生んだ子ネコをいつもわが家に持ってくるノラちゃんのおなかがいつものようにすごく大きくなっていたのであります。
うちの家に来ては、勝手にエサを食べ、寝て帰ったりしたりもするのですが、基本的にはノラで、なかなかうちのネコたちと交わったりはしないのであります。
といっても、いまやわが家にいる16匹のネコのうち7匹がこのノラちゃんの子どもなのであります。
そして、平家のネコの一大勢力といってもいいこのおかあさんが、どうも、また子どもを産んだようなのであります。
当然ながら、おなかがペチャンコになるのですぐわかるのです。さらに、子ネコが順調に育っているかどうかは、おっぱいを見ればだいたいわかるのであります。
というわけで、わが家では、「今度来る子ネコにどのような名前をつけようか？」という会議が行われたのであります。
なにぶん、ネコの多頭飼い。いままでにわが家にやってきたネコは100匹は下らないのでありますが、そのぜんぶにいちおう名前をつけたのでありますから、もうネタが尽きているのであります。
そして、このたびは子ネコの名前を「和菓子で統一しよう」という話になり、会議は終了したのであります。
大福、おはぎ、豆板、あんこ‥‥。あんこから派生して、十勝などが候補になったのであります。
そうしているうちに、いよいよ納屋の裏側で子ネコの鳴き声を聞きつけたのであります。
「今回は、ここに生んでいたか
」
そして、懐中電灯を持って探しにいってみたところ、なんと、4匹のかわいい子ネコがスクスクと育っていたのであります。
しかしながら、私がどうしてもつけたかった名は「きなこ」と「おはぎ」なのですが、イメージとしては茶色のネコなのであります。
ところが、そこにいたのは、真っ黒が1匹、白黒が2匹、白地に黒点4つが1匹（「4点ちゃん」ととりあえずつけた）で、その時点でおはぎちゃんときなこちゃんは消えてしまったのであります。
読者のみなさんの多くは、おはぎちゃんといえばあんこの黒のイメージがあると思うのですが、わが家ではおはぎにはちょっときなこをつけちゃうので、茶色のイメージが強いのであります。
そして、それから1週間後、いよいよ親ネコがわが家に4匹の子ネコ全員を連れてきて、テレビの裏で育児をはじめたのであります。
「まあ！ かわいい」
子ネコを見てしまった時点で、わが家では当たり前のことなのですが、人にあげるなんて発想はまったく出てきません。
かわいらしすぎるので、あげたくないのであります。当然、すべて飼うのであります。
親ネコがうちの家に連れてくる時期の子ネコはそろそろ離乳がはじまっていて、「私の子にエサをやってください」と言われているわけでありますので、ちゅ〜るおじさんである私は大活躍するのであります。
しかしながら、そんなある日の明け方4時ごろ、チョコちゃんと名づけた子ネコの様子がおかしいと嫁に叩き起こされたのであります。
（チョコちゃんは真っ黒な子ネコで、私はあんこと命名しようとしたのでありますが、嫁の一声でチョコとなってしまったのであります。あれほど和菓子で統一しようねと言ったのに‥‥）
さっきまで元気に走りまわっていたのが、痙攣しはじめたとのこと。すぐさま駆けつけたのでありますが、そのときにはこときれておりまして、チョコちゃんはあっという間に天に召されてしまったのであります‥‥。
ほかの子ネコよりひとまわり小さくて、おっぱいの飲み方が少ないんじゃないかとか、生まれつきの虚弱児なのだろうかと心配していたのであります。
そもそもノラネコの子どもが亡くなってしまうことは少なくありません。
たいがい、腎臓あたりの奇形であったり、内臓が十分に育たないまま生まれてきたためだったりすることが原因なのであります。ひどいときなんか、子ネコを8匹確保して、そのうち7匹が天に召されたこともありました‥‥。
チョコちゃんの場合、ごはんをくれとせがんだり、なついてきたりするいちばんかわいい時期だったので、しのびないことこの上ないのであります‥‥。
いつものように、わが家のニャンコ・メモリアルパークにねんごろに葬ってあげるのであります。
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