しゅーとめの”年越しそば作れない”発言から1、2ヶ月後。
糖尿病持ちのしゅーとめかかりつけの近所のお医者さんの所に、
もの忘れ検診を受けに行きました。
医者へ連れて行くにあたり、夫と作戦会議を開きました。
しゅーとめは、痛がり、怖がり、心配性。要するに気が小さいのです。
自転車のかごに、ホールケーキの箱を入れて漕いで帰るのは平気なのですが...
なので、いきなり脳神経外科に連れて行くなどもってのほかです。
そこで、もの忘れ検診という、ちょっとお気楽?に思える検査を、
- しゅーと(義実家の総理大臣、兼大蔵大臣、ボケとは無縁)、
- まだ若い?夫と私
も、一緒に受けるから試しに受けてみようよ!という感じで誘う事にしました。
この提案における我々の目論見としては、
もの忘れ検診で、しゅーとめの異常が指摘される(だろう)
”これは大変だ!!”的雰囲気を醸しだし、しゅーとめの訳の分からないうちに、
(天然さんなので、雰囲気に流されやすい)脳神経外科を紹介してもらい、
受診にこぎつける。
しゅーとめの気持ちを慮った(?)スバラシイ提案のように思いました。
そう、もの忘れ検診を受けるまでは。
皆さん、もの忘れ検診を受けたことはあるでしょうか?
それは,5、6つの質問に答えるだけの簡単な検査なのですが、その内容は...
- 今日は何日ですか?
- 今現在の総理大臣は誰ですか?
といったレベルのものなんです!
日常的には普通に生活を送っているしゅーとめですから、こんな検査では、
正しく判定出来ないのではないかと、半ば愕然とした気持ちで受けました。
しゅーとめは、総理大臣の問題だけ書けませんでしたが、後は時間をかけ、
どうにか書き終えました。そばで見ていた私は、問題を解く時間のかかり方に
不安を覚えながらも結果を待ってました。
結果、しゅーとめだけ2次検査という形で、別室に呼ばれて検査を受けました。
そこで何をしていたのかは細部までは分かりませんが、最終的に先生に呼ばれて、
下された診断は、「大丈夫ですよ~、問題ありません」でした。
なぬ?
そばも作れなくなったのに?
先生は何をもって「大丈夫」と判断したのか、根拠を説明してくれました。
(ちなみに、先生は内分泌系専門のお医者さまです。)
先生によると、認知症の人は空間認識が不得手で、指で作ったキツネなどが
作れないんだそうです。
しゅーとめはこの検査を見事クリアしたのです。
さらに、社交性の高いしゅーとめは、コミュニケーション能力も高く(これは、
症状がさらに進んだ今でも保たれている能力の一つ)、先生との問診も、
スムーズに進められたのだと思います。結果、問題なし!と。
大丈夫かなと思いつつも、先生が仰るのだから、と胸をなで下ろしたのは事実です。
皆、明るい気持ちで帰途につきました。
でも、結局その後、1年経たずにしゅーとめはアルツハイマーと診断されました。
しかも、中等症。
介護生活が始まり、実際に深く接してみて初めて分かった事ですが、
認知症の症状は、ホントに千差万別です。
アルツハイマーは、脳に病気を引き起こす原因物質がたまることで、
脳細胞が損傷したり神経伝達物質が減少する病気です。
つまり、
脳や神経の損傷部分(=人間の行動の何を司る部分なのか)によって、出来なくなることが人によって全く違う
のです。しゅーとめの例で言うと、空間認識を司る部分に損傷がなかったため、
指でキツネを作ることが出来たわけです。
余談ですが、空間認識の範疇に入るかどうか分かりませんが、時計を書けなくなる
という人もいるようです。
言われてみれば当たり前の話です。
けど、実際に接してみるまで、全くそんな認識は持ってなかったし、
記憶障害が見られて初めて、あら、認知症かしら、位の知識しかありませんでした。
しろーとの見解ですが、重ねて言います。
認知症診断には、人間のあらゆる行動を司る脳機能のすべてのチェックが出来る問診が必要です。
つまり、専門医でないと判断出来ない、ということです。
先述の先生がどうこう言うつもりはありません。
ただ、あまりに通り一遍の「(主に)記憶に関する障害」だけが認知症に
つながっている、という知識しか持っていなかった自分が悔やまれるのです。
しかし、これだけ情報があふれていて、かつ知識として持っていても、実際に
上記のような「損傷部分によって出来ることが違う」といった認識は、
なかなか持てるものではなく、これは体験者がお知らせしていくべきだと
思いました。
すでに4つ目の記事ですが、本ブログではこのようなお話を引き続きあげていく
予定です。
少しでも、認知症の予防や進行の緩和に役立つようなら幸いです。