前回、今年のゴールデンウィークにはいろいろとストレスがたまったという話を書いた。
さらに、いさんで行った那須・茶臼岳では、絶好の好天だというのに、強風のためにロープウェイが運休し山に登れないという、ストレスを発散しにいったにもかかわらず、ストレスがたまるという経験もし、私はもうパンパンになっていたのである。
そこで、このストレスを発散すべく、九州・九重山に登山をしにいってきたのである。
この日は、福岡ヒーリングワークの翌日の平日にもかかわらず、いやがり、泣きわめく九州メンバーをなだめすかし、おだて、アメを与えながら、朝7時に博多駅前に集合させた。
そして、レンタカー2台に乗り込み、出発したのである。
博多から大分・九重までは2時間程度、新緑の中の快適なドライブであった。
クルマを2台に分けたのは、登り口と降り口の登山道を別にしたからである。
双方の登山口に1台ずつ車を置き、ピストン輸送でメンバーを運ぼうと考えたのである。
われわれ一行は、牧の戸峠と呼ばれるところからちんたらと(登山のまったくの初心者もいたためである)登った。
高齢の登山者たちにもゴボウ抜きされながらの登山であった。
九重山の少し手前で昼食を取ったわれわれは、重いリュックサックなどを避難小屋に置き、できるだけ装備を軽くして山頂にアタックした(といっても、三十分ほど歩くだけなのであるが)。
それはもう、すばらしい見晴らしの山頂であった。
「いやー、登ってきてよかったなー」と、みんなが感想をもらすほどの絶好の天気と絶景だったのである。
そして、今日はあと2時間弱歩いて、『法華院温泉』
と呼ばれる山小屋に向かい、そこに宿泊するだけである。
この山小屋は温泉付きで、しかも、その温泉がすこぶるすばらしい硫黄泉だという噂である。
しかも、あとは下りだけ。
といっても、登山はいつものことながら、上りよりも下りで苦労するのである。
そして、ここの下りはほんとうに苦労したのである。
それまでが比較的ラクチンであったのと対象に、それはもう、膝が大笑いするほどのガレ場を下りに下って、また下るのである。
このあたりにはいまだに噴火口があったりして、地面から煙が立ちのぼっていて、まるで賽の河原と呼んでもいいような景色である。
われわれ一行、その道を歩いて温泉宿に向かう。
山小屋の手前ではさらなるガレ場を下る。
それはそれはもう、足腰がガタガタになっての到着であった。
しかしながら、さきほども書いたように、法華院山荘ではすばらしい硫黄泉がわれわれを迎えてくれたので、さっそくこの温泉に飛び込んだのである。
宿に到着したのは4時過ぎ、そして、夕食が6時ごろであったのであるが、それまでゆっくりと温泉を堪能し、疲れをほぐし、ビールで乾杯し、夕食を食べると、多くのメンバーはもう8時過ぎには夢の中である。
ふだんの生活ならば、8時に就寝などということはまず考えられないのであるが、山ではなぜか眠れるのである。
朝6時前まで爆睡し、まったりと朝風呂を堪能し、7時過ぎには朝食をかっこんだ。
そして、8時前にはふたたび雨池越えというルートを通り、長者原登山口まで下っていったのである。
私はそのあと熊本空港から飛行機に乗って帰ったのであるが、九州メンバーはさらに付近の温泉を堪能し、昼食を食べ、福岡に帰ってから宴会までして解散したそうである。
登山と温泉はセットになっていることが多いのであるが、とくに今回泊まった法華院山荘は九州の九重のど真ん中の『坊がつる』
と呼ばれるエリアにある。
この坊がつるの湿原はラムサール条約
という環境に関する条約に守られているらしいのである。
だから、「ただのジメジメしたところだなぁ」という感想をもってはいけないのである。
5月後半から6月にかけては、ミヤマキリシマ(深山霧島)
といわれるツツジのような花が山一面に咲き誇り、それはそれは美しいエリアなのであるが、今回はまだつぼみが膨らんできた程度で、対面することはできなかった。
しかしながら、花盛りのシーズンともなるとたいそうな人出で、われわれの泊まった山荘も猛烈な混み具合になると聞く。
開花前のゆったりとした時期に登れたのは、それはそれで、すこぶるよかったのかもしれないのである。