劇団四季【ひばり~ジャンヌ・ダルク 奇跡の少女】 | たかびの自己満観劇ブログ
定休日の昨日は、劇団四季のストレートプレイ『ひばり~ジャンヌ・ダルク 奇跡の少女』を鑑賞してきました。

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劇団四季創立60周年記念公演第一弾として行われ、会員価格3500円という四季作品では破格の公演という事で話題になった様で。
 
劇場は浜松町の自由劇場。
 
この作品、価格の安さもさることながら、そのキャスティングの豪華さも話題に。
 


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キャストボード。ザクッと見ただけでも、野村玲子さん、志村要さん、田邊真也さん、加藤敬二さん、坂本里咲さん、味方隆司さん、吉谷昭雄さん…もう錚々たる俳優陣。
 
味方さんと田邊さんは揃って6作品目の拝見。四季で一番作品数を拝見してる俳優さんです。
 
プログラムも購入。ストレートプレイ作品のプログラムは小さくて薄い分安い。

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席は7列目(実質5列目)のドセンター。丁度7列から雛壇になっており、視界は良好。
 
ジャンヌ・ダルクと言えば、まだ少女と呼んで相違ない年頃の女性が神の御声を受け、兵隊を率いてフランスを危機から救った英雄的人物像と、その反面で悪魔の手先とされ火炙りの刑に処せられた悲劇の女性像というのが有名です。
 
特に処刑に関してはかなり残酷な内容であったとされているらしく、火炙りの際にジャンヌが窒息死し衣服に炎が燃え移った頃を見計らって火を消し、衣服が燃え尽き裸体となった状態で公衆の面前に長時間晒し続けた挙句に、再度焼いて灰となった所をセーヌ川に流した(土に返す事すら許さなかった)とか。
 
ところが、ジャン・アヌイ作の『ひばり』の結末はそうではなかった様です。
 
作品はジャンヌの裁判のシーンを中心に置き、各々のシーンを回想する構成。そして戦争のシーンなく、回想シーンはボードリクールから男の服と馬を授かるシーン、国王を口説き落とすシーンなど、非常に断片的でした。
 
んだば雑感。
 
◇オープニングでは音もなく、出演者達が舞台(法廷)にワラワラと、しかも順序良く現れたので、なんだか不思議な感じ。
 
◇下手に8人くらい、上手に7人くらい、中央にジャンヌ含めて5人。相当ゴチャゴチャしてて、台詞を喋った役者さんの声を聞いてキャスト表と見比べながら、あァ、あの位置にいるのがこの役なんだな、と確認する作業から始めました。
 
◇味方さん演じるボードリクールと、田邊さん演じるウォーリック伯はさすがにわかりやすかったけど、センターにいる司祭の皆さんはみんなお坊さんみたいな頭をしてるし、女性陣はみんなして三角帽子を被ってるしで、とにかくわかり難い。
 
◇主役のジャンヌを演じる野村さん、最近では喉の調子が悪いのかとにかく歌を酷評されているイメージですが、歌ではない台詞の声も、ややかすれ気味な気がした。元々あの声質なのか、それとも10代の少女役という事で声を無理に若作りした結果があの声なのか…昨年6月に観たヴェニスの商人のポーシャ役の時はもっと芯がある声だったので、恐らく後者なのではないかと思うけど、とにかく聞き心地が良い声ではなかった。
 
◇野村さんや里咲さんが出る舞台を観る度に、もう野村さんや里咲さんが『若い娘』を演じるのは無理があるんじゃないか、という声が聞こえるワケだけど、特にストレートプレイの場合は役を完全に譲れる後進がいないのかね?
ミュージカルの方は、例えば里咲さんの代表的な役、美女と野獣のベル役なんかは後進の鳥原ゆきみさんと高木美果さんに譲った様な感じになってて、里咲ベルは2月に2週間演じたのを最後に登場してなかったりするんだけどね。
 
◇題材が題材なだけに、難しい芝居になるんだろうなァと思っていたけど、思いの外笑えるシーンも多かった。
 
◇回想シーンでは、ジャンヌの傲慢な態度に翻弄され、更に口車にまんまと乗せられてしまうボードリクール(味方さん)やシャルル七世(敬二さん)の様が面白くて笑えた。本当にあんな事やったら即刻打ち首だろうけどね(^-^;)
 
