これが来てから、毎日のように不可解なことが起こる
骨董品店の主人が持ってきた一枚の写真を見て、事務所の留守を預かっていた沖津は溜め息をつく。
写真に写っている物が、彼を悩ませているらしい。折り返し連絡するとだけ伝え、依頼主にはお引き取り願った。
普通であれば他をあたれと追い返すような依頼も、この事務所では案件の一つとして受理される。
ここへ持ち込まれるこういった依頼の殆どは、その道のプロフェッショナルが匙を投げた、所謂「手に負えない依頼」ばかりだからだ。他に行くあてなどないと返答されるのは目に見えている。
事務所の局長他、数人は、探偵でありながらそれらの依頼を解決できる技能を持つ。
彼らが専門外の依頼を引き受けていることは、これまで噂の域を出ていなかった。
それ故に依頼主は半ば諦めつつも、藁をもすがる思いで事務所を訪れてくる者ばかりだった。
「解決には尽力しますが、良い結果を保証することはできません」 見習いの沖津は、局長の言葉に安堵の表情を浮かべる人を幾度も見てきた。依頼の内容は用紙に事細かに記述し、解決すべき依頼として分厚いファイルに追加される。
これらの依頼は本業である他の案件と並行して進められ、通常の依頼と同じように進行の度合いが書き込まれてゆく。
解決できないと判断した場合でも、蔑ろにできない。
「時間は掛かるが、なんとかなりそうだ」 沖津は局長を、捨てられた子犬を放っておけない人と表白したことがあった。
得てして指導者は悪く言われるものだが、局長に限ってはそれが無いと言い切れる。
依頼を解決することができたとしても、以降、少なくとも半年は様子を見ることになる。解決した依頼が、箱に帯を付けて戻ってくるなんてことは日常茶飯事だ。局長は依頼のアフターケアまで万全に行うことを常々皆に言い聞かせている。これは通常の依頼、その他の依頼の共通事項だ。こちらから依頼主に随時連絡するわけではなく、異常が起きればすぐに対応できるように構えておけということだ。
局長は基本的に専門外の依頼に掛り切りであり、本業を忘れそうになると呟いている。
解決済みの判が押されるまで四年掛かった依頼や、専門外の依頼を請け負う噂が真実で、しかも腕利きであると聞きつけたそのテの専門家が、協力を要請してきたことまであった。局長はそういう力が強いらしく、今は呼ぶことも、追い払うことも自在という域にまで達している。
その局長が目を見開くほど驚いた男達が居た。
「砂場に岩を持ってこられた気分だ」
飄飄とした男は、依頼を手伝うと言ってきた。局長は依頼のファイルから、専門外に類別されるものを次々に二人に渡したが、こいつらは平気な顔をしてやってのけた。見習い二人が入って僅か数週間で、局長が本業に取り掛かれる程の余裕が出てきた。
そして鬼退治の一件。
後回しどころか、解決不可能と思われていた依頼。
何ヶ月も手付かずで、どうすることもできなかった。
局長達が相手取るのは実体の無い、いわば人間の守備範囲内の相手。
「彼らは本物の化け物と戦う様な連中だ」
「御伽噺の事象は、その世界の住人に任せることにするよ」
一件の後、彼はワイスバスターズとか言う、不明団体を立ち上げた。
局長は自分達では遂行が困難と判断した依頼や、解決まで多大な時間を要する依頼を彼らに託している。
依頼の解決率は今のところ100%。以降の様子見も必要ないぐらいの見事な仕事ぶりに、局長も感心していた。
やはり餅は餅屋、ということなのだろう。
彼らが居なくなってからも、沖津は見習いだった。人手が足りない以上、新入りが電話番をするのは仕方のないことなのかもしれないが、このままでは局員の証明である徽章を貰うことなど不可能だ。
一年我慢した。しかしもう限界だ。
考えに考えた結果、彼は秘策を思いつく。現在自分が居る場所は、言ってみれば向こう側とこちら側のボーダーライン。
間を取り持つ自分が、依頼を彼らに渡す前に解決してしまえば良い。沖津は局長に対する言い訳を頭の中で反芻した。
後で怒鳴られることは覚悟の上で、骨董品店に一人、乗り込むことを決意する。幸いにも局員は出払っていて、暫くは帰ってこない。動くなら今だ。
事務所の電話が鳴っている
「出ないぞ」
「ばか弟子の予想が的中したのかもしれん」
夕刻。骨董品店の頭上を一羽の烏が飛び去ってゆく。
沖津は意を決して、店の扉を叩いた。
「TAO」
もうすぐ境界が現れる
断続的に吹く未知なる風が、もう一つの世界の存在を強く感じさせた
青白い光。空気が一瞬淀み、光が圧縮されると、波打つ壁に変化した
境界越しに見える小石や樹の枝。それらを手に取ろうと伸ばした腕は、この世界から消える
陸地と海の関係と似てはいるが、認識すら出来なくなるという点で全く異なる
「いいかお前ら、普段は隙だらけでもいいけど、飛行速度は一瞬でMAXに到達できるようにしておけよ」
「どういう意味だ?」「いつ何が起きても、すぐに動けるようにしておけってこと」
「電公はいつも馬鹿みてぇだが、戦いになると目の色が変わるからな」
「シラタキ!!今の発言は聞き逃せない!」「でも本当のことだ」「えるさん?」
「別に貶してるわけじゃない。そういうところは見習おうと思ってね」
「何か微妙に納得できないが、解ってくれたみたいでよかった」
「さて君達、一列に並べ!」「嫌だ!!」「上等だハゲが、タンバリンにしてやる」
──僕が隊長?
