2日目の夕食、われわれ一同は人生で初めて、トビウオの天ぷらなるものを食べたのである。
しかも、尾頭付きの姿揚げなのである。
それはそれはもう、頭から、羽というかヒレというかまで、ぜんぶ食べられちゃうのである。
当然、お酒なんかもすごく進み、この日も早々にバタンキューと寝た。
最終日の3日目は、10:50初の飛行機で帰らねばならないので、空港には11時過ぎには着かねばならない。
ところが、われわれはその前に屋久杉ランド
の150分登山コースを歩こうというのである。
だからして、5時起きの、ホテル発5時半である。
しかも、登山後に温泉にも入って帰ろうというのである。
強行スケジュールであるが、なにぶん、若いときからのランド好きの私は、この屋久杉ランドだけは外せないと思っていたのである。
そして、「所詮、ランド」とナメていた。
きのうの白谷雲水峡では標高差450mを登ったのであるからして、「標高差100mにも満たないここは、たいしたことないわい」とタカをくくっていたのである。
ところが、である。
とにかくアップダウンばかりの登山道だったのである。
それはもう修行道というか、罰ゲームというか、とにかく上がっては下り、下っては上がる、きのうの比ではないほど足腰に負担のかかるルートであった。
屋久杉ランドというだけあって、デカい杉は至るところにある。
しかし、きのうからずっとデカい杉ばかり見ているもんだからして、どんどん慣れてくるのである。
で、屋久島に来て3日目のきょうなんか、もう、デカい杉を見ても感動も少ないのである。
それより、このアップダウンのきつさときたら‥‥。
この屋久杉ランドからちょっとルートを離れたところに、屋久杉の切り株が山のようにあるといわれる場所があり、そのへんあたりまで行こうかと思っていたのであるが、われわれ一同、すっかりヘバッってしまったので行くのを断念した。
できるだけ早く下山し、できるだけゆっくり温泉につかりたいと、一同の心は一致したのである。
で、ようやく屋久杉ランドの出口まで戻ってきたわれわれは、クルマに乗り込むやいなや、ぶっ飛ばしたのである。
なぜなら、時計はもう10時を回っていたのである。
いまから温泉に行き、10分か15分ほど入浴し、上がったらレンタカー会社にクルマを返しにいき、そして、空港に飛び込まねばならないのである。
「ああ、せわしない!」
ちなみに、本日の温泉は『楠川温泉』
といい、屋久島に昔からある冷泉である。
これをボイラーで加熱して入浴できるようにしていて、レトロな風情のとてもいいかんじの温泉であったのだが、ほかの温泉がよすぎたので、やはり見劣りした。
‥‥ここまでが、われわれ一同の共通の屋久島旅行のルートである。
そして、いまからお話しするのは、私個人の屋久島旅行である。
私個人?
そうなのである。
屋久島は温泉どころでもあるので、行きたい温泉がほかにあったのである。
その筆頭は、『平内海上温泉』
。
干潮のときにしか湯船が出現せず、その2時間しか入ることのできない時間限定温泉なのである。
2日目の朝、その日の干潮は朝6時であった。
ということは、午前4時過ぎから温泉に入れるようであった。
私の泊まっていたペンションから車を飛ばして片道30分で往復1時間。
20分入浴したとして、所要時間は1時間半。
さらにその近所にある『湯泊温泉』
にも行きたい。
とすれば、5時前にペンションを出れば、朝食の時間の7時には帰り着けるはず。
ということで、4時50分に起きて行ってきたしだいである。
それはそれは、豪快な海岸温泉であった。
おばちゃん10人の中に、男性は私と地元のおじいちゃんの2人。
やはりというか、いつものようにひどい目にあったということだけ、ここに書いておく。
写真を撮りたいところであったが、変態おじさんと間違えられると困るので、残念ながら証拠写真はない。