不安定な方向(後編)

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『規制緩和を考える(後編)①』三橋貴明 AJER2013.6.18(1)

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 NEW! 7月4日(木) 沖縄経済成長セミナー「公共事業が沖縄を救う」

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 7月11日(木) 第11回烏山講演会「世界経済とマスコミの嘘」(会場:東京都)

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 右の二冊、すでに発売開始しました! 田母神さんとの対談本は七月上旬発売です。



 出張続きだと良いことが一つありまして、単行本の執筆が進むことです。何しろ、他にやることがなので。
 というわけで、現在のわたくしは移動中、ホテル滞在中と、ひたすらキーボードを叩き続けています。時々、ニコ動(課金)で「進撃の巨人」を見るくらいが息抜きですかね(わたくしは「進撃の巨人」の第十巻を読み終えたとき、「これを読まずに死なないで良かったっ!」などと口走ったほど、本作品が大好きです)。


 昨日のエントリー の続きです。


 さて、改めて書きますが、政府の目的は経世済民です。国民を豊かにするための政治こそが、政府の「目的」なのです。


 緊縮財政、増税、国債発行、通貨発行、構造改革、公共投資、公務員給与支払、社会保障支出などは全て「手段」であり、「目的」ではないのです。ところが、現実の世界は前記手段(主に「構造改革」と「緊縮財政」)が目的化し、国民が所得を得るための雇用の場が失われていくことを放置し、経世済民とかけ離れた状況に至った国があります。


 もちろん、ギリシャです。


授業中、気失う子続々…緊縮財政で「飢え」深刻
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20130630-OYT1T00353.htm
 緊縮財政下のギリシャで「飢え」が問題になっている。
 授業中に空腹で倒れる学童が出る事態に、民間ボランティアが救済に乗り出した。
 アテネ郊外の住宅街にある民間活動団体(NGO)「アルトス・ドラッシ」は、賞味期限が迫った食材などを地元の協力で集め、毎日約120人分の料理や食品を無料で配っている。昼近くになると、大きな手提げ袋を持った人が次々と訪れる。
 「毎週、新しい人が来るの。1年前と比べたら2・5倍に増えたわ」と、ボランティアのカリオピさん(66)が話す。17年前、クルド難民を支援するために始まった活動は、今や訪れる人々の大半がギリシャ人になったという。
 市内に住むレフテリスさん(51)は週に1度、バスで1時間かけてやって来る。大型船の船員だったが3年前に失業。工事現場の短期労働などで13歳の息子とおばを養う。「職探しがあるから毎日は来られない。息子の学校では親の失業で食事を十分にとれず、授業中に気を失う子どもが増えている」と表情を曇らせた。』


 1929年10月のNY株式大暴落に端を発した大恐慌期、アメリカの失業率は24.9%に達しました(それでも現在のギリシャより低いわけですが)。当時のアメリカの都市部では、公共施設や電車の中などで、やはり「飢え」から失神する人たちがいました。


 講演などで失業問題について語る際に、
「失業者は所得を得られません。所得を得られないと、最終的には飢えに繋がるんです」
 と語っていますが、現在のギリシャやかつてのアメリカは、まさに「失業により飢える」状況に至ってしまったのです。ギリシャの第一四半期の失業率は、27.4%。大恐慌期のアメリカを上回っています。

 人間は「モノ(食料)不足」でも飢えますが、失業による所得不足でも飢えるのです。


 昨日取り上げたアメリカの「賃金危機」にしても、本日ご紹介したギリシャの「失業による飢え」にしても、経世済民とかけ離れているどころか、社会全体を壊さずにはいられません。何しろ、誰だって飢え死にするのは嫌ですので、最後には暴動でも何でもして、食料を手に入れようとせざるを得ません。


