劇団四季【ヴェニスの商人】 | たかびの自己満観劇ブログ
シェイクスピアのお話ですよ@たかび.こみゅです。
 
昨夜は劇団四季『ヴェニスの商人』を観賞してきました。

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シェイクスピア作のストレート・プレイです。
 
この作品が生涯20度目の劇団四季観賞…だと思っていたんだけど、一度予定外の観賞(JCSジャポネスクの2度目)があった都合で1つカウントがズレてて、20度目の観賞は前回のCFYでした(笑)
 
まァ、生涯最初の四季観賞だった『エルリック・コスモスの239時間』は本人が四季だと思って観てないので、そう言った意味じゃこれが20度目と言い換えられなくもない(笑)
 
お馴染みキャストボード。

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キャストボードの写真を撮る様になってからと言うものの、過去日記を振り返った時に『あれ!?』と思う事が増えてきました。
 
日記を書いた当時は全然知らなくて興味もなかったハズの俳優さん達の名前の中に、今観るとバリバリ知ってる名前とかがあったりして(笑)
 
役者さんに関しては…
 
主演は四季の舞台に三十数年振りに上がるという平幹二郎さん、有名な方らしいです(無知)
 
以前観たストレートプレイ『オンディーヌ』で騎士ハンスと水の精オンディーヌという恋惹かれ合う仲だった田邊真也さんと野村玲子さんのペアがそのままスライドしてきて『ヴェニスの商人』で結婚するのが面白かった。
 
キャッツ/ラム・タム・タガー以来の荒川務さん、エルコス/ストーン博士以来の岡崎克哉さん、美女と野獣/ベル以来の鳥原如未さんなど、再見になるキャストが今回も7人と随分増えた感がありますが、中でもソレイニオー役の青羽剛さん…エルコス/パルタ、美女/コッグスワース、オンディーヌ/待従に続き4度目の再見回数単独トップ、過去に観に行った舞台の2割に出てる何このダントツの再見率(笑)
 
パンフも購入。

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今回の席は実質2列目のドセンターよりやや下手袖寄り。
 
前回観賞のCFYがあまりに舞台から遠かったので必要以上に役者さんが近くに感じました(笑)
 
観劇前に、原作のあらすじを読んでいたんだけど、それだけでもとにかく人間関係のもつれ込みが面白そうで楽しみでした。
 
しかし、ユダヤ人金貸しシャイロックをやり込める勧善懲悪喜劇な原作とは違い、劇団四季版はやり込めれたシャイロックに『ユダヤ人を虐げるクリスト教徒の姿』を見る…という原作とは違った解釈の悲劇となっている…と言う説明がなされていました。
 
んだば、あらすじと感想を織り交ぜつつ。
 
※ネタバレ含みます。
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緞帳がない舞台は八百屋舞台となっており、かなりの傾斜。
 
ジーザスに次ぐ急傾斜ではないでしょうか?
 
ヴェニスというタイトル通り、舞台はヴェネチアの街の様です。
 
なので、東京ディズニーシーにあるヴェネチアの街並み(ヴェネチアンゴンドラの辺り)を頭の中にイメージしながら観ました(笑)
 
余談だけど、東京ディズニーシーのメディテレーニアンハーバー沿いに【Merchant of Venice Confection】というお店があります。
 
日記の書き出しに写真をアップしてあるチラシ表面の一番下にも『THE MERCHANT OF VENICE』と書いてありますが、このお店の名前を和訳すると『ヴェニスの商人・製作』となります。
 
シェイクスピアのヴェニスの商人から名前を取ったお店なんだそうな。
 
金貸しは善意の行為であり利子を取るなどもってのほか…という精神のクリスト教徒でありながら、友人の為に、これまで高利貸しだ見下し唾を吐き掛けてきたユダヤ人金貸しから金を借りる心広き商人アントーニオーと、利子を取るのが悪だと言うなら鐚一文の利子を取らぬ代わりに、約束の期日を少しでも過ぎたなら体の肉1ポンドを渡せと言う悪意ある条件を叩き付けるユダヤ人金貸しシャイロックを中心とした人間関係を描く物語。
 
時代か地域か、出てくる登場人物の出で立ち、特に男性陣は三銃士みたいな格好に見えた。
 
三銃士って基本的にフランスじゃなかったっけ?ヴェニスってイタリアだよね?
 
また、台詞回しも時代を反映してかやや固く、序盤はある程度原作の内容や人物の相関図を知らないとキツいかも。
 
目の前に座ってた女性は派手~に船漕いでました…最前列センターに座って船漕ぐってある意味凄い勇気だと思う。
 
商人アントーニオーの友人で高等遊民のバサーニオーは、多くの遺産を相続した美貌の貴婦人ポーシャの結婚相手に名乗り出る為にアントーニオーから(実際はアントーニオー経由でシャイロックから)多額の借金をします。
 
