「よぉ、生徒会長デビュー!」
「スピーチ頑張れよ!」
という男子生徒の言葉を背にしながら、
決意を固める森七菜さん扮する女子学生。
男子生徒の言葉からして、
生徒会長としての新任演説を控える女子学生なのでしょう。
ホフディランの『スマイル』にのせて、
緊張のあまり吹き出した汗を拭います。
一気に飲み干し、
と気合いを入れて校庭へと走り向かいます。
それに負けじとした決意を込めた表現を浮かべた森さんの表情が映り、
CMは終わっていきます。
とても良いCMです。
主演の森七菜さんの熱演。
ホフディランの名曲の溌剌としたカバー。
視聴者の胸に刻み込まれる作品であると思います。
ただ、
僭越ながら僕の個人的な意見を述べさせてもらえるならば
2点あります。
まず1つは、
情報が過多であること。
例えば、
「よぉ、生徒会長デビュー!」
「スピーチ頑張れよ!」
このような初頭の男子生徒による言葉は必要ないのではないでしょうか。
森七菜さんの演技のみで充分伝わります。
僕たちには『行間』を読み取る力が備えられているので、
「彼女が何に臨んで意を決しているのか」の自分なりの解釈を
CMから読み取ろうとします。
しかし、
自分なりに読み取ろうとする解釈に公式に植え付けられた情報が入ってきたならば、
視聴者は混乱し、不快感を覚えてしまいます。
2つめは、
世界観が中途半端に眩しいこと。
かつてオロナミンCは、
プロ野球『読売ジャイアンツ』の選手をイメージキャラクターに起用していました。
手を伸ばしても届かない、かけ離れた存在であるプロ野球が
「元気はつらつ!オロナミンC!」
とCMをするならまだしも、
手を伸ばそうと思えば届くけれど
心理的にかけ離れている存在の『学校の生徒会長』をテーマとしても、
同じ教室にいながらもそのような存在と『大きな壁』を隔てて過ごさざるを得ない学生には、
そのメッセージは伝わりません。
『生徒会長の女子学生』
という存在は、
陽の当たらない者とっては中途半端に眩しい存在なのです。
そこを題材としても、
ずば抜けた共感を得て後世にまで残る作品とはなり得ないのではないでしょうか。
森七菜さんは魅力的な女優さんであり、
ホフディランの『スマイル』も素晴らしい楽曲。
そして、
オロナミンCのCMも代々素晴らしいものだと思います。
だからこそ、この度のCMには少し意見を述べさせていただきました。