 具体的に「何%の失業率で社会が壊れるのか?」などといったレッドラインは引けませんが、例えばドイツでは1932年に失業率が43.3%に達した結果、翌年、ヒットラー政権が誕生しました。現在、ギリシャで支持を伸ばしている政党が、「黄金の夜明け」です。


 黄金の夜明けは、
「すべての移民を国外追放し、国境地帯に地雷を敷設する」
 という過激な公約を掲げたにも関わらず、昨年五月の総選挙で18議席を得てしまいました。

 13年6月現在、黄金の夜明けの支持率は14%と第三位。今、総選挙を行った場合、ND、SYRIZAについて、第三党になる可能性が出ています。どこか極東の国の「消えゆく元巨大与党」の二倍の支持率と考えると、結構、怖いでしょう。PASOK(NDと連立)や民主左派(先日まで連立与党)を、黄金の夜明けが追い抜いてしまったのです。


主体性乏しい日本の戻り相場、アベノミクス再注目に必要な賃金上昇戦略
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE95R06620130628?sp=true
(前略<サービス価格上昇がカギ>
 アベノミクスの「成果」を市場にアピールするには、デフレ脱却が効果的。だが、目標である2年で2%を達成するのは容易ではない。いわゆる「リフレ派」のエコノミストからも「徐々にプラスの方向に向かうとみているが、2年で2%は難しいだろう。足元では円安によるエネルギー価格の上昇がCPIを押し上げているが、持続的にもう一段上げるためには、やはり賃金が上昇してくる必要がある」(マネックス証券チーフ・エコノミストの村上尚己氏)と、厳しい見方が出ている。
 消費者物価を構成するのは大きく分けて財とサービス。このうち財は新興国経済が生産する低価格品が拡大していることに加え、同地域の成長鈍化懸念が高まっており、価格上昇は期待しにくい。コモディティ価格の下落は米金融緩和の後退懸念もあるが、新興国の景気減速懸念が大きな背景だ。
 デフレ脱却のキーポイントは、サービス価格にある。米国でも財の価格上昇率が鈍いのに対し、サービス価格の上昇がディスインフレの懸念も強まってきた物価を支えている。5月の米コアCPIは前年比プラス1.7%だったが、被服は同プラス0.2%、新車は1.1%、一方、サービスは同2.5%だった。
 サービス価格を上昇させるのに必要なのは、サービス価格のほとんどを占める賃金の持続的な上昇だ。それには企業が景気の先行きに自信を取り戻すことが欠かせない。(後略)』


 さて、賃金下落といえば、98年以降所得が下がり続けた日本こそが、アメリカやギリシャの先輩です。と言いますか、よくもまあこれほど長きに渡りデフレに苦しんでいながら、我が国は「不安定な方向」に暴走することが無かったものです。内需依存の高さや経営者の努力、政府の対策により、失業率だけは最悪でも5%台で抑え込めていたためだと思いますが。


 我が国の場合はインフレ率を2%に持っていけば、失業率が2%に近づき、いわゆる完全雇用を実現できます。そうなって初めて、賃金に上昇圧力がかかります。もちろん、産業分野においては、先行して完全雇用や賃金上昇が実現するでしょう(すでに賃金が上昇している分野もあります)。


 いずれにせよ、「円安によるエネルギー価格の上昇」でコアCPI(日本版)が対前年比ゼロパーセントに戻っただけでは、「デフレ脱却」と言えるはずがありません。エネルギーを省いたコアコアCPI(グローバルなコアCPI)は対前年比マイナス0.4%なのです。


 ロイターの記事にもある通り、人件費が占める割合が大きいサービス価格には注目すべきでしょう。サービス価格が上がり始めないことには、賃金水準の上昇は困難です。


 とにもかくにも、現在の世界は「間違った政策」(富裕層優遇政策や、バブル崩壊後の緊縮財政、構造改革)により不安定な方向に向かっています。冗談でも何でもなく、この流れを押しとどめることができそうな国は、世界に二カ国しか見当たりません。すなわち、アメリカと日本です。


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