高等遊民とは、富豪の出で高学歴のボンボンが生活に困らないからと働きもせずにフラフラしてる様を言うそうです。
 
ポーシャは亡き父の遺言通り、金・銀・鉛の3つの箱から正しい箱を選んだ男性と、自分の意思とは無関係に結婚しなければいけない立場にあります。
 
この3つの箱は、イソップ童話の『金の斧』と同じで心をはかる意味がある様です。
 
各国の高貴なる王族男性がポーシャの所へ来ては間違った箱を選んでは消えて行く。
 
自分の好みではない男が箱を選んでる時のポーシャの表情が、不安→喜びにあからさまに変化する演技が面白かった。
 
ポーシャもまた以前に会った時からバサーニオーには淡い恋心を抱いている様で、バサーニオーが箱を選びに来た時の態度が他とはあからさまに違います。
 
ポーシャは周りにわからぬ様…しかし観客にはバレバレな様…笑、巧みに正解を示すヒントをバサーニオに与えます。
 
思わぬヒントを貰ったバサーニオの『え、え?えー!?』と言う表情が笑えた。
 
見事正しい箱を引き当てたバサーニオーにポーシャは指輪を送られます。
 
『この指輪を外したり失くしたり人に譲ったりした時は、あなたの気持ちが離れかけている時と理解する』
 
バサーニオーも『この指輪が指を離れる時は、この魂が体を離れる時』と誓いを立てます。
 
しかし一方で、自らの財産を積んだ商船が座礁し借金を期日までに返せなかったアントーニオーはシャイロックに裁判に掛けられます。
 
バサーニオーが、借りた額の何倍でも返すと言ってもシャイロックは聞き入れず、また周りに幾ら情けをかける様言われても『証文の通り肉を1ポンド』を望みます。
 
あまりに折れない固さに裁判を進め倦ねたその場に突然現れた法学者とそのお仕え。
 
実はそれは変装して忍び込んだポーシャと女中のネリサ。
 
法学者はシャイロックの言い分を全面的に認めます。
 
正体が自分の妻とは気付かないバサーニオと、立ち会った友人のグラシャーノー(バサーニオとポーシャの一連の流れに紛れて女中のネリサを口説き落として結婚したチャッカリ者)は、全てを諦めたアントーニオーに対し『僕には妻がいるが、君の命を救えるなら…』と“言っちゃいけない事”を言います(笑)
 
それに友人グラシャーノーも追随した為、法学者とお仕え(要はポーシャとネリサ)は、みるみる顔が引き吊ります(笑)
 
特にネリサは『そういう事は奥さんが見てない所で言って下さい』とあからさまにおかしな進言をします(笑)
 
↑これが大きな笑い所になったのは言うまでもなく。
 
このシーンの人間関係は見てて本当に面白可笑しく、客席からも抑え気味な笑い声が。
 
全てを認められたシャイロックは意気揚々とアントーニオーの肉を削ぎ落とそうとナイフを持ち出すが、法学者は続けます。
 
『ただし、証文には“血を流し”と書かれていない為、一切の血を流してはいけない。証文にない以上、血を1滴でも流してしまったら、人を傷付けた罪で法により全財産を没収とする』
 
完全に証文の穴を突かれてしまったシャイロックはナイフを取り落とし、渋々バサーニオが提案した倍返しを飲む事にする。
 
しかし、法廷で『望みは金ではなく肉』と言ってしまっていたシャイロックは、倍返しどころか元金すら受け取る事を許されなかったのです。
 
ポーシャの策にまんまとはまり、取り分全てを失ってしまったシャイロック。
 
法は無情にも追い討ちを掛けます。
 
ヴェニスの法によりシャイロックは別の罪に問われ、どの道全財産没収は免れない状況に。
 
途方に暮れるシャイロックに、アントーニオーはシャイロックが頑なに見せようとしなかった慈悲の心を見せます。
 
『その罪を許してあげて下さい。ただし条件として、すぐにクリスト教に改宗する事。そして財産を娘とその婿に譲る事』
 
シャイロックとは裏を返す清い心を持ったシャイロックの娘ジェシカと、その婿となった友人ロレンゾーに大きな土産をもたらしました。
 
逆に貸した金どころか全財産を失ってしまったシャイロックは法に対する不平をぶちまけながら、寂し気に立ち去り、その背中にキリスト教徒からの罵声が降りかかります。
 
このシーンが恐らく四季流の『ユダヤ人を虐める』なんだろうな、ストーリー自体は原作に忠実だし。
 
助けて貰ったアントーニオーとバサーニオーは何とか法学者にお礼をしたいが法学者は謝礼を受け取らない。
 
しかし法学者は思い出に…とバサーニオーの指輪をせがむ。
 
↑つまりポーシャがバサーニオーにプレゼントした指輪をポーシャが取り返そうとしてるの図。
 
思いっ切り挙動不審になってしまったバサーニオー(笑)
 
いや…これは安物だし…と口走ってしまい、法学者…つまりポーシャの顔が再び引き吊ります(笑)
 
同じ頃、仕えの者(ネリサ)によって同じ立場に追いやられているグラシャーノー(笑)
 
最終的にはアントーニオーに説得され指輪を渡してしまったバサーニオー。
 
帰還早々にネリサによって指輪の事を問い詰められるグラシャーノー…ポーシャにも匂わされ、完全にテンパってしまうバサーニオー(笑)
 
『助けてくれた人にお礼にあげたんだ、相手は男だったしいいじゃないか!』と許しを乞うバサーニオー。
 
『それは永遠に髭が生えない男(つまり女)だった』とネリサに癇癪起こされ、途方に暮れる男衆(笑)
 

『今度は絶対に失くしたり人に譲ったりしない様に』と、取り上げた指輪をバサーニオーに返すポーシャ。
 
一方、法学者に渡した筈の指輪をポーシャが持っていた事に完全に我を見失った感あるバサーニオー。
 
ここでポーシャとネリサがタネ明かしをして舞台は幕。
 
なんかもう、濃密な駆け引きと人間模様の絡みが本当に面白い作品でした。
 
今まで観た四季のストレートプレイの中で一番面白かった。
 
↑ちなみに2位はスルース。
 
原作は喜劇、しかし四季の舞台は悲劇。
 
喜劇か悲劇か、要はハッピーエンドかバットエンドか、と聞かれたら、オレには四季の舞台も喜劇に見えたけどな。
 
さて次の劇団四季鑑賞はアンデルセン。
 
初のバックステージツアー付きなので楽しみです。