“ソウルフード”といっても、「韓国のキムチ料理ですか?」などと聞いてくる人はまずいない。
地方、地方に、「これを食べなきゃ始まらない!」という、独自の食べ物があるのである。
たとえば、“粉もの文化”という言葉があるが、私たち関西人にとってはタコ焼きやお好み焼きなどがそれにあたる。
関西の家庭には一家に一台、必ずタコ焼き器が存在する。
私はそれが当たり前だと思っていたのであるが、東京に頻繁に来るようになってから、東京の家庭にはタコ焼き器がほとんど存在していないと聞いてビックリたまげた。
博多でいうと、ソウルフードはモツ鍋やとんこつラーメンであろうか。
名古屋でいうと、味噌カツや手羽先、きしめんが相当するのか?
さらに、秋田のきりたんぽや、熊本の馬刺‥‥。
では‥‥、京都というと、おたべや京料理?
いや、われわれ関西人にとって、京都といえば、『京都王将』
なのである。
『京都王将』を知らない方に説明しておくと、“庶民派中華料理店”なのである。
しかも、ここの餃子はべらぼうにウマい。
昨今、流行りの「食べても臭わない餃子」などというものでは、まったくない。
それはそれはもう、ものすごいニンニク臭である。
次の日、「あ、きのう、王将で餃子食べたね」と、会う人ごとに言われるぐらいの(どうも最近は昔に比べ、ニオイが上品になったという報告もあるが)超本格餃子なのであるが、これがほんとにウマい。
王将には、『京都王将』と『大阪王将』とがあるのであるが、関西人が「王将で餃子を食べた」と言えば、ほとんどがこの『京都王将』のことをいうのである。
そして、この『京都王将』、10月11日から11月30日までの間、“ぎょうざ倶楽部”の会員を募集するのである。
この2カ月の間、お会計500円ごとにスタンプを1個押してくれる。
そのスタンプを20個集めたら、“ぎょうざ倶楽部”正会員になれるのである。
そして、私はこのたび、この正会員にものすごくなりたいのである。
はっきり言うが、正会員になったところで、たいした特典はない。
正会員になると、まず、来年の12月30日まで、料理が5%引きになる。
それと、お誕生月に1000円の割引クーポンがもらえる。
以上である。
スタンプを集めはじめたものの、なにぶん、“庶民派中華料理店”であるがゆえに、安いのである。
私はいつも、餃子2人前と野菜炒めを食べる。
たしか、780円ぐらいだったと思う。
よって、500円ごとにスタンプ1個だからして、780円では1個しかもらえないのである。
ということは、私はこの2カ月の間に20日間も王将に通わねばならないことになる。
それは過酷なので、メニューを見渡して、なにが高いか調べてみたところ、焼肉600円というのがいちばん高かった。
餃子は1人前200円だからして、焼肉と餃子2人前でちょうど1000円になる。
スタンプ2個もらいたいがための大人買いのようなものである。
そして、私はがんばり、11月の頭までにスタンプ12個を集めたのである。
「フウーー、もうひといきだ。なんとか11月末までには、スタンプ20個集められそうだ」
と、思った矢先、大惨事が私を見舞うのである。
11月の2日の日、うちの親父の三回忌の法要をしたのであるが、それに備え、わが家の大掃除をした。
そのときに、私は家の中のどこかで小銭入れを紛失したのである。
小銭入れだから小銭しか入っていないのであるが、しかし、そこには“ぎょうざ倶楽部”スタンプカードを入れていたのである。
「おおーーー、神は私を見離したのかーーー!!」
以下、次号。