今年の4月から、順番に回ってくる田舎の自治会の役員をやっているのである。さらに、農会の役員も順番で回ってきて、ダブルでたいへんなのである。
先日、自治会のほうのイベントで、「町の人たちをタケノコ掘りに招待する」というのがあったのである。
こんな話をすると、みんなにものすごくうらやましがられるのであるが、私たち田舎の人間は、タケノコ、フキ、ワラビなどは雑草だと思っているので、なぜ、タケノコ掘りがそんなにうれしいのかまったく理解ができないのである。
毎年5月になると、頼みもしないのにタケノコがニョキニョキと出てくるのである。放っておくと立派な竹に生長してしまうので、タケノコのうちに取り除くのである。
とてもめんどくさいし、採ったタケノコはけっして食べたりしない。そう、パンダではないので、笹関係のものは食べないのである。
しかしながら、町の人たちはタケノコに興味津々なのである。
朝9時半に受付をスタートしたのであるが、「何本ぐらい、採れますかね?」とか、「おいしいですか?」とか、質問攻めなのである。
「たぶん、あなたが持ちきれないほど採れるでしょう」と答えるが、「竹はあまりおいしいとは思えません」とは口に出せない。で、話は適当に流しておき、軍手とタケノコ掘りの道具を手渡していくのである。
今回、参加されたのは、小さな子どもも含め50名近くのみなさんで、スタッフは8名ほどである。そして、タケノコ掘り用のエリアにお連れして、「さあ、どうぞ、ここで好きなだけお採りなさい」と言うだけである。
しかしながら、町のみなさんはとんでもないことをされたりするのである。
「それは竹であって、タケノコではありません。固すぎて食べられませんよ!」
「タケノコだけ採ってくださいね。それはどう見ても毒キノコでしょ!」
「それはフキではなく、ただの草です!」
などなど、われわれスタッフは大忙しである。
さらに休憩時間にふと隣を見ると、皮をむいただけのタケノコをかじっている家族があるのである!
どうも、タケノコは刺身のようにして食べられると思っていらっしゃるらしい。
「いえいえ、そんなことができるのは、土壌を改良し、ワラを敷きつめた場所に出る専用のタケノコのみです。あなたがかじっているそのタケノコは、煮て食べないとどうしようもないただの竹ですよ!」
とにかく、びっくりするようなことが多すぎて、楽しいのである。
ちなみに最近、うちのようなものすごい田舎には、町のほうからNPO法人の人が「無農薬野菜を作りましょう」とやってきたり、「土とふれあい、心を浄化しましょう」というセラピーの人が来たりと、なにかと忙しいのである。
自治会としても、過疎の村に人に来てもらえることはうれしい。よって、われわれは借り出され、引っぱり出され、こき使われるわけだが、ふだんしない町の人たちとのふれあいは、なにかとても楽しいものがあるのである。
うちの地域では、夏になると、「泥んこバレー」という、沼のように水を張った田んぼでするバレーボール大会もある。1回レシーブしただけで、もう泥だらけである。
また、小中学校の子どもたちがあまりにも少なくなったので、村の運動会と合同でする町民運動会、お年寄りのためのグラウンドゴルフ大会なども開催しており、そのたびにわれわれ役員は借り出されるのである。
よって、今年から2年間は、「平さんがトレーナーの2日間の“リーダーシップ2”は、都合で“リーダーシップ1”になります」とか、「平さんに急に村の用事が入ったので、突然ですが、恋愛心理学の講師が代わります」などということが多発する予定である。
そして、そのたびに平さんは、カールおじさんのように麦わら帽子をかぶり、町の人たちや、村のおじいさん、おばあさんの相手をしていると思っていただきたいのである。
今年の夏‥‥、きっと、日焼けするだろうなぁ。