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【「国の借金」意味分かって使ってる? 家計簿的発想で「国家のバランスシート」を見るなかれ】
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20100816/215789/?bvr
日経BOの連載↑、PV数が物凄いことになっているそうです。ありがとうございます!
しかも、あのPV数でアンケートが「ぜひ読むべき」が90%というのは、結構凄いことなのではないかと思います。本当のニーズがどこにあるのか、という話なのかも知れません。
最近、リチャード・クー氏のバランスシート不況論を評価されていると聞いたポール・クルーグマン氏が、日本経済や世界経済について語っていらっしゃいます。本ブログのユーザさんにとっては大変面白いので、三橋が抜粋して概要をご紹介いたします。全文は大変長いものですが、時間がある方はぜひお読みください。
『独占インタビュー ノーベル賞経済学者 P・クルーグマン「間違いだらけの日本経済考え方がダメ」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/994
◆◆◆世界的な不況はこれからが本番◆◆◆
「日本は、アメリカよりも深刻な不況に直面しているということを、理解すべきです。もちろん、アメリカ以上に歳入を増やす必要もあります。
しかし、日本の消費税を上げるタイミングは、少なくとも『大不況真っ只中の今』ではないことは、明らかです。
この15年間、日本はずっと『流動性の罠』(金利が一定水準以下に低下し、一般的な金融政策が効力を持たない状態)に陥っていて、デフレも収まっていません。
そんな状況下で、景気の回復よりも財政赤字の解消を優先すれば、デフレ・スパイラルを加速させるだけです。だから増税は、日本銀行がインフレ・ターゲット(目標として掲げる物価上昇率)を設定して、その効果が見えてきた後で始めればいい。
また、法人税の引き下げが取り沙汰されていますが、各企業の経営者にとって、『法人税が高すぎる』と主張するのは、当然でしょう。ただし、今の税率が歳入や景気に悪影響を及ぼしているという確たる証拠がない以上、それほど重要な問題だとは考えていません」(後略)』
以下、三橋の抜粋と解説。
◆ギリシャについて:ギリシャは本当に深刻。当分の間、ゼロ成長とデフレが続く。また、ギリシャは3年後にユーロ圏を離脱している可能性がある。ギリシャの離脱が、バルト諸国などへ悪影響を及ぼす可能性がある。
個人的には、前から書いてますように、むしろ「ユーロ離脱」こそが、ギリシャにとっての唯一の解だと考えています。新ドラクマでも何でもいいので、新通貨にして「通貨暴落」させて、ユーロ建ての政府の負債をデフォルトするのです。その上で、通貨安を利用した経済成長路線を歩み、経常収支黒字国になって対外負債を返済するわけです。
また、本ブログで何度かラトビアを取り上げましたが、ラトビアはユーロ加盟を目指して通貨ラトをユーロペッグしています。ユーロ加盟が無意味になった場合、ラトのユーロペッグが外れ、やはり「通貨暴落⇒対外負債(ユーロ建て)のデフォルト」という道を進むことになります。
現在の欧州経済は、本当に深刻で、かつ出口がなかなか見当たりません。
◆日本に必要なこと:まずは経済を回復軌道に乗せることが可能な、大型の財政刺激策。さらに金融政策面ではインフレターゲット。
日経BOの連載や本ブログで繰り返し述べているように、今の日本に必要なのは財政政策と金融政策のパッケージです。どちらか片方ではダメなのは、すでに過去の経験からも明らかです。
ところで、インフレターゲットの話に進んだところで、クルーグマン氏が大変面白いことを言っているので、その部分を引用します。
『そこには二つの理由があります。まず価格の安定とハイパーインフレとの二者択一しか頭にない人が多いことです。私が仮に中央銀行に対して、アメリカの場合はFRB(米連邦準備制度理事会)ですが、「目標として掲げたインフレ・ターゲットに達していない」と文句を言ったとしましょう。すると人々は「アメリカをハイパーインフレに陥ったアフリカのジンバブエのようにしたいのか」と反論します。
