三橋貴明事務所。 お仕事のご依頼はこちらから 

Twitter始めました。

人気ブログランキングに参加しています。
新世紀のビッグブラザーへ blog
人気ブログランキングへ

--------------


【日経BO連載最新版】
第四回
【デフレ環境下でインフレ対策を叫ぶ 「規制緩和しろ! 生産性を向上しろ! ムダを削れ!」すべて誤り】


私は全ヨーロッパが単一通貨を持つことを望む。そのことは貿易をはるかに容易にするだろう。(ナポレオン・ボナパルト


ドイツ:GDP4-6月、前期比2.2%増-20年ぶり高成長
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aCrUjJo67WEg
 ドイツ経済は4-6月(第2四半期)に20年前の東西ドイツ再統一以来の高成長となった。世界的な景気回復を受け輸出が増加したほか、民間企業の設備投資も拡大した。
 ドイツ連邦統計庁が13日発表した第2四半期の実質GDP(国内総生産)速報値(季節調整済み)は前期比2.2%増と、大きく加速。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト33人の予想中央値では、1.3%増が見込まれていた。1-3月(第1四半期)GDP成長率は従来の0.2%から0.5%に上方修正された。
 第2四半期GDPは前年同期比では3.7%増(営業日調整済み)となった。
 ユーロが年初来で10%下落し、ユーロ圏外でのドイツの輸出競争力が高まる中で、独経済は世界的な需要回復の恩恵を受けている。ただ、ユーロ圏の各国政府は財政赤字拡大を抑えるため歳出削減を進めており、向こう数カ月間に景気回復ペースが鈍化する恐れもある。 (後略)』


 ヨーロッパ経済が凄いことになっています。


 ユーロ安により、経常収支黒字国のドイツ(と同じく経常収支黒字国のオランダ)の生産や経済成長率が高まる中、他は冷え込み、格差が凄い状況になりつつあるのです。
 現在、ユーロ圏全体の鉱工業生産は、一時の極端な落ち込みから立ち直り、2003年の水準まで回復しています。が、フランスの鉱工業生産は未だに1997年水準、スペインも1997年水準、イタリアに至っては1994年水準にまでしか回復していないのです。
 それにも関わらず、なぜユーロ全体では2003年水準かといえば、ドイツがすでに2006年4月の水準にまで回復しているためです。 失業率の方も、欧州主要国はことごとく未だに悪化していっているのですが、ドイツのみが着実に数値を減らし続けています。ドイツの失業率は、すでに6.6%と、早くもリーマンショック前の水準にまで戻っているのです。


【2010年6月時点 欧州諸国の失業率】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_30.html#EuroJun2010  


 何しろ、東西ドイツ再統一以来の経済成長率ですから、当然ながらドイツは「出口戦略」を叫び、各国の緊縮財政を要求しています。しかも、この経済成長はユーロ安による輸出拡大の賜物なのです。元々、ドイツの輸出依存度は高かったわけですが、直近のデータではアメリカの四倍にまで膨らんでしまっています。その割に、個人消費は高まっていないため、もろに「外需依存」の経済成長になってしまっているわけです。


 現在、アメリカなどは各国の内需の拡大を求め、各国(特に日独)が自国の需要を増大させることで世界的な経済不均衡の是正に貢献するように期待しています。要するに、
「もう、俺たち(アメリカ)の経常収支赤字に頼るなよ」 
 ということなのですが、ドイツの「外需依存」&「緊縮財政主義」は、この真逆路線になってしまっているわけです。


 さらに問題なのは、このドイツの意向に(ECBを通じて)ユーロ加盟国、特に財政が危機に瀕している国々が引っ張られてしまうという点です。アイルランドは、率先して財政再建に走り、経済成長率をどん底(マイナス7.1%)にまで叩き落し、格付け期間から格下げされる羽目に陥りました。


 残りの財政危機に瀕している国々も、ほぼ同じ路線をたどるか、あるいはECB(というかドイツ)の意向に反して緊縮財政を拒否し、やっぱり格付け機関に格下げされる羽目になってしまうでしょう。


 本来、PIGS諸国のような状況に至れば、通貨が暴落し、輸出競争力が高まり、輸入が困難になるはずです。結果、確かに政府のデフォルトの危機も高まるでしょうが、経常収支は黒字化し、対外純負債も減っていくはずなのです。


 それは1998年および2009年の韓国を見れば、明らかです。これらの年には、韓国は「前年に」通貨ウォンが極端に下がり、輸入が困難になり、一気に貿易黒字額を回復しました。(但し、2009年は輸出総額自体は減りました。輸出の減少以上の、輸入が減ったため、貿易黒字になったわけです)
 通貨暴落により貿易黒字を回復した結果、09年の韓国は何とか対外純負債国から対外純資産国に戻ることができました(09年第2四半期)。


 ところが、さすがにユーロは「下落」することはあっても、「暴落」することはあり得ません。結果、PIGS諸国は通貨安の恩恵をほとんど受けない中で、経常収支黒字路線に持っていかなければならないわけです。これは相当に大変でしょう。
 経常収支黒字路線を回復できないと、外国からの(ユーロ建て)借り入れが多い南欧諸国などは、政府がデフォルトするか、あるいは国民からユーロを絞り上げ、海外投資家に返済するしかありません(要は緊縮財政)。とはいえ、緊縮財政路線はアイルランドのように、極端な経済成長率の低迷をもたらします。


 もはや、ユーロ加盟国はドイツ(とオランダ)とそれ以外の国々で、利害関係が明確に分かれてしまっているわけです。このまま単一通貨を維持することが可能と考える方が無理がある上に、そもそもPIGS諸国はユーロを離脱した方が、回復が早まるでしょう。


 現実化したナポレオンの夢は、壮大な「社会実験」として歴史に刻み込まれ、やがて忘れられてしまうような気がいたします。




 ※人気ブログランキング「政治部門」首位独走中です!応援ありがとうございます!



引き続き三橋貴明の活動をご支援下さる方は、
このリンクをクリックを。

新世紀のビッグブラザーへ blog
人気ブログランキングへ


※本ブログへのリンクは↓以下のバナーをご利用ください。

新世紀のビッグブラザーへ blog
『新世紀のビッグブラザーへ blog』
三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba

三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba
◇ポルパパのブログ
投資と車と日々の起業家日記
管理人:ポルパパさん

10/06/21 「経済ニュースが10倍よくわかる「新」日本経済入門
(アスコム)発売開始!
10/06/18 
いつまでも経済がわからない日本人 「借金大国」というウソに騙されるな」
(徳間書店)発売開始
10/06/10 
「日本の未来、ほんとうは明るい!」
(WACC)発売開始!
10/06/08 
「日本のグランドデザイン」 (講談社)発売開始!


Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」
連載中
「三橋貴明の<ウラ読み>経済レポート」 
本メルマガではセミナー、勉強会のご案内など、メルマガならではの情報発信をしていきます!

 
新世紀のビッグブラザーへ ホームページはこちらです。
 新世紀のビッグブラザーへblog一覧はこちらです。