私は糖尿病患者なので、糖質を制限し健康に勤めているのである。
その糖質制限中の私にとって、年末年始は鬼門である。
まず、年越しそばがある。
健康食材として知られるそばであるが、われわれ糖尿病患者にとっては、いちばん血糖値を上げる食物の一つなのである。
さらに、餅。
ちっちゃいお餅ですら、お茶碗1杯分のごはんぐらいのカロリーがある。
そもそも、こういうものが大好きで、食べ過ぎたがゆえの糖尿病であるわけである。年末年始は、「年越しそばぐらいよかろう」、「正月だから、餅ぐらいは食わせてもらうぜ‥‥」が、毎年、大惨事を引き起こし、血糖値は上がるわ、太るわでロクなことはない。
しかしながら、長年、健康な糖尿病患者をやっている中で、基本的に「糖尿病は糖質のとりすぎというよりは、運動不足が引き起こす病気だ」という自説をもっているのである。
根がマニアな私は糖尿病と診断されてすぐ、ニプロの血糖値測定器を買い、ものを食っては血糖値を測り、運動しては血糖値を測るというマニアな研究をしてみたのである。
すると、そばという血糖値をもっとも上げる食べ物を腹いっぱい食べたとしても、その後、一生懸命歩くと血糖値はさほど上がらないということがわかった。
ということで、この年末年始の私、
たしかに、年越しそばは食うわ、朝昼晩と餅は食うわ、伊達巻きは食うわ、黒豆、栗きんとんなんかも食うわという生活でした。
はい。
しかし、昼は修業をして過ごしたのである!
うちの住んでいる過疎の村には、それこそ、自然しかないのである。
しかも、付近には渓谷が多く、昔から山伏なんかが修行していた修行場もあるのである。私もそこに修業の旅に出ていたのである。
渓谷を流れる川を遡上していくと、岩にアンカーが打ちつけられ、鎖が垂らされている場所がある。また、やはり鎖を頼りに登る数百メートルもある鎖場の崖など、フィールドアスレチックさながらのハードなコースもあるのである。
しかしながら、このコース、最近は途中がズタズタに途切れているのである。
というのも、新名神高速道路がこの修業場の真ん中をぶち抜いて建設されているのである。私が子どものころによく歩いたハイキング・コースなどはなくなってしまったのである。
ちなみに、この新名神高速道路の建築現場は、昨年、橋桁の落下事故があり、国道をふさいだことで有名なところなのである。
そして、みなさんはご存じかどうかは知りませんが、この事故のしばらくのち、落下現場の少し先で、ふたたび落下事故が起こったのである。
そう、意外と、落下しっぱなしなのである。
「危ないぞ! 道路公団!」
しかしながら、今日は私が落下しそうで、道路公団より私が危ないのである。
まず、渓流沿いを遡上していくのであるが、冬なので岩に染み出た水が凍っているのである。これがよく滑る。
家には靴に装着する軽アイゼンという滑り止めもあるのであるが、きょうはうっかり、持ってきてはいない。ので、危なくないようにと崖のぼりコースに変更した。
このあたりには天を突くほどの先が見えない階段もあったりする。アップダウンが激しく、修行する場所にはことかかないのである。
そして、正月休みの最終日、この日は軽アイゼンを装備し、短めのロープを持ち、完全装備でこの川を遡上してみた。
歩道が整備されていない道なき道も行き、藪漕ぎといわれる笹を掻き分け掻き分け進む道も行き、なんとか上流の山に辿り着いたのである。
そして、そこで私が見たものは‥‥
な、なんと‥‥
こんな山の奥の奥、だれも辿り着けないような場所に、神戸市立のセミナー施設があったのである。
どうやら山向こうからは道路が延びており、私のようなハードな行程を行かずともクルマで来られるようである。
このセミナー施設、60名程度のセミナーができる規模であり、宿泊もできるようであった。山奥であるがゆえ、脱走もできないはずである。
「フフフ‥‥」
お正月早々、よいお年玉をいただいたのである。