冗談を言っている雰囲気ではなかった
シラタキやヨモギ、ケイティにテイティ、シガーヘッド、いぬころ
皆を引っ張るのが僕の役目なんだ
緊急事態下での行動指示、先へ進むか退くか、僕が決めなくてはならない
考えただけで頭が痛くなる。隊長って大変だ
「まかせとけ!!」
迷いはなかった
けれど戸惑いはあった
こういうのは、慣れるしかないんですよね
電波になりきってしまえばいい、とか、困ったら皆に訊けばいい、だとか
誰でも最初は間違う大丈夫!だとか、多少現実逃避もしつつ、承諾した
でも、『間違いの許されない場面』のことを考えると、不安になる
街道の分かれ道に差し掛かって、隊員が皆、次は左だと言ったとする
そこで隊長である僕が右と言えば、右へ曲がることになる
皆が正しいとも、僕が正しいとも言い切れない時、そしてその決定が
部隊の命運を左右するような、重要な決定である時
間違えた、では済まされない
電波はこの重圧に、どうやって打ち勝っているんだろう
今の僕はあいつと同じ立場にある。答えは自分で見付けようと思う
──皆で楽器の姿をして異世界の奴らを激しく動揺させる作戦、却下
圧倒的な戦力差がある内に動く
外観は同じでありながら、中身はまったくの別物にする
そのためには黎明の王の協力が必須になる
俺の撒いておいたポピーシード(ケシの実)が、そろそろ意味を持ちはじめている頃だ
あの剣を手に取った瞬間から、覚悟はできていた
宝殿の地下から剣の声が聞こえたーなんて、ファンタジックな展開ならよかったんだけど
そんなんじゃない
手の甲から一筋の、細く強烈な雷が上がった。そいつが天井を砕き、剣が落ちてきた
持ってくよな、普通
ありがたく頂戴したというわけだ
じじいの意志を継ぐとか、俺があの野郎を倒すとか、格好つけた台詞を言いたいところですが
あまり堅苦しいこと言っていると疲れますので、そろそろ出発しようと思う
「立ち止まるくらいなら楽器になる!」「電波うるさい!」
「Sanctuary」
断続的に吹く未知なる風が、もう一つの世界の存在を強く感じさせた
青白い光。空気が一瞬淀み、光が圧縮されると、波打つ壁に変化した
境界越しに見える小石や樹の枝。それらを手に取ろうと伸ばした腕は、この世界から消える
陸地と海の関係と似てはいるが、認識すら出来なくなるという点で全く異なる
「いいかお前ら、普段は隙だらけでもいいけど、飛行速度は一瞬でMAXに到達できるようにしておけよ」
「どういう意味だ?」「いつ何が起きても、すぐに動けるようにしておけってこと」
「電公はいつも馬鹿みてぇだが、戦いになると目の色が変わるからな」
「シラタキ!!今の発言は聞き逃せない!」「でも本当のことだ」「えるさん?」
「別に貶してるわけじゃない。そういうところは見習おうと思ってね」
「何か微妙に納得できないが、解ってくれたみたいでよかった」
「さて君達、一列に並べ!」「嫌だ!!」「上等だハゲが、タンバリンにしてやる」
──僕が隊長?
冗談を言っている雰囲気ではなかった
シラタキやヨモギ、ケイティにテイティ、シガーヘッド、いぬころ
皆を引っ張るのが僕の役目なんだ
緊急事態下での行動指示、先へ進むか退くか、僕が決めなくてはならない
考えただけで頭が痛くなる。隊長って大変だ
「まかせとけ!!」
迷いはなかった
けれど戸惑いはあった
こういうのは、慣れるしかないんですよね
電波になりきってしまえばいい、とか、困ったら皆に訊けばいい、だとか
誰でも最初は間違う大丈夫!だとか、多少現実逃避もしつつ、承諾した
でも、『間違いの許されない場面』のことを考えると、不安になる
街道の分かれ道に差し掛かって、隊員が皆、次は左だと言ったとする
そこで隊長である僕が右と言えば、右へ曲がることになる
皆が正しいとも、僕が正しいとも言い切れない時、そしてその決定が
部隊の命運を左右するような、重要な決定である時
間違えた、では済まされない
電波はこの重圧に、どうやって打ち勝っているんだろう
今の僕はあいつと同じ立場にある。答えは自分で見付けようと思う
──皆で楽器の姿をして異世界の奴らを激しく動揺させる作戦、却下
圧倒的な戦力差がある内に動く
外観は同じでありながら、中身はまったくの別物にする
そのためには黎明の王の協力が必須になる
俺の撒いておいたポピーシード(ケシの実)が、そろそろ意味を持ちはじめている頃だ
あの剣を手に取った瞬間から、覚悟はできていた
宝殿の地下から剣の声が聞こえたーなんて、ファンタジックな展開ならよかったんだけど
そんなんじゃない
手の甲から一筋の、細く強烈な雷が上がった。そいつが天井を砕き、剣が落ちてきた
持ってくよな、普通
ありがたく頂戴したというわけだ
じじいの意志を継ぐとか、俺があの野郎を倒すとか、格好つけた台詞を言いたいところですが
あまり堅苦しいこと言っていると疲れますので、そろそろ出発しようと思う
「立ち止まるくらいなら楽器になる!」「電波うるさい!」
「Sanctuary」
風車を眺めるLとシガーヘッド
シガーは空に向かって炎を吐いた
この暑さで火なぞ上げおって!