でも、私の主張する、緩やかなインフレと、ジンバブエのハイパーインフレでは、まったく違うはずです。しかし、多くの人々はその区別がつかない。実際に経験したわけでもないのに、ちょっとインフレになれば、彼らはもう滑りやすい坂道を転げ落ちて収拾がつかないことになると思ってしまうわけです。実際にはそうはならないのに、人々は極端に悪いイメージを飛躍的に抱く。(後略)』
アメリカにもいるんですね・・・・。
「そんなことをしたら、ハイパーインフレーションになる!」
確かに、クルーグマン氏の言うとおり、この手の極論を言う人は、「物価の安定」と「ハイパーインフレ」の二者択一しか頭にないわけです。
アメリカでさえ、こうなんですね。なかなか根深い問題です。
さらに、クルーグマン氏は金融政策が事実上「無策」になっている、日銀をこっぴどく批判しています。
また、中央銀行の独立性に懐疑を頂いていますが(前は擁護していたそうです)、これにはわたくしも賛成です。日本がGDPデフレータが13年間も下落を続ける「異常」な環境下におかれている以上、日銀は断固としてデフレ脱却の手を打ち続けなければなりませんし、そうしないというのであれば、政府が介入するしかないでしょう。
◆インフレで被害を受ける人々:現預金に依存する人々は、被害を受ける(当たり前)。年長者にとっては、あまりいいことではない。ただし、現在の景気停滞は若い人々を傷つけている。緩やかなインフレを拒否し、自行のバランスシート保護を優先する日銀の考え方は、正気ではない。年に数%の緩やかなインフレを目標に据え、就職できない若者たちの人生を救え。
大、大、大、大賛成!ですっ!
◆日本のデフレはBRICsのせいか:海外の競争相手が日本の不況の原因となるとしたら、それは持続的な貿易赤字をもたらすはず。現実には、日本は新興市場から輸出増による恩恵を受けている。
◆日本やアメリカは財政破綻するか?:日米のような自国通貨を有する国は、債務履行のために印刷機に頼ることができる(もちろん、限界はある)。債務が膨大な額に上った場合は、印刷機はハイパーインフレを呼び込む。ただし、以上は全て極端な話。
日本の場合、インフレになれば債務問題の大部分は解決する。インフレ下では借りたときよりもお金の価値が下がり、返済負担が減り、債務解消に劇的な効果を発揮する。
『したがって、日本が破産するとしたら、実はその唯一の方法は、日本銀行が「インフレなどとんでもないことだ」と言い続けて、このまま何もしないことを選んだ時です。
ただし、日本の場合、この債務問題は、意外にも後には幸運視されるかもしれない。これは逆説的表現で、クレイジーと言われかねないかもしれませんが、もし、日本の債務がどんどん膨らんで国家予算の破綻が見えてきた時、日本人は本気になって考え始めることでしょう。
「日銀はいよいよインフレを起こして、債務を帳消しにするつもりなのかもしれない」と。その時こそ、インフレへの期待が高まり、この経済問題が解決に向かうのです。
長期国債の持ち主は激しいショックに見舞われるでしょうが、マイナス面はそれだけではないでしょうか。』
あはははは。ごもっとも。
◆日本の財政再建:急ぐ必要はない。日本は自国通貨を持つ先進国として、安定した政治システムと状況や環境の変化に対する適応力を有している。
イギリスの歴史を見ても、政府の負債対GDP比率が250%に達したときがあるが、何の問題にもならなかった。
アメリカ、日本、イギリス。自国通貨を有する先進国は、極めて低利の借款が可能。そのため、財政再建を今の時期を急いではいけない。
「安定した政治システムと状況や環境の変化に対する適応力」
クルーグマン氏は別に皮肉を言ったわけではないと思いますが、わたくしは日本からこれが失われつつあるのかも知れないという危機感を抱いたからこそ、動き出したわけです。
まだ、間に合います。それでも、急がなければなりません。
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