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 「デフレと中央銀行 中編」です。
 そもそも、このシリーズを思い立ったのは、高橋氏の寄稿もありますが、その前にアメリカのデータを見たためです。すなわち、現在のアメリカにおいて、
「銀行側の貸出態度が緩和しているにも関わらず、企業側の資金需要が盛り上がらない」
 という現象が発生しているのを確認した
ためなのです。


 企業の資金需要が盛り上がらなければ、FRBがゼロ金利政策を継続し、量的緩和を拡大したとしても、金利上昇や景気回復には繋がらない可能性が高まるわけです。


 全然、話は変わりますが、現在、日本の長期金利は1%を切っています。昨年の十月に、長期金利が1.3%台から1.4%台に上昇したとき、国内の新聞では「すわっ! 国債暴落秒読み!」などのバカバカしい見出しが並びました。
 結局、金利が上昇したことを受け、国内金融機関が一斉に買いに走り、金利は瞬く間に1.2%台に落ちてしまいました。
 現在の金利は1%を切っているわけですが、少し景気が良くなったり、株価が上昇すると、さすがに1%台は回復するでしょう。そのときに再び「長期金利上昇! 国債暴落秒読みへ!」などの見出しが各紙に載るかどうか、注目して見させて頂きます。


 それはともかく、なぜFRBが金融緩和を継続しても資金需要が高まらない可能性があるのかといえば、無論、日本の過去の経験があるためです。


【国内銀行貸出金残高と貸出態度DI推移(1999年-2010年)】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_30.html#DI


 上の図は、日本の国内銀行の貸出金残高と、銀行貸出態度DIをグラフ化したものです。銀行貸出態度DIは、ゼロよりも上のときは「銀行がお金を貸したがっている」、下のときは「銀行がお金を貸したがらない」事を意味しています。
 日本の企業は、橋本政権以降、2005年まではひたすら「借金返済」に専念していました。いわゆるバランスシート不況が進行していたわけですが、これを受け、小泉政権下で大々的な量的緩和が始まりました。
 量的緩和(日本銀行から民間銀行への流動性提供)により、銀行の貸出態度は極端なまでにプラスになりました。すなわち、この時期の銀行はお金を「貸したくて、貸したくてたまらない」状況になったわけです。
 それにも関わらず、ついでに言えばこの時期は、アメリカの不動産バブルの影響で外需が急伸していた時期にも関わらず、銀行からの貸出金はなかなか増えませんでした。まさしく「やっと底打ち」という感じです。


 リーマンショックを受け、再び銀行貸出DIは悪化しましたが、その後の日銀の金融緩和を受け、一応、戻しつつあります。(直近のデータである2010年6月期は、ちょうど「ゼロ」でした)


 問題は、政府が緊縮財政路線でガリガリと支出を削っている状況では、銀行の貸出態度DIがどれほどプラスになろうとも、民間の資金需要が回復しないという点です。それは小泉政権下の量的緩和で、実証済みなのです。

 小泉政権下では、「外需拡大+緊縮財政」という、現在よりは間違いなく良好な環境だったにも関わらず、金融緩和が民間の資金需要拡大には「あまり」結びつきませんでした。
 今回は何しろ「外需横ばい+緊縮財政」ですから、前回よりも最終需要が存在しない環境下であるのは確実です。この状況でどれだけ日銀が金融緩和を拡大しても、銀行からの貸出金は増えるどころか、減る可能性の方が高いと思われるのです。(年末くらいには明らかになっているでしょう)


 民間の資金需要が増えなければ、政府が緊縮財政路線を継続している以上、国内の需要は拡大しようがありません。すなわち、日銀がどれほど金融を緩和していこうが、デフレからの脱却は果たせないと考えるわけです。


 デフレ脱却には、財政出動+金融緩和のパッケージが必須です。そんなことしたら「インフレになる!」とか言われそうですが、そもそも健全なインフレ率を取り戻すことが目的なのです。
 日本が健全なインフレ率を取り戻せば、円高圧力も緩和されていきます。政府の負債(政府短期証券)を増やして為替介入するよりも、こちらの方が余程まともなソリューションだと思うのですが、いかがでしょうか。


 続きます。



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