深緑の森-小さな箱庭- -4ページ目

深緑の森-小さな箱庭-

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これが来てから、毎日のように不可解なことが起こる

骨董品店の主人が持ってきた一枚の写真を見て、事務所の留守を預かっていた沖津は溜め息をつく。
写真に写っている物が、彼を悩ませているらしい。折り返し連絡するとだけ伝え、依頼主にはお引き取り願った。

普通であれば他をあたれと追い返すような依頼も、この事務所では案件の一つとして受理される。
ここへ持ち込まれるこういった依頼の殆どは、その道のプロフェッショナルが匙を投げた、所謂「手に負えない依頼」ばかりだからだ。他に行くあてなどないと返答されるのは目に見えている。

事務所の局長他、数人は、探偵でありながらそれらの依頼を解決できる技能を持つ。
彼らが専門外の依頼を引き受けていることは、これまで噂の域を出ていなかった。
それ故に依頼主は半ば諦めつつも、藁をもすがる思いで事務所を訪れてくる者ばかりだった。

「解決には尽力しますが、良い結果を保証することはできません」 見習いの沖津は、局長の言葉に安堵の表情を浮かべる人を幾度も見てきた。依頼の内容は用紙に事細かに記述し、解決すべき依頼として分厚いファイルに追加される。
これらの依頼は本業である他の案件と並行して進められ、通常の依頼と同じように進行の度合いが書き込まれてゆく。
解決できないと判断した場合でも、蔑ろにできない。

「時間は掛かるが、なんとかなりそうだ」 沖津は局長を、捨てられた子犬を放っておけない人と表白したことがあった。
得てして指導者は悪く言われるものだが、局長に限ってはそれが無いと言い切れる。

依頼を解決することができたとしても、以降、少なくとも半年は様子を見ることになる。解決した依頼が、箱に帯を付けて戻ってくるなんてことは日常茶飯事だ。局長は依頼のアフターケアまで万全に行うことを常々皆に言い聞かせている。これは通常の依頼、その他の依頼の共通事項だ。こちらから依頼主に随時連絡するわけではなく、異常が起きればすぐに対応できるように構えておけということだ。

局長は基本的に専門外の依頼に掛り切りであり、本業を忘れそうになると呟いている。
解決済みの判が押されるまで四年掛かった依頼や、専門外の依頼を請け負う噂が真実で、しかも腕利きであると聞きつけたそのテの専門家が、協力を要請してきたことまであった。局長はそういう力が強いらしく、今は呼ぶことも、追い払うことも自在という域にまで達している。
 
その局長が目を見開くほど驚いた男達が居た。
「砂場に岩を持ってこられた気分だ」 

飄飄とした男は、依頼を手伝うと言ってきた。局長は依頼のファイルから、専門外に類別されるものを次々に二人に渡したが、こいつらは平気な顔をしてやってのけた。見習い二人が入って僅か数週間で、局長が本業に取り掛かれる程の余裕が出てきた。

そして鬼退治の一件。
後回しどころか、解決不可能と思われていた依頼。
何ヶ月も手付かずで、どうすることもできなかった。
局長達が相手取るのは実体の無い、いわば人間の守備範囲内の相手。

「彼らは本物の化け物と戦う様な連中だ」
「御伽噺の事象は、その世界の住人に任せることにするよ」

一件の後、彼はワイスバスターズとか言う、不明団体を立ち上げた。

局長は自分達では遂行が困難と判断した依頼や、解決まで多大な時間を要する依頼を彼らに託している。
依頼の解決率は今のところ100%。以降の様子見も必要ないぐらいの見事な仕事ぶりに、局長も感心していた。
やはり餅は餅屋、ということなのだろう。

彼らが居なくなってからも、沖津は見習いだった。人手が足りない以上、新入りが電話番をするのは仕方のないことなのかもしれないが、このままでは局員の証明である徽章を貰うことなど不可能だ。

一年我慢した。しかしもう限界だ。

考えに考えた結果、彼は秘策を思いつく。現在自分が居る場所は、言ってみれば向こう側とこちら側のボーダーライン。
間を取り持つ自分が、依頼を彼らに渡す前に解決してしまえば良い。沖津は局長に対する言い訳を頭の中で反芻した。
後で怒鳴られることは覚悟の上で、骨董品店に一人、乗り込むことを決意する。幸いにも局員は出払っていて、暫くは帰ってこない。動くなら今だ。


事務所の電話が鳴っている

「出ないぞ」
「ばか弟子の予想が的中したのかもしれん」

夕刻。骨董品店の頭上を一羽の烏が飛び去ってゆく。
沖津は意を決して、店の扉を叩いた。






「TAO」






もうすぐ境界が現れる


断続的に吹く未知なる風が、もう一つの世界の存在を強く感じさせた
青白い光。空気が一瞬淀み、光が圧縮されると、波打つ壁に変化した

境界越しに見える小石や樹の枝。それらを手に取ろうと伸ばした腕は、この世界から消える
陸地と海の関係と似てはいるが、認識すら出来なくなるという点で全く異なる

「いいかお前ら、普段は隙だらけでもいいけど、飛行速度は一瞬でMAXに到達できるようにしておけよ」

「どういう意味だ?」「いつ何が起きても、すぐに動けるようにしておけってこと」
「電公はいつも馬鹿みてぇだが、戦いになると目の色が変わるからな」

「シラタキ!!今の発言は聞き逃せない!」「でも本当のことだ」「えるさん?」
「別に貶してるわけじゃない。そういうところは見習おうと思ってね」

「何か微妙に納得できないが、解ってくれたみたいでよかった」

「さて君達、一列に並べ!」「嫌だ!!」「上等だハゲが、タンバリンにしてやる」




──僕が隊長?


