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 2010年7月版のケースシラー指数が発表されました。


【2010年7月版 ケースシラー指数 十都市総合/二十都市総合】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_30.html#CSI


 ケースシラー指数とは、スタンダード&プアーズが公表するアメリカの住宅価格指数です。2000年1月を100と置き、住宅価格の推移を見ることができます。
 当ブログでは、主に十都市総合と二十都市総合をグラフ化し、アメリカの住宅市況を見ています。


 グラフを見ると、アメリカの住宅価格は06年後半にピークアウトし、09年初めに底打ちしたように見受けられます。が、09年初め以降の住宅価格の回復は、政府による住宅支援(住宅取得控除8千ドル)によるもので、とてもではないですが自律回復とは言えません。


 住宅取得控除は今年の4月に終了いたしました。しかし、その名残がしばらくは残っているようです。2010年7月の指数も若干上向いたのですが、これもやはり住宅取得控除の影響が大きいとのことでございます。


米住宅価格指数:7月は伸び鈍化、税控除の終了が影響
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aNtI154S52NE
 7月の全米20都市の住宅価格は、前年同月比で上昇ペースが鈍化した。政府による住宅購入者向け税控除措置の終了を受けた販売の落ち込みが反映された。
 全米20都市を対象にした7月の米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)/ケース・シラー住宅価格指数は前年同月比で3.2%上昇と、3月以来の低い伸びにとどまった。ブルームバーグがまとめたエコノミスト調査の予想中央値は3.1%上昇だった。
 指数は3カ月の平均であり、今回発表の7月の数字には、依然として税控除措置の効果とみられる5、6月の販売の影響が含まれている。 (後略)』


 問題は、住宅取得控除の影響が消える二ヵ月後、9月のケースシラー指数がどうなっているかですね。もちろん、下落するのは疑いないわけですが、問題なのは「どの程度下落するか」になるわけです。


 アメリカの経済の重要指標は、「雇用」「住宅」「個人消費」の三つになります。雇用は相変わらず高止まり、住宅は政府支援終了で下向きですが、個人消費はどうでしょうか。ご存知の通り、アメリカの個人消費は同国GDPの七割を超える、世界最大の需要項目です。


米消費者信頼感指数:2月以来の最低、現況・期待とも悪化
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aL0fipv8Pmk4
 米国の消費者信頼感指数は9月に7カ月ぶり低水準に落ち込んだ。労働市場に対する悲観が強まっている。
 米民間調査機関のコンファレンス・ボードが発表した9月の消費者信頼感指数は48.5と、前月の53.2から低下。2月以来の最低に落ち込んだ。(中略)
 現況指数は23.1と、7カ月ぶりの低水準。前月は24.9だった。現在は雇用が十分にあるとの回答者の比率は3.8%、年初来の最低。現在は職を得るのが困難との回答は46.1%と前月の45.5%から上昇した。(後略) 』


 雇用、住宅、消費は、アメリカの場合は露骨なまでに、互いに影響を与え合います。雇用が回復すれば、住宅というアメリカ最強の内需ビジネスが動き出し、住宅価格が上がれば消費が上向き、世界最大の需要が回転を始める。世界最大の需要(消費)が回り始めると、失業率も改善していくわけです。
 逆に、雇用環境が悪化している状況で住宅産業が活況になるわけがありませんし、消費も上向きません。住宅と消費が回復しなければ、失業率改善も見込めないというわけです。


 「二番底」「いや、二番底回避」と、最近のアメリカ経済は悲観論と楽観論が交錯していますが、雇用、住宅、消費の三つが上向かない以上、アップダウンを繰り返しながら「沈滞」に向かっていくというのが正解に思えます。


 続けて、いよいよ状況が切迫してきたアイルランド。


アイルランド政府は「検討不能」を検討も、アングロ銀債で
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ab0s2cVLfQWw
 アイルランドのレニハン財務相は、国有化したアングロ・アイリッシュ銀行の優先債についてデフォルト(債務不履行)は「検討すらできない」という考えを改めなくてはならないかもしれない。ロンドンを拠点とする証券会社、エボリューション・セキュリティーズが指摘した。
 アイルランド政府は一貫して、165億ユーロ(約1兆8700億円)相当のアングロ銀優先債のデフォルトはあり得ないと言明してきた。格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは27日、アングロ銀の優先債格付けを投資適格級で最低の「Baa3」に引き下げた。
 エボリューションのストラテジスト、ゲーリー・ジェンキンス氏は28日のリポートで、「あり得ないことがあり得るようになったのか、もしくは格付け会社が間違っているのかのどちらかだ」と書いている。(後略) 』


 分かりにくい記事ですが、要するに昨日ご紹介したムーディーズのアングロ・アイリッシュ銀行に対する格下げが、同行のデフォルトを織り込んだものであり、

デフォルトするのも、あり得るんじゃね? さもなきゃ、ムーディーズが間違っているかのどっちかだろ・・・」
 という話です。


 何でしょう。ムーディーズによる格下げは、当然ながらアングロ・アイリッシュ銀行の信用リスクを高め、デフォルトに「近づける」ことになります。アイルランド政府としては、そろそろ「格付け機関、ふざけんなっ!」という気持ちになってくるのではないでしょうか。(参考:「アイルランド政府の気持ち」http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10636985939.html


 そもそも格付け機関とは、債権のデフォルトリスクを評価する機関です。その格付け機関の「格下げ」という行為そのものが、債権のデフォルトリスクを高めてしまうのが現実なのです。
 欧米や世界が格付け機関に振り回されるのは彼らの勝手ですが、日本はそろそろこの「奇妙なシステム」を見直すべき時期だと切に思います。そもそも、格付けする相手からお金を受け取っている時点で、格付け機関のビジネスは利益相反だと確信しているわけです。


アイルランド外相:欧州救済基金「断じて利用しない」-克服に自信
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aysPubXr7spA
 アイルランドのマーティン外相は、欧州の救済プログラムの利用は「断じて」排除すると言明。同国の予算は来年の半ばまで財源を確保していると付け加えた。
 マーティン外相は28日、ニューヨークでのインタビューで、現況を克服する自信があると発言。「難しいのは明らかではあるが、こうしたメカニズムを発動する必要性はまったくない」と述べた。
 同外相はまた、アイルランドが国有化したアングロ・アイリッシュ銀行の優先債のデフォルト(債務不履行)に関する観測を否定した。 』


 アングロ・アイリッシュ銀行の処理コストが幾らか不明な状況で、「予算は確保している」と言われても、困ってしまいます。とはいえ、外相が強気に発言しなければならないという状況は、理解できます。といいますか、外相がまともな発言をしているのを見ると、アイルランドでさえ羨ましくなってしまいます。


 何しろ、こちとら政治も外交も「存在しない国」に住んでいるものですから。



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