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11月29日発売予定 【今、世界経済で何が起こっているのか? 】 予約開始!
日曜日なので、軽く頭の体操と言いますか、復習から。
昨日もご紹介した、2010年6月版金融資産と、08年版非金融資産を「合算」した日本国家のバランスシートを眺めながら、お読みください。
【2010年6月版国家のバランスシートに08年の非金融資産(非金融純資産)を合算】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_31.html#Kokufu2010
さて、未だに世間には、
「1400兆円を超える家計の資産を、国の借金(政府の負債)が上回ったら破綻する!」
などと荒唐無稽なことを言っている人がいるようですが、↑こんなことは有り得ません。有り得ないというのは、破綻云々ではなく、「家計の資産を政府の負債が超える」の方です。
(注:有り得ないといっているのは強靭な経常収支黒字国である日本の場合であり、他の国では有り得ます)
例えば、政府が銀行に国債を10兆円発行しました。バランスシート上の動きは以下です。
(1) 借方において、銀行の資産「現金10兆円」が「国債10兆円」に姿を変える
(2) 借方において、政府の資産「現金10兆円」が出現し、同時に政府の負債「国債発行残高10兆円」が出現する。
(3) バランスシート全体では、資産総額、負債総額が共に10兆円ずつ増える。
さて、10兆円を国債発行で調達した政府は、そのお金をどうするでしょう。もちろん、景気対策など「民間への支出」に使うわけです。ここは話を単純化するために、「国民手当て」として家計に10兆円を配ることに致しましょう。
バランスシートの動きは以下になります。
(4) 借方において、政府の資産「現金10兆円」が、家計の資産「現金10兆円」に姿を変える。結果、家計の資産が10兆円増える。
いかがでしょう? ポイントがお分かりになりましたか?
(1)から(4)のプロセスを経て、最終的には「政府の負債(国債発行残高)」と「家計の資産(現金)」が、共に10兆円増えてしまうのです。すなわち、「日本の場合は」政府が負債を増やすと、民間(家計もしくは企業)の資産が増えます。
何でしつこく「日本の場合は」と書いているかというと、日本のように国債の95%を国内消化しているような国がむしろ例外であるためです。例えばアイルランド政府が国内で国債を発行し、ユーロを調達し、対外負債の返済に使った場合は、当たり前ですが民間の資産は増えません。
「だから日本の財政は安全だ~っ!」
とか、そういう単純な話ではなく、上記のことを理解した上で、国債や財政について語られているのか? という話です。わたくしの望みは、別に日本が財政破綻しないことを広めることではなく、「正しいソリューション(解決策)」を政府に実施してもらうことです。そのためには、「正しい理解」なしでは不可能でしょう。
何度も繰り返して恐縮ですが、日本経済の問題は「政府は国の借金で破綻するぅ~っ!!!」とかではなく、民間の資金需要が無いことです。しかも、日本の場合は経常収支黒字国(=預金超過国)ですから、銀行の手元に運用先がない過剰貯蓄が増えていっています(今、現在も)。
これは実に深刻な問題です。
『10月銀行貸出残高、11カ月連続減 マイナス幅拡大
http://www.asahi.com/business/update/1109/TKY201011090094.html
日本銀行が9日発表した貸出・資金吸収動向(速報)によると、10月の銀行・信用金庫の貸出残高(月中平均)は前年同月比1.9%減の456兆9761億円だった。11カ月連続の減少で、マイナス幅は前月より0.1%幅拡大した。都市銀行の貸し出しは同4.3%減って199兆9536億円となり、1991年7月に統計を公表以来、初めて200兆円を割った。
一方、地方銀行・第二地方銀行は同0.4%増えた。都銀、地銀ともに企業の資金需要は弱いものの、地銀は住宅ローンの貸し出しなどでカバーしている。
実質預金と譲渡性預金(CD)の平均残高は、同3.1%増の543兆2347億円。企業が手元に厚めの資金を持つ傾向が続いているのが主な要因という。 』
ちなみに、いつもアップデートしている日銀の金融経済統計から作成した「貸出金」「実質預金」「預金超過額(=実質預金-貸出金)」のグラフ最新版は以下です。
【国内銀行の貸出金、実質預金、預金超過額の推移(単位:十億円) 1990年-2010年9月】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_31.html#Ginko
【写真】
現時点でも、日本国民(企業含む)の預金残高は刻一刻と増えていっています。それに対し、恐ろしいことに貸出金の方は対前年比マイナスを延々と続けているわけです。
しかも、銀行の貸出態度DIは、少なくとも大企業、中堅企業についてはプラス化(銀行が貸したくてたまらない)していますので、企業側に資金需要がないという問題の深刻さが理解できます。朝日の記事にも書いてあるように、「企業が手元に厚めの資金を持つ傾向が続いている」というわけです。
日本経済の問題は、企業などの民間に資金需要が無く、銀行に積み上がる預金(銀行だけじゃないですが)が借りられないことです。だからこそ、日本国債の金利は世界最低を維持しているのです。全く自慢できる話ではないですが。
そして、なぜ日本の民間に資金需要がないのかと言えば、もちろんデフレだからです。
この状況で、政府が「増税」や「公共投資削減」などの「インフレ対策」を実施して、問題解決できますか? という話でございます。
いい加減、政治家や経済評論家の皆様にも「数字を見て、現実をつかむ」という、当たり前のことを実施してほしいと切に思います。
正しい問題把握なしで、正しい解決策を構築することは、この世の誰にもできないのです。
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