ヘアカット（債務元本の削減）

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　ヘアカット、とは申しましても、もちろん散髪のことではございません。デフォルト（債務不履行）の言い換え語として、最近、欧米の金融市場で使われている用語でございます。すなわち、債務元本の削減です。またの名を「債務再編」とも言います。

　要するに、ギリシャのような破綻国が、どうにもこうにも対外負債の返済ができないため、債務元本を削減し（＝ヘアカット）、債務を再編することで危機を乗り越えよう、などという話です。

　一言だけ言わせて下さい。

「それって、ただのデフォルト（債務不履行）だろうがっ！」

　金融用語としてのデフォルトは、以下のような定義になっています。

「本来履行されるべき債務が履行されなくなること（支払われるべき金が支払われない等）を指す。例えば、国、政府、企業など債券の発行体が、利払いや元本の償還を行えない状態に陥ること。（Wikipediaより）」

　ヘアカットをした時点で、元本の償還が行われないということになりますので、普通にデフォルトです。デフォルトと言うと、「破綻」のイメージが強くなり過ぎるため、ヘアカットや債務再編と呼んでいるのでしょうか。それとも、デフォルト以上の最悪の事態ということで、ヘアカット、債務再編と呼んでいるのでしょうか。新聞の論調を見る限り、前者のように思えてなりません。

『Ｓ＆Ｐ：ギリシャは債務再編で50－70％の減免が必要にも－ツァイト紙
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aHV082oWolH0
　米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ（Ｓ＆Ｐ）は、ギリシャのソブリン債再編があれば50－70％の債務減免が必要な可能性があるとの見方を示した。ドイツ紙ツァイトがＳ＆Ｐ幹部とのインタビュー内容を電子メールで送付した。
　それによると、Ｓ＆Ｐの欧州債務評価チーム責任者、モーティス・クレーマー氏は、ギリシャの債務再編の可能性は「ほぼ３分の１だ」と語った。アイルランドについては債務再編の「可能性は極めて低い」と述べたという。』

『ギリシャ、債務再編通じヘアカットが必要＝ＥＵ専門家
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110414-00000026-reu-bus_all
　欧州連合（ＥＵ）の専門家は、ギリシャが持続可能な経済への軌道に戻るためには、債務再編を通じ債務を４０─５０％減らすことが必要と試算している。独週刊誌ツァイトが報じた。
　同誌はＥＵ筋の情報として、ギリシャ債務再編をめぐっては何ら決定はされていないものの、任意での国債の償還繰り延べを含め、さまざまな選択肢が検討されている、とした。
　格付け会社スタンダード＆プアーズ（Ｓ＆Ｐ）のソブリン債格付け主任モリッツ・クレーマー氏は同誌とのインタビューで、ギリシャは５０─７０％のヘアカット（債務元本の削減）が必要になる可能性があるとし、国債の償還繰り延べは十分な結果をもたらさない、との見方を示した。（後略）』

　債務再編にしても、ヘアカットにしても、要は「借金棒引き」です。普通にデフォルト（債務不履行）と呼べばいいものを、何ゆえに「ヘアカット」などという用語を使うのか。欧米諸国の本質が垣間見えたようで、何となく不気味なのでございます。

　ギリシャのパパコンスタンティヌ財務相は、同国が新たな財政計画や民営化計画を打ち出すことで、債務再編計画は行わない意向を示しています。理由について、パパコンスタンティヌ財務相は、
「債務再編を行えば国は長期にわたり市場から締め出され、経済にも悪影響が及ぶ」
　と説明しています。

　それはそうです。ヘアカットやら、債務再編やらは、共に立派なデフォルトなのです。

　そういう意味では、先日、英蘭へのローン返済を国民投票で拒否したアイスランドも、立派な政府のデフォルトです。

　ヘアカット、債務再編、デフォルト、財政破綻、ハイパーインフレーション、そして、メルトダウン。

　用語の意味を正しく定義しなければ、現実が正しく認識できないというケースが、最近は特に増加しているように思えるわけです。

　本日は大石久和先生、藤井聡先生と座談会です。

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