6月、7月と、私は猛烈に忙しかったのである。
村の自治会の役に当たり、農会でも役員に当たってしまい、さらに村の消防団が神戸市代表で操法の大会に出場することとなったので、その練習のお手伝いにも行かなければならないのである。
7月の東京の3日間ワークの際は、中日の17日の夜の8時から自治会の役員会があったため神戸にとんぼ返りし、また翌朝、東京に帰ってセミナーをするというハードスケジュールであった。
そんな中、やってしまったのである。
“平が平謝り事件である。
6月の末日に農会の役員会があった。そして、7月の4日の月曜日には月例会と呼ばれる村のお百姓さんを集めての会議があったのである。その招集のための配りものは、私の担当エリアにぜんぶ配っておいた。
しかし、たまたま、うちの奥さまが4日の月曜日から東京の娘を訪問する行事があったりしてバタバタしたこともあり、なんと、この月例会のことをすっかり忘れてしまったのである。
しかも、月曜日はうちの数いるネコを病院に連れていく日と決めている。いつものように電話をすると、受付の人は声だけで私だとわかってくれて、「夜7時30分なら空きがありますよ」と予約を入れてくれたのである。
そんなこんなで、その日の夜、私はネコ2匹を連れ、のんびりと動物病院に行っていたのである。
20時からの会の場合、私たち農会の役員は準備のために19時30分には会場に行っておかねばならぬ。
で、「いつも早い準ちゃんがぜんぜん来ない。おかしい」と、20時前には自宅に電話を入れたそうである。
が、だれも出ない。
私がセミナーなどどうしても抜けられない用事があるとき、農会の仕事はうちの奥さまが代理で行ってくれるのであるが、この日は残念ながら東京の娘のところにいるのである。
一方の私もそんなこととはつゆ知らず、脳天気に動物病院にいるわけだからして、家に電話をいただいてもだれも出ないのである。
この日は連れていった2匹のネコの血液検査なんかもしてもらったものだから、結果を聞いてうちに帰ったときには21時近くになっていた。
さらに、晩ごはんがまだだったので、その時間から食事のために、再度、外出したのである。
月例会では、私の担当するエリアのお百姓さんに配る資料があった。それを見ながら説明を聞いてもらうはずだったのであるが、担当の私がいないわけだから、その資料もみなさんは手にすることができない。
たいへんご迷惑をかけてしまったのである。あとでこんなことを聞いた。
「小学校のとき以来やったわ。隣の人に机をひっつけて見せてもらうやつ」
ことの重大さが判明したのは、翌日の朝のことであった。
またしても脳天気にも、私は朝から近所の温泉につかっておった。ちょうど温泉から出て、日本茶などを飲んでいたとき、母親からの携帯電話が鳴ったのである。
「農会長さんから、“きのう、会に来られなかったんで、今日中に資料を配っておいてくださいね”と連絡があった」
それで、すべてを理解した次第であります。
その日は気温34度の日であった。
ふだんはほとんど着ないスーツを着、資料を手にし、担当しているお宅に1軒ずつお詫び巡業をしたのである。
村の人は笑って許してくれたが、このおっきな体をちっちゃくし、平が平謝りであった。
あとで事務所でこの話をすると、「なぜ、動画で撮っておかなかったのか?!」と言われたのであるが、そんな余裕はまったくなかったのである。