みなさんは、ポルターガイスト現象 というものの話を聞いたことがあるだろうか。
私の場合、このような出来事が身近でけっこう起こるのである。
とくに頻繁に起こるのが、飛行機に乗ったときである。
それも、エコノミーシートに座ったときに多発する。
呼んでもいないのに、客室乗務員のおねえさんが「お呼びでしょうか?」とやってきたり、頭の上のランプが点いたり消えたり点いたり消えたりするのである。
ああ、恐ろしや‥‥。
どうも、あの狭いエコノミーシートに身をうずめているせいで、ひざが操作盤に当たるようなのであるが‥‥。
一見、ポルターガイスト現象と思うような状況も、原因がわかれば納得できる。
しかしながら、きょう、これからお話しする出来事はまったくそのようなレベルの話ではない。
その異変は、深夜、ホテルの部屋でいきなり起こった。
私はなにも操作できるような状況ではなかったのである。
はっきり言うが、いまの間にトイレに行っておくことをおすすめする。
また、いま、寝る前にこの原稿を読もうとしていらっしゃるみなさんには、読むのは明日の朝にしたほうがいいと申し上げる。
それなりの覚悟をして、この原稿を読んでいただきたいのである。
それは、12月の初旬、東京でまったく初めて泊まったホテルでの出来事であった。
私はよく講座で、「ツタヤの“のれん”の向こうには、夢と希望がある」などという話をするが、じつはもう15年ぐらい、ツタヤには行ったことがない。
最近の映画などはほとんど、ホテルのビデオシアターで観る。
オンデマンド方式というのであろうか、今どきのビジネスホテルでは、最新の洋画や邦画はもちろん、バラエティ番組、アダルトビデオまで何百タイトルもが観放題になっていて、1日たったの1,000円なのである。
がんばれば、1日2~3本は観られるので、超おトクなのである。
よって、私は最新の映画を鑑賞し、そして、箸休め兼最近の風俗の研究としてアダルトビデオを観るのがホテルでの慣習となっている。
そして、その日もいつものように、1,000円の利用券を買ったのであるが、このホテルはちょっと変わったスタイルだったのである。
テレビの横にパソコンの本体がある。
ボタンを押してテレビ画面を切り替えると、パソコン画面が出てきて、そして、映画、バラエティ、アダルトという選択画面になるのである。
まるで一時代前のようなシステムである。
映画を押したところ、たった4タイトルしか出てこないのである。
バラエティを押すと6タイトル。
しかしながら、アダルトに至っては、80タイトルほどあったのである。
これで文句が出ないということは、そういうことであろう。
そして、そこには、文句を言わない私が存在していたと思っていただきたい。
「1,000円も使ったのだから‥‥」と、渋々、あるタイトルをクリックしてみた。
ジジジ ジ ジ ジーーー
そして、画面がフリーズしてしまったのである。
「ゲッ、いきなりかよ」
さて、ここでみなさんに質問である。
この場面で、すぐにフロントに電話ができる勇者はいますか?
「すいませんけど、いま、ビデオを観ようとしたら、フリーズして動かなくなっちゃったんですーー」
そんなふうに電話したら、「誠に申しわけありません。いますぐ、お部屋におうかがいいたします」などと言って、フロントのかわいいおねえさんが来てくれるかもしれぬ。
で、タイトルを押したところで止まっているこの画面を観られてしまうのであろう。
それは耐えがたいので、私は通常のテレビ番組を観て、高まる気分をなぐさめたのである。
そして、テレビを消し、その夜は寝た‥‥、つもりであったのであるが、どうもこのとき、テレビの電源を切らず、入力切替を押した状態で眠ってしまったようであった。
つまり、テレビはビデオ画面になっていたようなのである。
夜中の3時。
いきなり、「アアーーン、ウフーーン、アハーーン」というあえぎ声で目が覚めた。
テレビ画面が青白く光っていた。
私は貞子が出てくるのではないかと身がまえたのである。
しかし、どうやら、フリーズしていたパソコンが動き出したようなのであった。
めでたし、めでたし。