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タイトルのソロス氏とは、もちろんジョージ・ソロス氏のことです。
何となく嫌われたイメージがあるソロス氏（アジア通貨危機の引き金を引いたため？）ですが、マクロ経済の本質的な部分を見る目は凄いものがあります。何しろ、１９９２年にＥＲＭ加盟を維持するために、イギリス政府がポンドを高値に維持していることに目をつけ、ポンドの大量から売りを行い、いわゆるポンド危機の引き金を引いたほどです。
『ソロス氏：米国に必要なのは財政出動、歳出削減ではない
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aTXlAHDkAvmA
資産家ジョージ・ソロス氏は、米経済は一段の景気刺激策を必要としているとし、財政赤字削減の世界的な取り組みに米政府は加わるべきではないとの見解を示した。
同氏は国際通貨基金（ＩＭＦ）年次総会でのフォーラムで発言し、現在の経済環境の中で歳出削減は「間違ったコンセンサス」だとし、金融市場は機能を回復したもようであるものの世界経済はまだ均衡点に達していないとの見方を示した。米国の財政支出抑制が回復を妨げているとも指摘した。
同氏は、米国の政策が「世界経済を必要以上に長く停滞させる恐れがある」として、「米国が量的緩和に追い込まれたのは、政治的議論で財政均衡を重視し一段の景気刺激に反対する共和党の考えが基本的に勝利したからだ」と語った。（後略） 』
ソロス氏は、中間選挙を控え、共和党の圧力で財政支出削減に舵を切りつつあるアメリカに警告を発しています。
【アメリカの家計の金融負債推移（単位：十億ドル） 2003年-2010年Q2 】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_31.html#USKakei
アメリカの家計の金融負債の推移を見ると、相変わらず差し押さえ増加により住宅ローン残高が減少し、全体的に微減が続いています。すなわち、リーマンショック以降のアメリカは、基本的には負債減という趨勢が変わっていないわけです。
何しろ、アメリカの家計の個人消費はＧＤＰの七割を超えます。０７年水準とは言いませんが、せめて「着実に」アメリカの家計が負債を増やす局面にならない限り、財政出動の手を緩めるべきではないでしょう。
ともあれ、オバマ政権が苦しいのは、財政出動を拡大してさえ、失業率を改善するのは困難とう環境下にあることです。
ＰＨＰから出版されたＶｏｉｃｅ１１月号で、日高義樹氏がアメリカの全米商工会議所トム・ドナヒュー会長の言葉を引用していました。全米商工会議所とは、アメリカの中小企業五百万社を束ねている組織です。
『アメリカの景気を回復させるには輸出を増やすしかない。世界各国で景気が悪くなっているときにアメリカの輸出を増やすのは非常に難しいが、オバマ大統領もほかに対応策がなくなってしまった。（Ｖｏｉｃｅ１１月号 Ｐ１５１）』
失業率を改善するために、アメリカは量的緩和を拡大しつつ、輸出に頼ろうとしています。まさしく日本の小泉政権（前期）そっくりですが、当時の日本とは決定的に違うことがあります。それは、小泉政権期には先進諸国も新興経済諸国もバブルに沸き、需要が拡大していたのに対し、現在は真逆の状況にあるということです。
オバマ・アメリカが輸出を倍増させるという目標を達成しようとしたとき、
「いったい誰が買うんだ？」
という疑問をぬぐうことができないわけです。
結局のところ、グローバル・インバランスが縮小を始めた以上、日本の採るべき戦略は明らかです。すなわち、内需拡大です。
政府支出拡大により民間の資金需要を喚起し、輸出ではなくむしろ輸入を増やすのです。デフレを脱却し、健全な名目ＧＤＰ成長率を取り戻すことで、世界経済に貢献できるのみならず、過度の円高を是正できます。（とはいえ、日本だけではなく、ドイツや中国にも同じことをしてもらわなければならないのですが）
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