「じゃ、次、
不動産登記法第122条ね」
「 この法律に定めるもののほか、
登記簿、地図、建物所在図及び
地図に準ずる図面並びに登記簿
の附属書類(第153条及び第155条
において「登記簿等」という。)の
公開に関し必要な事項は、
法務省令で定める。 」
「え?それだけ?」
「そうだよ」
「なんとまあ、ざっくりな」
「だから、詳しいところは
不動産登記規則で定めるって」
「不動産登記法のうち、乙号事務に
ついて定めてあるのは、
たったの4つの条文だけなんだね」
「乙号事務を取り巻く状況は
どんどん変わっていくからね。
全部を法律で定めちゃうと
新しいことにすぐに
対応できなくなってしまう」
「なるほどね~。
じゃ次、何しよっか」
「ほんとは不動産登記法を
1条ずつ読み込んでいきたいんだけど
乙号に関する条文、って約束したから
次は、不動産登記規則の、
乙号に関する部分を読んでいこう」
「新しい発見があるかな」
「あると思うよ。
そもそも条文を読まずに仕事をしてる
部分もあるし、誰かから聞かされて
そういうものなんだと思ってた知識が
実は違ってた、ということもある」
「あ~、思い込みってあるよね」
「人間は1囘思い込んでしまうと、
その記憶が人から聞いたものだった
のか、きちんと確認したものだったのか
わからなくなってしまう。
だから、知ってること、知ってると思うこと
でも、時々きちんと根拠を確かめる
必要がある」
「仕事としてする以上は、当然だよね」
「うん、でも、普通は条文なんて読んだ
ことないだろうから、根拠の調べ方が
わからないと思う。
だから、今回、こうして、一つ一つ
条文を読んでいこうと思うんだ」
「兄ちゃん、いいこと言うな~、
ねずみなのに」
「ねずみだからわかること、とか
ねずみにしかわからないことだって
あると思うよ。
俺たちは上から人間が仕事をしてる
のを見てる。あの人あんなことを
言ってるけど、大丈夫かな...。
それはちょっと違うんじゃない?
と思ってても、何も言えない」
「兄ちゃんも
いろいろ気にかけてるんだな」
「法務局での生活は長いからな」
「もう30年だっけ」
「...うん。
違うところにも行ってみたけど、
そこには探し求めていたチーズは
なかった」
「ここには、おいしそうなチーズが
ある?」
「秘密」
「何、それ」