風速とやらが3千キロメートあると火は全部ロケットエンジンだって電波が言ってたぞ!
そこに座れ!
走り回っていたドードーがL達の前で停止した
仲良くしろお前達
じゃないと ヨモギの視界に大きな樹木が映った
皆であれに登ろう
唐突に始まる木登り
参加者はL、シガーヘッド、がらび、ヨモギ(ドードー)
さて、誰が一番早く頂上に辿り着いたか予想してみよう
──黙れムササビ!
自分達は点火したんだ
電波が言ってた
これまでは火が燈る瞬間を待ち望む、花火みたいな状況だったって
発進の合図を受け取ったんだってさ
自分はこの有り余るパワーをぶつける相手が見つかったから
嬉しくて仕方がない
花火は夜の空を綺麗にするためにあると思う
太陽が昇るまでの間、光となるものが何も無くなったとして
朝焼けが見えるまで、ずっと火花を散らしているような
悪あがきと言われればそれまでですがね
線香花火だって集まれば凄いんだぞ
まあ、あいつは線香っていうか、閃光だな!
──不思議な奴らに出会った
我は何故、あの二人に助力を仰いだのだろうか
突然に眼前へ現れた境界を、躊躇うことなく踏み越えた
行き着いた先に、彼らが居た
特に興味を惹くことをしたわけではないのだが、二人は我を追って異世界まで来てくれた
あの者達にとって、竜族ほど物珍しい種はいないだろうと、後ほど解ったよ
我らに近いものを感じた
そう、二人共だ
遠い血縁か、それとも
いずれにせよ、己の身体に今が戦うべき時と教えられては
その意志に従う他ないだろうな
逃れ得ぬ運命の渦中
我もまた、目には見えない大きな流れに導かれ、あの男のもとに集った者の一人なのだろう
明日も笑い合えることを願い
皆と共に道を切り開く
頂に立っていたのは四人
では次は、誰が一番早く風車まで飛んで行けるか勝負しよう
Lです。お前の遊びに付き合ってる暇はない!
L達はヨモギの背に乗り、その景色を目に焼き付けた
「DOGFIGHT」
シガーは空に向かって炎を吐いた
この暑さで火なぞ上げおって!
風速とやらが3千キロメートあると火は全部ロケットエンジンだって電波が言ってたぞ!
そこに座れ!
走り回っていたドードーがL達の前で停止した
仲良くしろお前達
じゃないと ヨモギの視界に大きな樹木が映った
皆であれに登ろう
唐突に始まる木登り
参加者はL、シガーヘッド、がらび、ヨモギ(ドードー)
さて、誰が一番早く頂上に辿り着いたか予想してみよう
──黙れムササビ!
自分達は点火したんだ
電波が言ってた
これまでは火が燈る瞬間を待ち望む、花火みたいな状況だったって
発進の合図を受け取ったんだってさ
自分はこの有り余るパワーをぶつける相手が見つかったから
嬉しくて仕方がない
花火は夜の空を綺麗にするためにあると思う
太陽が昇るまでの間、光となるものが何も無くなったとして
朝焼けが見えるまで、ずっと火花を散らしているような
悪あがきと言われればそれまでですがね
線香花火だって集まれば凄いんだぞ
まあ、あいつは線香っていうか、閃光だな!
──不思議な奴らに出会った
我は何故、あの二人に助力を仰いだのだろうか
突然に眼前へ現れた境界を、躊躇うことなく踏み越えた
行き着いた先に、彼らが居た
特に興味を惹くことをしたわけではないのだが、二人は我を追って異世界まで来てくれた
あの者達にとって、竜族ほど物珍しい種はいないだろうと、後ほど解ったよ
我らに近いものを感じた
そう、二人共だ
遠い血縁か、それとも
いずれにせよ、己の身体に今が戦うべき時と教えられては
その意志に従う他ないだろうな
逃れ得ぬ運命の渦中
我もまた、目には見えない大きな流れに導かれ、あの男のもとに集った者の一人なのだろう
明日も笑い合えることを願い
皆と共に道を切り開く
頂に立っていたのは四人
では次は、誰が一番早く風車まで飛んで行けるか勝負しよう
Lです。お前の遊びに付き合ってる暇はない!
L達はヨモギの背に乗り、その景色を目に焼き付けた
「DOGFIGHT」