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 「デフレと中央銀行 後編」です。


 昨日、「国内銀行貸出金残高と貸出態度DI推移」のグラフをお見せしましたが、あれはもちろん「全企業」を対象にしたものです。すなわち、大企業と中小企業が混ざってしまっているわけです。


 というわけで、より実態をつかむためにも、国内銀行の貸出態度DIを企業規模別にグラフ化してみました。大企業、中堅企業、そして中小企業に分けたわけです。


【国内銀行貸出態度DI推移(1983年-2010年)企業規模別 】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_30.html#DI2


 ちょっと面白いなあ、と思ったのは、バブル崩壊時(90年代はじめ)は、銀行は大企業に対して最も貸出態度を硬化させているという点です。中小企業に至っては、バブル崩壊直後であっても貸出態度DIはプラスを維持しています。
 そもそもバブルに煽られて「誰が」負債を拡大したのかが、露骨にお分かり頂けると思います。少なくともこの時期は、銀行は中小企業に対しては、
「別に、貸してもいいよ~」
 と、思っていたわけです。


 その後、政府の景気対策拡大(96年まで)もあり、日本経済は徐々に回復に向かいます。結果、銀行は大企業に対して一気に貸し出し態度を軟化させていきます。

 この時期の銀行の貸出金残高を見ると、面白いと思うのですが、残念ながら日銀の資料は99年以降しか見当たらなかったのです。(それで、昨日のグラフが99年からになっている) 98年以前の国内銀行の貸出残高のデータがあるところをご存知の方がいらっしゃいましたら、是非コメントください。


 さて、銀行の貸出態度ですが、97年の橋本政権による緊縮財政開始と、その後の景気悪化に伴い、奈落を転げ落ちるかのごとく硬化しました。このときは、企業規模に関係なく、大企業、中堅企業、中小企業と、まとめてマイナス領域に突っ込んだのです。


 まさにこの時期、現在まで続く日本のデフレ深刻化が始まったわけですが、とりあえず橋本政権直後は、小渕政権による景気対策の効果もあり、貸出態度DI全体は一時的に持ち直しました。とはいえ、ご覧頂くと分かりますが、中小企業に対する貸出態度DIは、何と2004年までプラスに戻ることはありませんでした。

 この時期の大企業に対する貸出態度は、量的緩和の効果もあり、余裕でプラス化していますので、いわゆる中小企業に対する「貸し渋り」が発生していたことがわかります。


 04年にプラス化したとはいえ、もちろん大企業や中堅企業には及びもつきません。
「大企業などに対する貸出態度が軟化しても、なかなか思うようにお金を借りられない。全体的に貸出態度が硬化する際は、大企業などと共に落ち込む」
 これが、バブル崩壊後の中小企業に対する銀行の貸出態度というわけでございます。別に、「だから銀行が悪い!」などと言う気は全くありません。念のため。


 とはいえ、全国で企業数が280万社を超え、企業数全体の98%を占める中小企業に対する貸出態度が軟化しにくい以上、国内の景況感がなかなか良くならなくても、ある意味、当然に思えます。


 なぜ、銀行の中小企業に対する貸出態度DIが軟化しにくい(大企業と比べて)のかといえば、もちろんデフレだからです。中小企業は大企業と比べて、内需依存が高いため、当然ながら国内のデフレ悪化の影響を、より大きく受けることになります。


 何しろ、直近のデータを見ると、大企業・中堅企業はすでに貸出態度DIがプラス化しているのに、中小企業は未だにマイナス領域をさまよっているのです。


 そう考えると、銀行の貸出残高が伸びない問題について、
「バランスシート不況で、企業の資金需要がないため」
 と、一挙両断にするのは、間違いのようにも思えます。確かに、大企業に対してはその通りなのですが、中小企業に対しては、やはり「貸し渋り」という問題が「相対的に」存在しているわけです。


 デフレ環境下である以上、中央銀行(日銀)が金融緩和を推し進めても、
大企業は借りたがらない。中小企業には(銀行が)貸したがらない
 というわけで、全体的に民間の資金需要が増えることは考えにくいです。


 各種のデータをブレイクダウン(細分化)した上で、たとえば、
中小企業への貸出態度DIが安定的にプラス化するほどに、大企業に資金需要が産まれるように、財政出動による需要創出と、日銀の金融緩和を続行する」
 この種の目標を立てなければ、デフレ脱却とはいっても一時的なものに終わってしまうように思うわけです。


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