立川断層 | 武蔵野台地調査隊

武蔵野台地調査隊

武蔵野台地の湧水と北アルプス中心の登山日記です


2016年の情報はこちら↓

最新の研究による知見では、立川断層はそれほど危険な断層ではないとされています。


 立川断層は、最近ではトレンチ調査までが行われ、様々なことが判明しています。トレンチ調査は断層面の個所に溝(トレンチ)を掘って地層を観察する調査のことです。

 私が立川断層を知ったのも、10年近く前に読んだ松田時彦先生の著書「活断層」(岩波新書)でした。
自分が住んでいる多摩地区にあるのだと、驚いたものです。
しかし、もっと身近に感じたのはずいぶん後のことで、武蔵村山にある「かたくりの湯」という温泉に行った時のことでした。車で旧青梅街道を西走して温泉まで行くのですが、途中に大きく折れ曲がる大曲という場所があり、低山がぽつぽつあります。妙な地形だなぁと、思いながら温泉に入りました。

 

 

イメージ 2

   立川断層が遮水して作ったとされる狭山が池

 

その後、近くに立川断層があることを思い出し、温泉が涌いていることも、納得してしまいました。この地点にほど近い場所に2枚目の写真の狭山ガ池があります。榧根勇先生の著書「地下水の世界」 (NHKブックス)に、たいへん興味深いことが書かれています。「狭山ガ池は立川断層の直近西側にあるのですが、断層が遮水面となるため、この池付近で湧水となって湧き出ている」というものです。箱根ヶ崎は水が豊富なオアシスであったために昔から宿場町として栄えたということです。

 狭山ガ池の立地を地図で眺めてみると、榧根先生の先生の説が納得できる気がします。狭山ガ池の東側には立川断層をはさんで、狭山丘陵があります。感覚的には狭山丘陵からの伏流水が西に降りて湧き出そうな気がするのですが、そうではなく、断層にさえぎられている。そして、地図上では、狭山ガ池からの水が断層を避けるように南下していることもわかります。いちばん上の写真の背景に見えている小山は、狭山ガ池緑地という残丘です。この残丘は、古多摩川が侵食し残したものだそうです。下の地図の狭山ガ池の右にある鳥居マークのところが残丘です。

 

イメージ 3

 

  立川のことが詳しく紹介されている下記のHPで立川断層のことを知ることができます。
http://bekkoame.ne.jp/~satortri/tachi-index/tachi-index.html

今回の調査隊は、実際にフィールドで見られる立川断層を追ってみました。手がかりとしては、トレンチ調査が行われた地点(箱根ヶ崎南トレンチ)を車で目指しました。

 その結果、トレンチらしきところはわからなかったのですが、断層崖?思われる段差を発見しました(地図中のオレンジ丸の位置)。地図は産業総合研究所のト「レンチ速報」(http://unit.aist.go.jp/actfault/katsudo/trench/tachikawa/index.html)を参照しました。

 位置的に、断層推定線上にあり、断層崖と確信しました。その様子が下の写真です。立川断層は北東側が隆起するという事実とも一致しています。畑の中に明瞭な段差があっったのです。この段差は周囲にも連続していますが、人の手が入って均らしてしまったところもあるようです。

 

イメージ 1

 立川断層に沿った段差(断層崖なんだろうか?)

 

イメージ 4

  この写真は残丘の露頭です。地質は砂礫層です。このあたりは立川面らしいのですが、改めて詳しく調べたいと思っています。

地形や断層と湧水の関係を知ることが何だかとても面白くなりました。

  

2024.1.13追記
平成27年に東大地震研は3年を掛けた調査の結果、立川市には断層が分布していないという結論を出し、立川断層を箱根ヶ崎断層と改称しています。しかしながら府中市や小平市のHPではいまだに立川断層と記載されています。また、政府の地震本部の記事も今だに平成11年の発生危険度の評価が掲載されており文科省による上記の平成27年の調査結果が反映されていないようです。