鹿せんべいおじさんの野望

先日のことでありますが、奈良県の大峰山に行った私は、山から下りると五條の町に宿をとったのであります。

五條の町へは、下山口から車で1時間ほど。本来ならば、洞川温泉あたり宿をとると、下山後すぐにチェックインできるのでありますが、登山で疲れた体を癒すために、食塩泉の温泉につかりたいと思ったのであります。

探してみたところ、強食塩泉の温泉のあるビジネスホテルが五條にあったのであります。この宿はホテルの横に健康ランドのような温泉施設が付いており、宿泊者は営業時間内であれば、チェックイン当日・翌日は入り放題。

で、食塩泉とマッサージのおかげで、登山の疲れはだいぶほぐれたのであります。

翌日。この日は夜の19時30分から研修生ミーティングがあったのでありますが、それまでは時間が空いていたので、小学校の遠足以来となる奈良公園付近の散策をしたのであります。

奈良公園はいたるところに鹿が放牧されており、“鹿の公園”として有名であります。

すぐそばには東大寺の大仏殿があり、あの日本一かしこデカいといわれる奈良の大仏様が鎮座しておられます。

さらに、今回、私がどうしても行きたかった『奈良ホテル』もその近くにあるのであります。

奈良ホテルは、皇室のみなさまが奈良におみえになられたときに泊まられる宮内庁御用達のホテルであります。その外見はどう見てもお寺の建物。しかしながら、一歩中に入れば、そこはとても優雅な西洋式のクラシックホテルなのであります。

クラシックホテル・マニアの私としては、箱根の『富士屋ホテル』、日光の『金谷ホテル』と同等のホテルとして知られるこの奈良ホテルにも、ぜひ一度行ってみたいと思っていたのであります。

とはいえ、宿泊はきっとお高いので、Go Toトラベルあたりが出たら検討することとして、いつものように、まずはランチで探りを入れるのであります。

平日の火曜日のその日、予約なしに奈良ホテルのランチをいただいたわけですが、フランス料理のメイン・レストランはほぼ満席。とても優雅な人たちが優雅な昼食を楽しんでいらっしゃいました。

もちろん、そんな中に登山服で入っていくわけにはいきませんので、私はこのランチのためだけに、ちゃんとした服（私基準のちゃんとした服です;;）を車に積んでおいたのであります。

ホテルを出たあとは、ちょっと歩くと興福寺の五重塔が見えたりして、それはもう、奈良感満載。

さらに奈良公園に行くと、それはもう鹿だらけ。

コロナ禍で観光客が減り、あまり鹿せんべいがもらえていないのか、鹿せんべいを買った人を見つけるやいなや、大量の鹿がその人のまわりに集まる‥‥、いや、襲いかかるような状態なのであります。

そして、ここまで来たら、やはり大仏様と出会いたいと思ったのであります。

東大寺に着き、大仏様が鎮座まします大仏殿に入ろうとすれば、修学旅行の小学生やら中学生やら高校生やらだらけなのであります。

「んーー、もう、完全な密！　濃密状態！」

しかしながら、久しぶりに大仏殿に入りましたところ、その迫力に圧倒されたのであります。

「いやー、デカい、デカい！　ほんとうにデカい大仏様！」

ちなみに、小学校の遠足のときにはまったく気づかなかったのでありますが、大仏様の右には虚空蔵様が、左には如意輪観音様が鎮座されているのであります。

「なんと、大仏様より両脇の仏様のほうが金ピカで、目立つ！　目立つ！」

大仏殿を出たあとは、奈良公園を散策し、浮見堂や奈良国立博物館のあたりを散策し、鹿と戯れてきたのであります。

といっても、先ほども書いた通り、鹿せんべいに飢えた鹿たちの勢いの恐ろしいこと‥‥。

奈良に行ったら、ちゅ〜るおじさんならぬ鹿せんべいおじさんとして一世を風靡しようという野望があったのでありますが、鹿たちのあまりの勢いにひるみ、鹿せんべいを買うこともできなかったことが唯一の後悔なのであります。

次回は覚悟を決めて行く所存でございます。

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