世の中には色々変わった実験があります。
本日は知る人ぞ知る
『UNIVERSE 25』(ユニバース25)
について。
もしもこの世が極楽だったら?
極楽がずっと続いたら人はどうなるの?
ずっと幸せでいられるの?
そんな疑問に一石を投じた実験です。
1968年~1972年にかけてアメリカの動物行動学者ジョン B. カルフーンは『UNIVERSE 25』というネズミを使った実験をしました。
別称
『楽園実験』
ネズミが生存に一切脅威を感じない環境を作りそれを観察すると言うもの。
ネズミの生存の脅かす脅威は次の5つ。
①住処からの追放 ②飢餓 ③悪天候 ④伝染病 ⑤捕食者
充分な住処に充分な食料、そして温度や湿度管理をした部屋を作り、そこに4組8匹のつがいのネズミを放します。
4組のつがいはそれぞれ充分な広さの住処を得て何の脅威も感じない環境で順調に子孫を増やしていきます。
315日目、ネズミの数は620匹まで増えました。
それまで自由に巣箱やえさ場を選んでいたネズミたちは、なぜか一か所に集まり始め、決まった巣箱で固まって生活するようになりました。
そして15匹しか入らない巣箱に、なぜか111匹がぎゅうぎゅうに詰まって暮らすという不自然なことが起き始めたのです。
餌場も何カ所もあるのに、なぜか同じ時刻に、同じ餌場で、奪い合うように一斉にエサを食べるようになったのです。
これは「社会」が形成されたと理解されました。
そして同時に「格差」が生まれました。
格差はピラミッド型のA〜Eの五段階に別れ
A: ボスネズミ
地位は盤石であり、このネズミ自体は好戦的でなく守りに徹するような保守的な行動様式でした。
B: ノーマルネズミ
Aに比べ地位は不安定であり、自ら縄張り争いに参加する好戦的な性格でした。
C: 浮気者ネズミ
このネズミは闘争には参加しないが、オスメス、子供関係なく求愛行動をしましたが、性格は穏やかであり、ABネズミに攻撃を受けても闘争に参加することもありませんでした。
D: ストーカーネズミ
Cと同様に誰彼構わず求愛行動を仕掛けたましたが、Cよりも執拗にメスを追いかけ回しました。
E: 引きこもりネズミ
性格が極めて非社会的であり、孤立していて、巣から出てこず他のネズミに関心を示さず、他のネズミが睡眠を取っている時間に餌を食べていました。
ABタイプは野生のネズミにもみられるタイプでしたが、CDEタイプは野生のネズミにはいません。
なぜなら、
CDEタイプのネズミは、群れを追い出されたネズミで、野生では孤立し飢餓や捕食によりいなくなるか、子孫を残すことが出来ないからです。
しかし、この実験では住処が充分に存在し餌も尽きることがなえので、ドロップアウトしたものの天敵に捕食もされず、集落周辺にとどまり続けることになります。
結果として、ABネズミは巣穴という個室をもち、CDEネズミは実験施設中央の広場に集合しスラムを形成しました。
一方、メスのネズミにもオスの格差とともに同じく格差が生まれました。
ボスネズミに選ばれ囲われる「家持ち」ネズミ、選ばれなかったメスネズミは「スラム」ネズミとなりました。
ここからは「停滞期」と言われていて、ネズミの数の増加の伸びが悪くなってきます。
理由は
家もちネズミのメスは、ボスネズミに守られて出産し順調に子育てを出来ましたが、スラムネズミは子供を上手く育てられなかったからです。
スラムネズミのオスCDは、他のメスを追いかけ回したり、妻子を守る戦いを放棄し、Eに至っては交尾すらしなくなったので、出産後、赤ちゃんネズミが育つ数がぐんと減ってしまった(1割以下した生存しなかった)からです。
更にオスに守ってもらえなくなったメスは自ら攻撃的な性格になり、子供にまで攻撃するようになったのです。
実験開始から560日、出生数と死亡率が並び、個体増加率は頭打となりました。
この時の個体数は2200匹です。
餌の量、収容容量からみてもゆとりがあるにもかかわらず、ネズミの増加が完全に停止したのです。
実験開始から600日目にとうとう乳児死亡率が100%となってしまいました。
実験開始から920日以降にはメスが妊娠しなくなりました。
実験開始から1330日目に楽園生存者の平均年齢は776日(ネズミの一生は800日)超高齢化社会になりました。
実験開始から1440日、楽園生存者はオス22匹、メス100匹となりました。
自然界ならば、個体数が減れば食料が余るのでまた数が増えてくるのですが、ここではそれは起こりませんでした。
理由は
オスネズミが全てEの「ひきこもりネズミ」だったので、交尾自体をしなかったからです。
実験開始から1780日後、最後のオスネズミが死亡し、楽園は「無くなりました」
食料無限、天敵がいない環境の「ユートピア」で生物が絶滅したのです。
『UNIVERSE 25』の「25」は25回と言う意味で、その全ての回で同じ結果になったそうです。
2022年11月15日、世界の人口は80億人を突破しました。
1950年に約25億人だったそうなので70年間で3倍です。
イギリスの経済学者マルサスは、1798年「人口論」の中で、「人口は等比級数的に伸びるが、食糧生産 は等差級数的にしか伸びない」ので、人口を抑制しないと食料難になる、と予言しました。
「緑の革命」を起こしたノーマン・ボーローグは「イノベーションが食料難を解決する」と言いました。
しかし『UNIVERSE 25』の実験からネズミは充分な食料があっても滅んでしまいました。
問題は食料ではなかったです。
『UNIVERSE 25』が仮に人間への予言だとしても、そして既にフェーズが最終段階に入ってたとしても、まだ終末を変えられる可能性はあります。
ひとつは「格差」を無くすこと、ひとつは「子孫を残す」こと、ただし「社会性のある」子孫を残すこと。
それには
人と自分を比べない。
母子共に安心して子供を育てられる環境を整える。
戦争なんかで若者を死なせている場合ではありません。
こんなに安全でとりあえず食物だって豊富にある日本なのに、どうして人口は減り続けるのか?
老人ばかりが増えるのか?
本当の安心安全とは何か、国も国民もそろそろ真剣に考えないとならない時期になりました。
この後日本がどうなろうと、その頃には本当の「極楽」へ旅立っている我が身としても、出来たら未来永劫お墓参りに来てくれる子孫が、たくさんいて欲しいものです。
最後までお読み頂きありがとうございましたm(_ _)m