万引きGメン

『警察24時』とか『万引きGメン』といったタイトルのテレビ番組をやっていると、つい観てしまうのであります。

『警察24時』はおまわりさんを中心としたドキュメントで、なかなか視聴率もよいようで、各局ともいろいろとがんばっているのであります。

しかし、だんだんネタが尽きてきたのか、局によっては速度違反の取り締まりの様子などで時間を稼いだりしていて、「なんかもっとダイナミックな捕物帖とかはないのかいっ？！」と思わずヤジを飛ばしてしまうのであります。

一方、『万引きGメン』は、大手スーパーなどで万引きをする人を見つけ、取り締まる専門職の仕事のドキュメントでありますが、万引きをしてしまう人にもいろいろなドラマがあるようなのであります。

たとえば、年金暮らしのおじいさんやおばあさん、子どもにお菓子をあげたいという主婦‥‥。さらに、番組内ではいろいろな手口をも紹介しているので、ついつい見入ってしまうのであります。

万引きGメンはまず、キョロキョロするお客さんに目をつけます。

ふつう、商品を探してキョロキョロすることはありますが、商品ではなく自分のまわりをキョロキョロと見ることはないので、そういう人はアヤしいらしいのであります。

なるほど、先日、スーパーに買い物にいったとき、万引きGメンになったつもりで周りを見てみたのですが、商品以外を見ているような人はいらっしゃらないのであります。

「たしかに、これは見つけやすい！」

そんな人を見つけると、万引きGメンは気づかれないようにその人のあとを着け、「あ、いま、マイバッグに商品を入れました」とか「ズボンのポケットに‥‥、入れた、入れた、入れた！」などと確認をするのであります。

万引き犯の多くは買い物カゴにも商品を入れ、ちゃんとお会計を済ませつつ、マイバッグやポケットに隠し持った商品はそのまま持ち帰ろうとするのであります。

万引きGメンが声をかけるのは、必ずお会計を済ませたあとなのであります。

「ちょっとすみません。お会計をお忘れの商品はありませんか？」

そんなふうにやさしく声をかけられると、犯人は万引きがバレたことに気づき、ほとんどの場合、万引きGメンに促されるままに店の奥の事務所へと着いていき、万引きした商品を机の上に並べさせられたりいたします。

その後、泣いたり、わめいたり、病気のふりをしたり、社会や国のせいにしたりと、さまざまな人間ドラマがはじまります。が、従順でない万引き犯はすぐさまおまわりさんを呼ばれ、連れていかれるハメになるのであります。

話は変わりますが、先日、私は買い物のために、うちの近所にあるイオンのショッピングモールに行ったのであります。

そして、食料品売場で奥さまから頼まれたものや、いろいろなものを買っていたところ、気づいたのであります。私を見ている視線に‥‥。

最初は気のせいかなと思ったのでありますが、広いスーパーのどこに行ってもその視線はついてくるのであります。

当然、気になりますよね。

「視線の主は万引きGメンで、私は目をつけられたのであろうか‥‥」

なにぶん、最近は記憶が定かでないこともございます。したがって、悪気はないのだけれども、手に取った商品をレジカゴではなくポケットに入れたりしたのでは‥‥？

自分自身が信じられない私は、自分を厳しくリサーチしてみたのでありますが、やましいことはなにもないとの結論に達したのであります。

そして、お会計も済ませ、出口を出たところ、年配の女性から声をかけられたのであります。

「あの、すみません‥‥」

「！」

ビクビクしながら応対した私に、その女性はおっしゃったのであります。

「あのー、YouTubeとか、やってらっしゃいますよね？」

「え、えええーーっ、そっちーーっ？！！」

人生で初めて、視聴者さんから町なかで声をかけられた瞬間だったのであります。

「ふだんは意外と地味なんですね」と痛いところをつかれ、そして、「応援してまーす！」と手をふってもらって別れたのであります。

ああー、びっくりした！

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