真夏の夜のサイレン | 平準司@神戸メンタルサービス カウンセラー養成・個人カウンセリング・心理学の講演、執筆を行っています!


年間100泊以上、ホテルに滞在しているのである。

それだけ多くなると、ホテルの予約もたいへんだったりするのである。

前もってわかっているのだからして、早めに予約しておけばよいようなものなのだが、どうも、いつも直近にならないと手配しないのである。


しかしながら、なぜか最近、東京のホテルはとりやすいように思う。

以前は出張の2、3日前に予約しようとしても、そうそうとれなかったりしたのである。

それで、「泊まれるところなら、どこでも」と、いろんなホテルに泊まることになったり、どうしてもとれなかったので、いまはもうなくなってしまった寝台特急『銀河』をホテル代わりに使ったこともあったのである。


しかし、この1年は不況の影響で、ホテルに泊まる人も減ったのであろうか?

さほど苦労せずとも、ホテルを予約できるのである。


ところが、8月の8、9日に行われた、東京のヒーリングワーク・アドバンスのときは違った。

有明・お台場方面のホテルがなかなかとれなかったのである。


有明のTFTビル(東京ファッションタウンビル)でセミナーをするときは、いつも、会場からいちばん近いワシントンホテルに泊まっているのである。

このホテル、最近ではシングル1泊6,600円程度で泊まれたりする。


ところがである。

今回、8月の7日と9日はインターネットで6,600円で予約できるにもかかわらず、8日の土曜日だけはネット予約がどうにもできないのである。


「なにゆえ!」と思い、ホテルに直接電話してみたところ、この日は東京湾大花火大会があるために、2食付きの“花火宿泊プラン”しかないという。

そして、なんと、それは、1泊で25,000円もするというのである!


いくらなんでも、6,600円・25,000円・6,600円という宿泊は理不尽であろう。

そこで、渋々、違うホテルに宿泊したのである。


私がワシントンホテルに好んで泊まるようになったのは、テレビの有料チャンネルが気に入ったからである。

どこのホテルにも有料チャンネルというものはあるのであるが、ワシントンホテルの場合、最新の映画(といっても、半年以上前の映画ではあるが)が1,000円で観放題となるのである。


私はTSUTAYAなどのレンタルDVDを借りることはまずない。

テレビっ子なので、家にいるときは、うちの奥さまが録りだめてくれたバラエティ番組などを観るだけで精一杯で、新作映画を観る時間がないのである。


その点、1,000円で観放題だったりすると、気合いを入れれば、3本ぐらい観られる。

8時にセミナーが終わり、8時半過ぎにホテルの部屋に帰って、夕食にはピザなんかをとったりすると、寝る前に2本ほど観られる。

さらに、私は早起きなので、朝6時過ぎからもう1本観ると、計3本ほど観られたりするのである。

一挙に最新映画に強くなるわけである。


ここで味を占めて、いろんなホテルで有料テレビを利用するようになった。

ほとんどの場合、アダルトビデオがメインになるのではあるが、どのホテルにも、映画やドラマを放映している有料チャンネルが一つはあるのである。


あるときは、最初は一般チャンネルを観ていたのであるが、ふとチャンネルを変えたときの映画にハマッてしまったのである。

どこかで観たようなかんじがする洋画だったのだが、難しく考えずに観ていたのである。


ホラー映画だと言うことはわかっていたのである。

なんの映画なのかがはっきりしたのは、テレビの中から長い髪の女性が出てくるシーンであった。

つまり、貞子というか『リング』の洋画リメイク・バージョンであったのである。


はっきり言う。

シングルの部屋で、一人で観ているときの貞子は恐すぎる。

そのあと、テレビが消せないのである。


まさか、フロントに電話して、「貞子が恐いんですけど‥‥」とも言えまい。

知り合いにメールしたとしても、たぶん、「がんばってね」という、なんの役にも立たない返信が返ってくるだけであろう。

だからして、以降、ホラー映画だけは観ないようにしていたのである。


ところが、先日、大阪の定宿のサニーストンホテルに泊まっていたとき、またもや、ついうっかり、ホラー映画を観てしまったのである。

大阪の夏の恒例5日間の、しかも、お盆の時期のセミナーで泊まっていたのである。


その映画は『サイレン』というタイトルで、『20世紀少年』の監督が製作したというものだった。

ストーリー自体は貞子ほど恐くはなかったのであるが、ところが、貞子以上に恐いことになってしまったのである。


この映画がなぜサイレンというのかというと、主人公がある島に行ったところ、「サイレンが鳴ったら、けっして外に出てはいけない。さもないと魔物に襲われてしまう」からなのである。

ところが、最後の最後、サイレンを鳴らしているスピーカーを壊しても、サイレンは鳴りやまないのでである。

なぜならば、サイレンはその人の中で聞こえているもので、ほんとうはサイレンなど鳴っていなかった‥‥という恐ろしいストーリーなのである。


ところが、である。

この映画も終盤にさしかかったころからだったのである。

隣の部屋から、赤ちゃんの泣き声がずっと聞こえているのである‥‥。


映画が終わっても、泣き声はやまないのである‥‥。

私がいま観た映画のせいなのか‥‥?


私はわざわざいったん廊下に出て、隣の客室のドアの前まで行ったのである。

すると、部屋の中から、ものすごいわめき声がするのである。

ふだんなら、なんとも思わない赤ちゃんの泣き声が、この映画を観たあとでは、ものすごく恐いのである。


ただの夜泣きであろうか?

まさか、ひょっとして、幼児虐待であったとしたら‥‥!

まさか、この赤ちゃんの魂が私に向かってきて、「なぜ、あのとき、助けてくれなかったの‥‥」などと祟られしまったら、どうすればいい?


次の日の朝、朝食をとりにいこうとドアを開けたところ、隣の部屋の家族と鉢合わせしたのである。

夫婦とごキゲンのいい赤ちゃんが、これまた朝食をとりに出かけるところであった。


ホッとしたのであるが、とても恐い経験だったのである。