冗談を言っている雰囲気ではなかった

シラタキやヨモギ、ケイティにテイティ、シガーヘッド、いぬころ
皆を引っ張るのが僕の役目なんだ

緊急事態下での行動指示、先へ進むか退くか、僕が決めなくてはならない
考えただけで頭が痛くなる。隊長って大変だ

「まかせとけ!!」

迷いはなかった
けれど戸惑いはあった


こういうのは、慣れるしかないんですよね

電波になりきってしまえばいい、とか、困ったら皆に訊けばいい、だとか
誰でも最初は間違う大丈夫!だとか、多少現実逃避もしつつ、承諾した

でも、『間違いの許されない場面』のことを考えると、不安になる

街道の分かれ道に差し掛かって、隊員が皆、次は左だと言ったとする
そこで隊長である僕が右と言えば、右へ曲がることになる

皆が正しいとも、僕が正しいとも言い切れない時、そしてその決定が
部隊の命運を左右するような、重要な決定である時

間違えた、では済まされない

電波はこの重圧に、どうやって打ち勝っているんだろう
今の僕はあいつと同じ立場にある。答えは自分で見付けようと思う




──皆で楽器の姿をして異世界の奴らを激しく動揺させる作戦、却下


圧倒的な戦力差がある内に動く

外観は同じでありながら、中身はまったくの別物にする
そのためには黎明の王の協力が必須になる

俺の撒いておいたポピーシード(ケシの実)が、そろそろ意味を持ちはじめている頃だ

あの剣を手に取った瞬間から、覚悟はできていた

宝殿の地下から剣の声が聞こえたーなんて、ファンタジックな展開ならよかったんだけど
そんなんじゃない

手の甲から一筋の、細く強烈な雷が上がった。そいつが天井を砕き、剣が落ちてきた

持ってくよな、普通

ありがたく頂戴したというわけだ


じじいの意志を継ぐとか、俺があの野郎を倒すとか、格好つけた台詞を言いたいところですが
あまり堅苦しいこと言っていると疲れますので、そろそろ出発しようと思う


「立ち止まるくらいなら楽器になる!」「電波うるさい!」






「Sanctuary」






風車を眺めるLとシガーヘッド


シガーは空に向かって炎を吐いた
この暑さで火なぞ上げおって!

風速とやらが3千キロメートあると火は全部ロケットエンジンだって電波が言ってたぞ!
そこに座れ!

走り回っていたドードーがL達の前で停止した

仲良くしろお前達
じゃないと ヨモギの視界に大きな樹木が映った


皆であれに登ろう

唐突に始まる木登り

参加者はL、シガーヘッド、がらび、ヨモギ(ドードー)
さて、誰が一番早く頂上に辿り着いたか予想してみよう





──黙れムササビ!



自分達は点火したんだ
電波が言ってた

これまでは火が燈る瞬間を待ち望む、花火みたいな状況だったって

発進の合図を受け取ったんだってさ


自分はこの有り余るパワーをぶつける相手が見つかったから
嬉しくて仕方がない



花火は夜の空を綺麗にするためにあると思う

太陽が昇るまでの間、光となるものが何も無くなったとして
朝焼けが見えるまで、ずっと火花を散らしているような


悪あがきと言われればそれまでですがね
線香花火だって集まれば凄いんだぞ


まあ、あいつは線香っていうか、閃光だな!





──不思議な奴らに出会った



我は何故、あの二人に助力を仰いだのだろうか

突然に眼前へ現れた境界を、躊躇うことなく踏み越えた

行き着いた先に、彼らが居た


特に興味を惹くことをしたわけではないのだが、二人は我を追って異世界まで来てくれた
あの者達にとって、竜族ほど物珍しい種はいないだろうと、後ほど解ったよ



我らに近いものを感じた

そう、二人共だ


遠い血縁か、それとも



いずれにせよ、己の身体に今が戦うべき時と教えられては
その意志に従う他ないだろうな


逃れ得ぬ運命の渦中

我もまた、目には見えない大きな流れに導かれ、あの男のもとに集った者の一人なのだろう


明日も笑い合えることを願い

皆と共に道を切り開く





頂に立っていたのは四人

では次は、誰が一番早く風車まで飛んで行けるか勝負しよう
Lです。お前の遊びに付き合ってる暇はない!



L達はヨモギの背に乗り、その景色を目に焼き付けた






「DOGFIGHT」