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日経ビジネスオンライン連載最終回 掲載中!
【“財政大黒字国”こそ破綻した現実 【最終回】もう一度言う「成長こそがすべての解」】
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20100917/216290/?P=1
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 昨日に続いて、アイルランドについて。


 「アイルランド危機」というエントリーを掲載した途端、嫌なタイミングでムーディーズがアングロ・アイリッシュ銀行を格下げしました。


アングロ・アイリッシュを格下げ、ジャンク落ちも視野-ムーディーズ
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=an1iGLM91rOA
 米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、アイルランド政府が国有化したアングロ・アイリッシュ銀行の優先債格付けを「Baa3」と、従来の「A3」から引き下げた。Baa3は投資適格級の最低。ムーディーズはさらに、アイルランド政府が保有者に対して同債券を保証しないならばジャンク級(投機的格付け)への格下げもあり得るとしている。
 ムーディーズはアングロ・アイリッシュの劣後債も「Caa1」(従来は「Ba1」)に格下げした。劣後債は9月29日まで政府保証が付いている。
 アイルランド政府は2008年9月に米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスが破たんしたことを受け、国内銀行システムの崩壊を回避するために銀行債に保証を付けた。政府は国内不動産バブル破裂で危機に陥ったアングロ・アイリッシュを09年1月に国有化。今までで同行に229億ユーロ(約2兆6000億円)を注入しているが、最終的な救済コストは今週発表する。 (後略)』


 昨日も書いたように、アイルランド政府はアングロ・アイリッシュ銀行を「預金業務を引き継ぐ銀行」とバッドバンク(債権回収銀行)に分割することを決定しています。

 記事にもある通り、アングロ・アイリッシュ銀行は昨年1月に国有化され、アイルランド政府は同国のGDPの規模からすると「巨額」の資金を注入し、金融システムの崩壊防止に努めてきました。アイルランドのGDPは(09年)1651億ユーロですから、アングロ・アイリッシュにつぎ込んだ229億ユーロは、GDPの約14%に該当するわけです。日本で言えば、70兆円もの政府資金が一銀行に注入されたようなものです。


 何度か書いてきましたが、アイルランドはバブル崩壊後の財政赤字拡大について、金融市場から圧力を受け、緊縮財政で経済を収縮させました。その裏側で、政府はアングロ・アイリッシュ銀行に多額の資金を注入し、金融システムを維持しなければならず、この二つの課題は完全に相反的です。
 アイルランド国民にしても、自分たちは超緊縮財政で「痛み」を強いられながら、巨額のお金が銀行救済に使われるのを眺めていなければならないことになります。

 しかも、アイルランドは経常収支赤字国で、日本のように過剰貯蓄が余っているわけでも何でもないため、格付け機関や外国金融市場のパワーが相対的に大きくなってしまいます。ムーディーズに格下げされようとも、国債金利がピクリともしなかった日本とは違うわけです。
 
 今後のアイルランド「危機」の流れですが、今週の救済コスト発表が一つの山場になります。

 アイルランド政府が十分に対応できるコストなのか。アングロ・アイリッシュ銀行関連の債券に、アイルランド政府が保証をつけ続けるのか。その場合は、アイルランド「国家」の信用の問題が発生しますが、保証をつけなければアングロ・アイリッシュ銀行の更なる格下げとデフォルト(債務不履行)を招くことになるでしょう。 
 さらに問題なのは、アングロ・アイリッシュ銀行が現在、国有化されてしまっているということです。国有化銀行が債券のデフォルトになると、これはすなわち「アイルランド政府のデフォルト」という形になります。


 08年10月にアイスランドが破綻した際は、カウプシング銀行などがサムライ債などをデフォルトしました。あの時は、銀行国有化騒ぎのゴタゴタの最中でのデフォルトだったため、アイスランド政府のデフォルトとはみなされませんでした(多分)。一応、わたくしは「これって政府のデフォルトじゃないの?」とブログに書いた記憶がありますが。


 しかし、今回のアングロ・アイリッシュ銀行は、もろに「国家管理の銀行」になります。同銀行がデフォルトすると、普通にアイルランド政府のデフォルトということになり、アイルランド危機はギリシャ危機よりも一歩先に踏み込んでしまいます。

 アイルランド国債の長期金利は高騰し、今度は正真正銘のアイルランド公的債務のデフォルト危機へと繋がりかねません。そうなると、アイルランド国債で資金を運用している欧州中の金融機関(銀行だけではありません)に危機が伝播して言ってしまいます。


 こうして考えてみると、国内に過剰貯蓄が溢れ、政府の負債が百パーセント円建ての日本が抱える問題が、もの凄く「楽」に思えてきてしまいます。表面上の現象(バブル崩壊、銀行危機、政府の資金注入、政府の負債残高対GDP比率の急激な悪化)は同じでも、日本と現在の欧州諸国が抱える問題は「全く別のもの」としか表現しようがないわけです。
 

いい加減日本のマスコミはアイルランド危機をきちんと報道しろ!と思ってしまった方は
このリンクをクリックを。

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