楽器のどこに価値を感じるかは人それぞれである。造りがどうであれ音を重視する人、持った感じ、見た目、状態、ブランドやその時代への懐かしさや憧憬など。正直、このようなことも気にしない人もいるだろうし、もっての外と思う人もいるだろう。私は楽器を買うときは、その企業に投資をする、という気持ちが強い。その企業の心意気を買い、その楽器で音楽を楽しみたいと思っている。

その観点からも、12万円のギターに対して、このような品質はあり得ない。プレイヤビリティ、音質以前の問題なのである。この後即売却するに至ったが、おそらく私が手にした固体だけでなく、このような品質のギターが巷に溢れているのであろうことは想像に難くない。


私は、昔からFender Japanが好きだった。日本製らしいかっちりした作りで、おそらく加工の一部または大部分を大陸で済ませてあるであろう近年でも、誰にでもすすめられるつくりの良さに信頼を持っていた。少なくとも神田商会時代には、このようなことは聞いたことすらない。日本法人になり値段をつり上げ、品質を落としたのでは目も当てられない。12万円出せば、別のメーカーでずっとましなギターが間違いなく買える。もはやFenderでなくともいい時代に、危機感がなくはないか。楽器業界にいた私が見て、この品質は、ユーザーをなめている。

 

今回のことで、Fender Japanならびに生産元のダイナ楽器の品質管理には甚だ失望した。少なくとも私の信頼と期待は完全に裏切られた。そんなメーカーにこれ以上投資する気はない。今後私は、この2社の関わる楽器は生涯手にすることはない。

何年か前に、楽器業界はまさに戦国時代に突入したと思っていましたが、近年では大手ギターメーカーの衰退、ガレッジメーカーと呼ぶにはあまりに成功している中小メーカーの台頭など、合戦が膠着して久しいどころか、混沌は激しさを増すばかりです。

私はギターメーカーに勤めていたこともあり、多少楽器が見られるので、そんなギターメーカーや楽器について日頃思うこともあるわけです。

読者のことを一切考えずに、ギターメーカーの「現在」についてただ所感を綴るという軽いテーマで、私も時間をかけずにただ書き散らしますので、読者の方も暇つぶしにお読みいただければ幸いです。