5月17日、この日はスケジュールに若干のゆとりがあったため、日帰り弾丸で湯河原にお風呂に入りにいってきたのである。
湯河原方面へは、いつも川崎駅から特急『伊豆の踊子号』で行くことにしている。旅情があるといいますか、車内販売のコーヒーなんかを飲みながら行くのがいいのである。
常宿のある蒲田からは一駅で川崎。そこで乗り換えると1時間ほどで湯河原に到着する。
熱海は食塩泉で有名な温泉地だが、お隣の湯河原は弱食塩泉または弱アルカリ性のとても軟らかいお湯である。
私は湯河原に行くと『亀屋旅館』に泊まることが多い。ここは湯量が湯河原一といわれ、大きな貸切の露天風呂があるのである。
昼からは1,000円で日帰り入浴ができる。が、しかし、電話を入れてみると、この日はお休みであった。
また、『上野屋旅館』は泉質の良さで有名な宿なのだが、ここもやはり休みであった。さらに、同じく泉質が気に入っていた『中屋旅館』は電話しても出ないので「お休みかな」と思いつつ宿の前まで行ってみたところ、な、なんと、廃業となっていたのである。
仕方なく、困ったときの『伊豆屋旅館』に行った。ここにはお湯が素晴らしい混浴の露天風呂が一つあり、混んでいないのでいつも貸切入浴ができるのである。
で、ようやくゆっくりと湯河原の湯を堪能したのである。
『伊豆屋旅館』では、昼間は女将さんとおぼしきおばあちゃんがひとりで奮闘しておられる。年々、お年こそ召していかれるものの、いつもたいへんお元気なのである。
さらに、湯河原で忘れてはいけないのが激熱のお湯の入浴施設である『ままねの湯』である。が、なんと、一見の客の日帰り入浴は終了し、現在は地元の人専門の共同浴場になっているようではないか‥‥。
一人で温泉めぐりをするとき、私は必ず複数のお風呂に入る。リサーチというか、探求したいわけである。
なのに、な、なんと、湯河原で入れる日帰り入浴施設がないではないか‥‥。
まず、町の中を人がほとんど歩いていないのである。
この湯河原には、昔ながらの温泉旅館が建ち並ぶ。つまり、現代風でないのである。
仮に私がもう少し若く、彼女なんかできちゃって、一緒に温泉に行くとしたら、あまりにも古風なこの町には連れてきにくいのである。
旅館によっては、ウォシュレットが付いていないどころか、洋式トイレかどうかもあやしいところが多い。
58歳の私にとっては、レトロで渋くて良質な旅館に感じられても、若い人から見ると、おしゃれな宿とは言いがたいであろう。
おじいちゃん、おばあちゃんのグループは多少見かけたが、とにかく若いカップルは皆無だったのである。
本来、旅館というのは宿泊のお客さんがいる日は必ずお風呂に湯をためるので、日帰り入浴もついでに受け入れるはずである。ということは、この日、日帰り入浴をやっていなかった旅館は、ひょっとして宿泊の予約もなかったのではなかろうか‥‥。
私が行ったのは平日で、もちろん、週末などにはもっと人が来ているのであろう。そうは思いながらも、湯河原でさえ、平日はここまで人が来ないのかと考え込んでしまったのである。
ここ数年、日本全国の温泉地では、有名旅館も含め宿がどんどんつぶれていっている。とくに地方に行くほど、その傾向は顕著になっている。
私が大好きであった青森県の湯ノ沢温泉郷‥‥。3軒の旅館にそれぞれすばらしい硫黄泉や食塩泉が湧いていたのであるが、3軒ともいまは閉鎖されている。
秋田県の日景温泉で、湯治宿として有名だった一軒宿もすでになくなってしまった。
数を上げればキリがないほど、名旅館として知られた宿がなくなっていっているのである。
どうかみなさん、心身の健康、そして保養のために、ぜひとも温泉に行っていただきたいのである。