◇シャルル7世と言えばフランス国王ですが、これを敬二さんが演じたらどうなるか…案の定、軽くて駄々っ子で王の威厳もへったくれもないダメ王でした(笑)
 
◇そして、シャルルの嫁の母に当たるヨランド王太后に斉藤昭子さん。これはもう、ニヤリとする組み合わせですね。
 
◇シャルル七世とヨランド王太后のやり取りに、クレイジー・フォー・ユーのボビー・チャイルドとボビー母が見え隠れした様に感じた人も少なくないのでは(笑)
 
◇幕間への入り方が面白く、シャルルとジャンヌのやり取りがひと段落したところで旗をもった兵隊達が登場し、その旗に『休憩』と書いてあるという。幕が無く、セットの転換などが客席から丸見えな状態でやる作品な為、休憩ですとわかりやすく示す必要があったんだろうね。
 
◇二幕への入り方も面白く、一幕でやったシャルルとジャンヌのやり取りをもう一度繰り返してみせ、その続きですよ、と言う事を意図的に見せていた様な感じ。
 
◇二幕で登場のラ・イール役の金久烈さんを見る度に思うんだけど、この人ほどプログラムに乗っている座員連名の写真と演じる役柄のギャップが激しい人もなかなか多くないんじゃないかなーと思う。
 
◇写真ではクール、さわやか、そんなイメージを受けるんだけど、ダンサーとしてではなく台詞が付く役の時はいつも粗野な男の役ばかりなんだもん(笑)
 
◇二幕、いよいよ裁判も大詰めになる時、志村さん演じるコーシャンがジャンヌに対し、もの凄い長台詞を言うシーンがあって(伝説の長ゼリ…なんて書いてる人を見掛けたけど、ひょっとしてこの台詞の事かな?)、それを聞いてるうちに、段々と目蓋が…。
 
◇寝てはないです、台詞はちゃんと聞いてました。でも目を閉じて聞いてるのが非常に心地よい。
 
◇しかし、そんな眠気がいっぺんに冷めるのが、ジャンヌの火炙りのシーン。ドロドロした怨念じみた空気さえ感じる演出でした。思わず息をのんで見入ってしまった。
 
◇ジャンヌと言い、ジーザス・クライスト=スーパースターのジーザスと言い、キリスト教徒が処刑されるシーンって何故こんなに見入ってしまうんだろう、どっちの作品も処刑のシーンだけ本当に空気がガラリと変わるんだよね。
 
◇と、そこで大声を挙げながら客席を走り抜ける味さん、もといボードリクール。あれよあれよの間に火炙りは中止。あれれ(・ω・)?
 
◇ジャンヌ・ダルクは本当はハッピーエンドなんだ!と叫ぶ、ボードリクール。そして、何故かシャルルの戴冠式へ。
 
◇この一連の流れを見てて、フッと思いました。ひょっとして…この作品、メタフィクションになってる??
 
◇メタフィクションというのは、演者側が意図的に物語(フィクション)の仕組みを鑑賞側に見せる手法の事なんですが、つまり全編を通じて『飽くまでもこれはお芝居、フィクションですよ』というメッセージがあったんじゃないかな、とそんな風に感じます。
 
冒頭の、如何にもこれからお芝居を始めますよ、という感じのワラワラとした登場の仕方。
 
一幕の妙にせっかちに感じるウォーリック伯の言動。
 
ジャンヌとシャルルのやり取りを、あたかも外から見ていた様なウォーリック伯の『実際にこんな風に行われていたワケではないが…』の台詞
 
二幕の最初に一幕をリピートした事。
 
そして最後のウォーリック伯とボードリクールのやり取り(歴史的にはどうのとか、そういう台詞のやりとり)。
 
敢えて芝居臭くする為に行われていた事なんじゃないかな、と。
 
考えてみれば、この作品は歴史劇ではなく、フランス文学の劇でした。
 

さて、そんなワケで次回の四季鑑賞は来週の火曜日、通算7度目になるアイーダ。
 
すこぶる評判が良かった朴アイーダは残念ながら見れなそうだけど、福井ラダメスが見れそうなので楽しみです。